表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
316/812

8

 

 さて、サンドレアに向かうと決めたのは良いけど、どうやって行こう? レイス達の話しでは、関所にいる兵士は皆憑依されているらしいから、それなりの理由がない限り追い返されてしまいそうだ。

 魔力飛行で空から侵入したとしても、レイスが監視しているとも言っていたし、直ぐにばれてしまうだろう。


『真正面から堂々と入りゃいいじゃん。襲われてたって全部倒しちゃおうよ! 』


『うむ、アンデッドなど我らの敵ではない。全て屠ってしまえば良い』


 それだと目立ち過ぎて身動き出来ないよ。サンドレアに潜伏しているアンデッドキングを見つけなければならないのに、逃げ出されでもしたらどうするんだ?


『では、商工ギルドにご相談してみるというのはどうでしょうか? ギルドなら商品を運ぶという目的と独自の経路がある筈です。ギルドの使いなら向こうもそう簡単には追い返せないでしょう』


 そうだな、結界がある限りサンドレアにいる人達とは連絡は取れなくなっている。商工ギルドもその煽りを受けている筈だし、アルクス先生の提案通り、話だけでもしてみるか。


 俺達は商工ギルドへと訪ね、ギルドマスターであるクライドとの面会を申し出た。貴族達に評判の良い蜂蜜を定期的に卸しているからか、それとも俺が南商店街の代表だからか、この日にギルドマスターとの面会が叶った。


「こうして話すのは実に久しぶりですね。新しい商談ですか? 」


 相変わらずのキツネ目で常に笑っているような表情なので、何を考えているのかさっぱり読めない。やっぱり苦手だよこの人。


「いえ、今回は商談ではなくご相談したい事がありまして、伺わせて頂きました。サンドレアについては、何処まで知っておりますか? 」


「サンドレア、ですか…… 困ったものですよね。何の前触れも無しに卸値を引き上げるなんて。カカオが高騰して手に入り辛くなり、チョコレートの数が減って妖精達が不満を露にしていると、チィリアさんから報告を受けています。他にもあの国にしかない果物や交易品もありますのでまいりましたよ。しかも魔道具による通信が不能ときたものです。原因の追求の為に派遣した職員も音沙汰がありません。どうしたものかと、頭を悩ませていたところです」


 カカオはサンドレアの特産品だからな。この国でも栽培はしているけど数が少ない。後は豆や砂糖きびなんかも多く輸入してたよな? 他にも色々と仕入れていた商品が来なくなっているので、だいぶ困ってるようだ。それでも表情一つ変えないから凄いよなこの人は。


 俺は数日前に起きた貿易港での出来事を説明した。


「ほぅ? アンデッドキング、それとレイスに憑依された人達ですか? 成る程、そうなると今後の対応を改めなければなりませんね。サンドレアに送った職員も無事ではないのかも知れませんし、もし戻ってきてもレイスに憑依されている可能性もあります」


 狼狽える事なく冷静に物事を受け入れている。流石は商工ギルドのマスター、俺とは場数が違う。


「それでですね、ここからがそのご相談です…… 実はこれからサンドレアに向かおうかと思っているのですが、この様な状況ですので、どうやって国内に入ろうかと困っております。何か良い方法はありませんか? 」


「アンデッドがひしめき合っていると知りながらも向かうと言うのですね? 随分と物好きな事で。危険を承知の上でそう言っているのですか? 今、貴方を失っては此方も何かと都合が悪いのですがね? 」


「はい、ご迷惑をお掛けしてしまうのは重々承知しております。それでも、私はサンドレアへ行かなければならないのです。どうか力をお貸し下さい」


 テーブルに額がつきそうな位に頭を下げる俺に、ギルドマスターが小さく息を吐くのが分かる。そして暫くしてから声を掛けてきた。


「ライルさんの覚悟は分かりました。頭を上げて下さい。どのみち此方ももっと詳しく調査する必要がありましたから、丁度良かったのかも知れません」


「では、力を貸して頂けると? 」


「えぇ、もう一度調査の為、サンドレアにうちの職員を送ろうかと思案していたところです。ライルさんにはその補佐という事にして同行して貰いましょう。話しは此方で通しておきますので、ギルドカードを受付の者に渡して下さい。ライルさんの身元保証の為、私の使者である証明をカードに刻んでおきます。色々と準備がありますので、出発は二日後の午後、貿易港までお越し下さい」


 海からサンドレアに渡るのか。陸から行くよりかは速そうだな。


「二日後に貿易港ですね? ご助力感謝致します」


「いえいえ、此方も助かります。その他種族を引き入れたライルさんの手腕を期待しておりますよ」


 うわぁ…… なんか過度な期待をされているような。これは何かしらの成果を上げなければ何を要求されるか分かったもんじゃない。この人に頼んだのは早計だったか? いや、これでサンドレアに向かう手筈を整える事が出来た。商工ギルドからの使いなら、そう易々と追い返されたりはしないだろう。後は入ってから考えればいい。


「大丈夫です。アンデッドならお任せ下さい。ライル様は私がお守り致します」


 今回に関しては教会に属してるアグネーゼが頼りになる。先ずはサンドレアに入国し、クレス達と連絡取って合流するのを優先としよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ