表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
317/812

9

 

「ブフゥ…… そうであるか。今ライル君にインファネースから出ていかれては困るのだが、大元をどうにかしなければ何時までもレイスを警戒しなければならぬからな、致し方あるまい。吾輩も出来るだけ早く戻れるよう努めので、その間はシャロットと妖精達に街を託すしかない」


「ご迷惑をお掛けします。妖精達には私からよく頼んでおきますので」


「うぬ、充分に注意するように。ライル君を失うのはインファネースにとっては大きな痛手になるのでな。何か掴めたのならすぐに戻ってくるのだぞ? では、無事を祈っておる」


 マナフォンで王都にいる領主との会話を切り上げる。出発の日までの二日、俺がサンドレアへ行っている間にまたアンデッドキングの手下が侵入してくるかも知れないので、出来るだけの事はしておきたい。


「という訳で、俺が戻ってくるまでこの街にいる妖精の数を増やせないかな? それでレイスに憑依されていると思われる人を見付けたら、捕まえて教会に引き渡してほしいんだ。な? 頼むよ、ちゃんと報酬も出すからさ。女王代理に掛け合ってくれないか? 」


「ん? それって、この前みたいな人間がいたら取っ捕まえて、差し出せば良いんでしょ? 分かった、女王代理に言っとくよ。たぶん問題ないと思うよ! 」


 街に来ている妖精の一人であるピッケに、インファネースの守りを固める為、女王代理に言伝を頼んだ。ピッケが言うには問題はないらしいから、これで少しは安心出来るかな?


 アグネーゼの方もカルネラ司教と連絡を取り、一時的にインファネースに常駐している神官の数を増やして貰えるよう頼んでくれた。アンデッドが相手だから、すぐにでも許可が下りるだろうと言っていたので、これも大丈夫だろう。


 店を留守にするのは心配だが、母さん達はレイスに憑依される事はないとテオドアが言う。何でも、前に隷属魔術に掛けられないよう魂を保護するような術式を刻んだのだが、それがレイスにも有効だと分かった。この術式自体は既にシャロット達へ渡してあるので、後は向こうの判断に委ねよう。


 サンドレアにいるというアンデッドの存在はインファネースだけじゃなく、リラグンド全体にはまだ知れ渡っていない。確証に至るものがなく、また余計な混乱を防ぐ為、貿易港で起きた事は秘匿されている。

 知っているのは各商店街の代表達と、商工ギルドに冒険者ギルドのマスター、それとごく一部の者達だけ。ギルドも今のところ確固たる証拠がないので、ギルドマスターが公には出来ないと口をつぐんでいる状態だ。


 妖精達による厳重な監視体制と、浄化魔法が得意な神官達の派遣。これだけあれば一先ずは安心かな? 恐らくサンドレアに入国してしまったら、結界の影響でマナフォンでの連絡が取れなくなるだろうからね。母さん達の安全の為にここで手を抜く訳にはいかない。


 二日間そんな感じで過ごし、商工ギルドとの約束した出発の日の午後、心配する母さんに見送られ店を出る。


「ピッケ、インファネースを…… 母さん達を頼んだぞ」


「まっかせなさ~い! あたし達がしっかり目を光らせてあげるわよ!! 」


 女王代理から許可が下り、この日からインファネースには何時もより倍の数の妖精達が飛び交うようになる。張り切るのは良いけど、妖精達で街のお菓子を食べ尽くさないでくれよ?


 一株の不安を抱きつつ、東地区にある貿易港に向かった俺達は、商工ギルドの職員を探す。確か待ち合わせはここら辺だったよな?


「お~い! ライルさ~ん! 此処です! 此処!! 」


 声のした方へ顔を向けると、ある船の前で一生懸命声を張り上げてる一人の男性がいた。彼がギルドの職員なのかな? 呼ばれているし、取り合えず行ってみよう。


「初めまして、ライルさん。私は商工ギルドに勤めています、レストンと申します。どうぞよろしくお願いいたします! あのライルさんと一緒に仕事が出来るとは光栄です。数々の難しい商談をこなしてきたその実力を、是非ともサンドレアでも遺憾無く振るって頂きたい」


 レストンと名乗るギルド職員はハキハキとした口調で話し出す。丸眼鏡を掛け、金色でピッチリとした横分けの髪型。見た目も真面目そうな男性だ。


「初めまして、南商店街で雑貨屋をしています、ライルです。此方こそよろしくお願い致します。何処まで出来るか分かりませんが、尽力致します」


 う~ん、この過度な期待…… 商工ギルドでは俺の事をどう伝わっているのだろうか?


「この船でサンドレアまで行くのですか? 」


「はい! サンドレアまでは海から川に入る経路が一番早いんですよ。ご存じかと思いますが、サンドレアとリラグンドの国境には大きな川が流れていますから、陸路から行きますと大きく迂回しなければなりませんので思ったより時間が掛かります」


「成る程、この船は商工ギルドの物で? 」


「いえ、違いますよ。サラステア商会の船と乗組員を貸して頂きました。名目上はサンドレアの商工ギルドへ商品を卸すという事になっています。ギルドでは国同士の問題には干渉しないとの決まりがありますので、入国自体は可能かと思います。問題はその後ですね。無事に戻れるかどうか…… あの国で一体何が起こっているのか、何としてでも情報を持ち帰らないといけません。ライルさんの言うようにアンデッドキングが関わっているとなれば、危険も大きいですから心して向かいましょう! 」


 サラステア商会の船だったのか。となると、調査に行く職員はレストン一人って事か。調査員がたった一人で大丈夫なのか? 見るからに戦闘が得意とは思えないし、ちょっと心配になってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ