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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
318/812

10

 

 荷物の運び入れ等の出港準備は午前中に済ませていたようで、俺達はすぐに船へと乗り込んだ。商船らしく結構大きい船だ。荷物は何を積んでいるのだろう?


「サンドレアの商工ギルドに卸す食材や調味料、マジックバッグにマジックテントといった魔道具を積んでいます。特にバッグやテントは良く売れてましてね。空間魔術で中が拡張されていますので、一人分のテントにひと家族が余裕をもって住めますし、引っ越しも楽だと遊牧民に人気らしいです。かくいう私も、このようにマジックバッグを愛用しています。ほんと、便利ですよね」


 嬉しそうに肩から下げているマジックバッグを見せてくるレストン。俺の店で売っている物ではないな、乳白色のバッグに目立たないよう隅にロゴマークのような刺繍が施されている実にシンプルな作りだ。


「最近は商品の差別化を図り、様々な形や意匠を凝らしたマジックバッグが出ていますが、私はこういう簡素な物が好みです」


 確かに、機能性を重視するなら余計な飾りはいらない。シンプルイズベストってやつだね。


 船内も広く、幾つもの部屋がある中の一室を割り当てられた。


「すみませんが、部屋数はそう多くはありませんので、ライルさんは私と一緒の部屋という事になります。その隣の部屋をエレミアさんとアグネーゼさんがお使い下さい」


 エレミアとアグネーゼは俺と一緒の部屋を強く希望したのだが、レストンが男女を別にと頑なに意見を変えず、渋々了承したのだった。


 その後、俺達は船長に挨拶を交わし甲板に出て出港を待つ。流石はサラステア商会の船だ、甲板もとても広い。ここなら適度な運動も出来そうだな。


 うん? 働く甲板員達に混じって、何やら鎧を着た三人組みが目に入る。その内の一人はスキンヘッドに不精髭を生やし、こめかみから頬にかけて大きな切り傷が目立つ犯罪者のような凶悪な顔付きをしている。

 そしてその左右には、細身の体に二本の小剣を腰に差している軽薄そうな顔をした男性と、背が高くガッチリとした肉体をもつ槍を担いだ男性が立っている。

 彼等が何故この船に乗っているのだろう? 俺はその見知った人達の下へと近付き声を掛けた。


「どうしてガストールさん達がこの船にいるんですか? 」


 俺の姿を確認したガストールは、何だかばつが悪いといった表情を浮かべて、髪のない自分の頭を乱暴に掻く。


「なんだ、お前もいたのか。どうしてって、そりゃあ仕事に決まってんだろ? 」


 仕事? それって冒険者ギルドのだよな?


「ライルの旦那にエレミアの姐御じゃないっすか! こりゃあ心強いっす。あっ、そちらの方は初対面っすよね? どうも! オレッちはルベルトっす!! 」


「えっ? あ、はい。私はアグネーゼと申します。教会の意向でライル様に仕えさせて頂いております。どうぞよろしくお願い致します」


「おぉ! 姐御だけじゃなくこんな美人な神官様をも侍らすとは、羨ましいっすよ! ライルの旦那! 」


 おいルベルト、言葉に気を付けてくれ。別に侍らしてる訳じゃない。そしてグリムはまだ一言も言葉を発していないし、そんな素振りも見せない。


「おや? 顔見知りなのですか? 彼等は冒険者ギルドから護衛として同行して頂きます。お互いにアンデッドの情報を掴みまして、それなら合同調査でもしないかと要望があったらしいです。まぁ、あくまで護衛という形ですので人数は少ないですが、腕は確かだと聞いております」


 へぇ、商工ギルドと冒険者ギルドがねぇ…… あれ? でもガストール達はこの件に関しては上級者に任せると言ってなかったか?


「いや、それがよ…… 俺達の等級が一つ上がってたのを忘れててな、ギルドマスターから指名が入っちまったんだ」


「いやぁ、オレッち達ゴールド級になったんすよね? すっかり忘れてたっすよ! 」


 それで冒険者ギルドのマスターから直々に指名依頼を出されたのか。でもそれはガストール達の実力を見込まれたって事だよな? 鼻が利くし、勘も鋭い。今回のような調査に向いていると言える。


「まぁそういう訳で、お前らの護衛をする事になっちまったから、よろしく頼むぜ」


「また一緒に旅が出来るっすね! 」


「……」


 グリムは何も言わないが小さく口角を上げた。これは喜んでいるのか? とにかく、冒険者ギルドからガストール達が護衛として付く事になった。


「ライル様のお知り合いでしたら信用致しますが、そうでなかったら野盗と見間違う所です…… あの、本当に大丈夫なんですよね? 」


 アグネーゼ、その気持ちは良く分かるよ。ぱっと見、悪人トリオって感じだもんな。初対面で信用しろと言うのは無理な話しだ。でも見た目と違って面倒見も良いし頼りになるから、そんな胡散臭そうな眼差しを彼等に向けないでくれるかな? ほら、ガストールが苦笑してるよ。


「では、そろそろ出発致しましょう。ここからサンドレアの港町まで約五日、皆さん宜しくお願いします」


 レストンの指示で船が出港する。約五日の船旅か、まだインファネースを留守にするのは不安が残るけど、行くと決めたからね。もう後戻りは出来ない。

 インファネースの為、そしてテオドアの為にも、アンデッドキングを倒そう。船の上から遠ざかる街を眺め、そう決意を新たにする。

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