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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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6

 

 アグネーゼの浄化魔法により、サンドレア王国の人達に取り憑いていたレイス達は、強制的に神の御許へと送られていった。


 取り憑かれた人達はまだ意識が回復しておらず、倒れたまま動かない。無理に起こすのも悪いし、目覚めるまで此処に寝かせておいて、その間に他のサンドレアの人達から話を伺う事にした。


 俺達は部屋を出て、まだどうしたら良いか戸惑っているサンドレアの人達の元へ向かう。


「吾輩はこのレインバーク領の領主を務めておる、マーカス・レインバークである。あの者達について話を伺いたいのだが、宜しいかな? 」


 そう声を掛けると、一人の男性が前に出てきてくれた。彼がこの人達にリーダーなのかな?


「お初にお目に掛かります。私はサンドレアで貿易商をしているアーレフと申します。この度はお騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした。しかしながら、これだけは分かって頂きたい。私共は決してインファネース、もといリラグンドに危害を加えるつもりは微塵もありません」


 青い顔をしながらも、アーレフは懸命に弁解をする。


「グフフ、分かっておる。この事でお主達を咎めるつもりは毛頭ない。安心するが良い」


「そ、そうですか。領主様の温情に感謝致します。それでですね…… 彼等はどうなるのですか? 一体彼等に何が? 」


 領主はあの四人がレイスに取り憑かれ、アンデットキングの斥候としてインファネースに来た事を説明した。


「あの者らはお主らの仲間であるか? 」


「いえ、以前からの面識はありませんでした。王からの指示で彼等を乗せるようにと…… しかし、まさかレイスが取り憑いていたとは思いませんでした」


 王からの指示? サンドレア王は分かってて彼等を此処に向かわせたのか、それともやはり王もレイスに?


「ブフゥ、王からとな? 一体サンドレアで何が起こってるおるのだ? 」


「分かりません、私達もほとほと困っております。色々と法が変わりまして、規制も厳しくなりました。今では国の外に出るのにも許可が必要なのです。私達のような者には商売がしづらくなり、店を畳む同業者が後を絶ちません。私も商売を辞めて畑でも耕そうかと思い始めていた時、国の兵士と共にあの四人が王の書状を持ってやって来たのです。その書状には、他国との貿易を許可する代わりに、彼等をインファネースまで同乗させてほしいと書かれていました。最後のチャンスだと思いこの話を承けましたが、こんなことになるとは…… これがその書状です」


 あのレイス達の言うように、アンデッド達は表には出てこず、影でこそこそと動いているようだ。どうやらサンドレアに住む多くの者達は、アンデッドキングやその手下のアンデッド達の存在を知らないらしい。


「むぅ、確かに本物であるな。一体サンドレア王は何をお考えなのか…… 」


 書状を受け取り、中を改めた領主は深く嘆息した。


「あの、私達はこれからどうすれば? 」


「ブフ…… 詳しくは吾輩の館で話すつもりだが、この事を王にも報告せねばならぬので、お主らさえ良ければ王都に来てもらい、その時に保護を求めればきっと王は応えてくれるだろう」


「よろしくお願い致します。もうサンドレアには戻れそうもないので


 確かに、戻ったら何をされるか分からないからな。リラグンドに情報を渡す代わりに保護を求めるのが良いだろうね。


「そんな訳でライル君、彼等を吾輩の館で一時預かる事にした。あの寝ている者達も館に運び入れるので、聞きたい事があるのなら共に館に来るか? 」


「ご配慮、感謝します。お手数ですが、よろしくお願い致します」


 その後、サンドレアの人達と領主が用意した馬車に乗り込んで館へと向かい、宛がわれた部屋で一旦情報を整理してみる事にした。



「彼等の証言でアンデッドキングがサンドレアに潜伏しているのはほぼ確実になった」


「それと魔力を遮断する結界が国を覆っているとも言っていたわね」


「恐らく、通信を防ぐ為かと思われます。しかしそんな大規模な結界をどうやって維持しているのでしょうか? 」


 アグネーゼが疑問に思うように、国を覆う程の結界を常時張り続けるには大量の魔力が必要になる。どこからその魔力を供給しているのか掴めたら、その結界を無くす事が可能かも知れない。そうすれば、リラグンドとも通信が出来るようになる。


『ねぇ? 何がどうなってんの? サンドレアの王様はアンデッドに操られているってこと? 』


『まだ確認していませんので、その可能性があると言うだけですよ』


 そこが問題なんだよな。もし王が操られているとしたら、次に何をしてくるか……


「サンドレアに住む者達が心配です。つらい目に遭ってなければ良いのですが」


「それと教会の人達もですね。あのレイス達が言うように、神官達は憑依されないのですか? 」


「はい。属性魔法とは違い、私達には彼の神から祝福である回復魔法や浄化魔法が加護の役割りを果たしておりますので、取り憑かれる心配はありません」


 へぇ、そうなんだ。あれ? でも確かテオドアは教皇様に取り憑き人質にしたような。


『いや、今だから言うけど…… ありゃただのハッタリだ。苦し紛れでやった事だけど、上手くいって驚いたぜ。たぶん俺様が元アンデッドキングだと分かる奴がいたから騙せたんじゃねぇか? 』


 あぁ、カルネラ司教だな。過去にテオドアと対峙した事があるからか、あの時はだいぶ焦っていたっけ?


「だとすると、教会の人達は無事ということになるのかな? 」


「それはどうかしら? アンデッドを浄化出来るうえに憑依が効かないのよ? そんな相手を放っておくとは思えないけど? 」


「エレミアさんの言う通りです。ですが、私達はアンデッドに対して有効な手段がありますので、そう簡単に負ける事は無い筈です」


 そうだな、今も懸命に戦っているかも知れない。アンデッド達の目的はキングを魔王にしてこの大陸を支配すること。これはもうサンドレアとリラグンドだけの問題じゃないな。

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