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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
313/812

5

 

 レイス達を俺の魔力で縛り上げて尋問した結果、アンデッドキングがサンドレア王国に潜伏しているとの証言を得た。それと魔力を通さないといった効果を持つ巨大な結界が、サンドレアを覆っているらしい。


「魔力を? それは魔力だけってことか? 」


「あ、あぁそうだ。魔力だけを通さない。だから人の出入りを防ぐ事は出来ねぇが、到る所に俺たちの仲間が見張っているし、関所にいる兵士は全員レイスに憑依されている。だからそう簡単には入れねぇぞ。例え国に入れたとしても、生きて出られると思わない事だな」


 魔力を防ぐ結界か…… だからマナフォンが通じなかったんだな。ならその結界の中なら端末の無線機能でリリィ達と連絡が取れるかも知れない。無線範囲はサンドレア王国の半分位だから、そんなに離れてなければ繋がる筈だ。


「貴方方にお聞き致しますが、サンドレアにある教会はどうなったのですか? 司祭や他の者達は? 答えて下さい」


「へへ…… さあな。詳しくは知らねぇけど、あいつらは俺達では憑依が出来ねぇからな。生かしておく必要はないだろ? グールかスケルトンにでもなってんじゃねぇか? 」


 レイスの一人がそう答えると、アグネーゼの体から魔力が溢れ出る。ヤバイと思った俺は、急いで魔力をアグネーゼに繋いだ。


『気持ちはお察ししますが、落ち着いて下さい。彼等にはまだ聞きたい事がありますので。粗方情報を引き出せたら、アグネーゼさんのお好きなようにしてくれて結構ですから、もう少しだけ我慢してくれませんか? 』


『…… 申し訳ありません、ライル様。危うく迷惑を掛ける所でした。お止め頂き感謝致します』


 何とか冷静さを取り戻し、魔力を収めるアグネーゼ。まぁ、用が済んだらアグネーゼに頼んで浄化してもらうつもりだったから別に良いんだけどね。取り合えず今は出来るだけ情報を聞き出そう。


「国の人達はどうした? 」


「人間達か? 今の所は無事だぜ。俺達がいるとも知らずに暮らしている」


 それじゃあサンドレアの人達はアンデッドキングの存在には気付いてはいないのか。


「お前達は何故この人達に取り憑いてインファネースに来たんだ? 」


「へっ! さあ、どうだったかな? …… ぐぇぇ!? わ、分かった、話すから、それは止めて、くれ」


 惚ける気だったので、更に彼を押し潰すように魔力を込める。そうすると酷く苦しみ、簡単に口を割ってくれた。


「さ、さっきも言ったように、キングは魔王になって人間共を支配するつもりだ。その手始めにサンドレアを手に入れる。それに目処がついたので、燐国で噂のインファネースに狙いを決めた。それで俺達がこの人間に取り憑き、斥候として送られたんだ」


 目処がついただって? もうそこまでアンデッド達の侵攻が進んでいたのか。サンドレアの人達に気付かれず、影に潜みながら着々と国を奪う。アンデッドというのは恐ろしいな。


「アンデッドキングはサンドレアの何処に潜んでいる? 」


「さあな、俺は知らねぇ―― ぐぅぅ!? ほ、ほんとに知らねぇんだよ! 俺達はキングとは別のヴァンパイアから指令を受けたんだ。居場所を知っているのは、一部の者達だけだ」


 随分と用心深い、これは面倒な相手だ。他に聞きたい事は……


「サンドレアに潜伏しているアンデッドはどのくらいだ? 」


「クク、正確な数なんて知るかよ。それに、グールやスケルトンなら気軽に増やせるしな。材料はそこら中にあるんだ、どんどん増えていくぜ? 」


 その材料ってのは、サンドレアの人達か? それとも外から来て行方が分からなくなった者達か? もしくはその両方かも。どちらにせよ呑気に構えている暇は無さそうだ。


「サンドレア王はどうなった? 無事なのか? 」


「…… あぁ、無事だぜ。元気過ぎるくらいだ」


 何か含みのある言い方だな。まさか、もう既にレイスに取り憑かれているのでは? それで影から国王を操り、サンドレアを支配するつもりなのか?


「領主様から何か聞きたい事はありますか? 」


 後ろでこれ迄の会話を書き留めていた領主に尋ねる。


「ブフ…… 此奴等はどうやら下っ端のようであるし、これ以上は知らないかも知れぬが、一つ問いたい。サンドレアの次はこのリラグンドを攻めると言う事なのだな? 」


「そうだ。先ずは近い国から取り込み、力をつけてからあの帝国をも倒し、世界を裏から牛耳るんだ。前のキングでは到底なし得ない事さ」


「であるか…… ライル君、吾輩からは以上だ。もう聞くことはない」


 アグネーゼにも目を向けるが、此方も特に無さそうだ。ならもう彼等に用はない。


『アグネーゼさん。彼等にはこれ以上の情報は見込め無さそうですので、お任せしても良いですか? 』


『ご配慮ありがとうございます。後は私にお任せ下さい』


 レイス達に、ゆっくりとアグネーゼは魔力を放ちながら近寄って行く。体から出た魔力はレイス達の下に溜まり、魔法が発動する。


「この世を彷徨う穢れ達よ。浄化の光で今、魂の円環へと帰りたまえ」


 虹色に輝く円形の魔法陣が床に出現し、そこから光が伸びてレイス達を包み込む。


「げっ! こ、この光は!? 」

「や、止めてくれ! 素直に話したじゃねぇか!! 」

「頼む! 俺はまだ消えたくねぇ!! 」

「くそったれ! こんな所で…… 」


 四人のレイスはそれぞれの反応を示し消えていく。これが浄化魔法か、ちゃんと見るのは初めてだな。凄く綺麗な光で思わず見入ってしまう。


「ライル様、終わりました。彼等は無事、神の御許へと送られ、新しい生を得る事でしょう」


 消え行く虹色の光を背にして頬笑むアグネーゼの姿は、とても神秘的に思えた。

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