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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十三幕】砂の王国と堕落せし王
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4

 

 領主の指示の下、捕らえた四人をサンドレアの商船内にある一室へと移し、俺とエレミアとアグネーゼに領主を残して後の人達は外に出ていって貰う。捕らわれた四人は始終こっちを恨めしそうに睨んでいた。


『あのさ、テオドア。彼等に取り憑いているレイス達はどうして体から出て逃げないんだ? 』


『相棒、忘れちまったのか? アンデットにとって日光ってのは大敵だ。俺様は耐性があるから平気だけどよ、こいつらは違う。例え今逃げたとしても、日が出てるこの時間ではこの船から出る事は出来ねぇよ』


 そう言えばそうだったな。テオドア以外のレイスを見たことが無かったから忘れていたよ。


「ブフゥ、此処には吾輩達しかおらぬ。何時でも尋問を開始しても良いぞ」


「ありがとうございます、領主様」


 テオドアが魔力収納から出て彼等の前に姿を現すと、明らかに表情を変える。


「よぉ、俺様を知っているか? 」


 そう聞くテオドアに、彼等は気味の悪い笑みを浮かべ、その内の一人が喋り出した。


「ククク…… あぁ、誰かと思えば元アンデットキング様じゃねぇか。忘れる訳ねぇだろ? あんな無様な姿を見せられちまったらよぉ」


 無様な姿? 良く分からないけど侮辱しているのは確かだ。その証拠にテオドアは苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「何処へ逃げたかと思ったが、まさか人間に取り入るとは恐れ入ったぜ。落ちるとこまで落ちたな。まぁあんたらしいっちゃらしいな」


「うるせぇ、余計な事は喋んな。聞かれた事だけに答えろ。あのヴァンパイアのくそガキはサンドレア王国にいるんだな? てめぇら、一体何を企んでやがる」


 そう問い質すテオドアに、彼等は大きく笑い出す。


「ヒヒャヒャヒャ!! 何を企んでいるかだぁ? あんたがしようともしなかった事だよ! 今のキングは前と違って積極的だ。もうあの国は俺らのもんだ。アンデットがこの世界を支配する時も近い。キングはちゃんと魔王になるべく動いている。あんたとちがってなぁ! 」


「ヒヒヒ…… そうだぜ。お前は人間を恐れて、こそこそと隠れながらちゃっちい嫌がらせしかしなかった。キングの支配力を使って俺達に人間を襲うなと命令してまで避けてたよな? 」


「それが不満だった。どうしてこんな臆病者がアンデットキングなんだと、常日頃から思っていた。だが今のキングはアンデットの未来を考えてくれている。支配力なんかなくとも、ついていきたいと思わせる魅力がある。俺達はあのお方を魔王にするんだ! 」


 なんか思っていたのと違うな。アンデットキングだった頃のテオドアはあまり慕われてはいなかったようだ。こいつらも大分鬱憤が溜まっていたらしく、ペラペラと喋ってくれる。


 あの国と言うのはサンドレア王国の事だろう。それが彼等のものとはどういう事なんだ? サンドレアを国ごと奪ったとでも言いたいのか?


「あのガキが何を企んでいようとも、俺様がぶっ潰してやる! 」


「ヒャヒャヒャ! 無理だって分かんねぇのかよ? あんたボロボロに負けちまったじゃねぇか」


「そうそう、あの負けっ振りはスカッとしたぜ。アンデットキングだった頃はあんなに威張り散らしていたのによ」


「終いにゃ、土下座までして命乞いしてたなぁ? あれには笑わせて貰ったぜ。ざまぁねぇ」


 捕らわれた四人が大笑いしている中、テオドアは何も言わず、両手を強く握り締めて耐えるだけだった。


 俺は魔力を彼等四人に伸ばし、中にいるレイス達をテオドアの時のように体から引っ張り出す。


「っ!? ぐぇぇ…… くそ、体が、動かねぇ」


「な、なんだよ、この魔力は? 」


「うぉぅ、魔力に、押し潰される……」


「このガキ…… てめぇの、仕業か? 」


 俺の魔力に捕らえられ、身動き出来ずに空中でもがくレイス達は魔力を吸収しようとするが、その都度魔力を送り続けているので吸収しきれずにいる。


『うへぇ、あれはキツイね』


『うむ。レイスの体は百パーセント魔力で構築されている。故にその影響を受けやすい。あのような桁外れの魔力に押さえ込まれては苦しかろう』


『肉体を持つ僕らと違うのですね? これはもう一種の拷問ですよ』


 半ば呆れているアンネ達を余所に、俺は一切の手心を加えず彼等を魔力で縛り上げる。


「がぁっ!! どうなってんだ? 吸っても吸っても無くならねぇ! こいつの魔力は底無しか? この化け物め!! 」


「だ、駄目だ…… これ以上は、もう吸えねぇ…… 」


 どうやら限界が来たようで、レイス達は力尽きたかのようにグッタリとして大人しくなった。


「どうした? テオドアならこれぐらい、魔力の補給が追い付かない位の早さで吸い尽くして容易に脱出するぞ? テオドアより弱い癖に笑ってんじゃねぇよ」


「ラ、ライル様? 」


「これは相当怒ってるわね」


 横にいるアグネーゼは戸惑い、エレミアは珍しいと言った風に俺を見ている。


 確かに、テオドアは人格的に問題はあるし、俺とは誓約を交わしただけの関係かも知れない。それでも…… 共にいる仲間でもある。その仲間を嗤われて平気でいられる程の広い心は、生憎と俺は持ち合わせていない。つまり何が言いたいかと言うと―― 俺の仲間を馬鹿にすんじゃねぇって事だ。


「相棒…… 」


 さて、こっちが聞きたい事、そっちが知っている事、洗いざらい喋ってくれるまで容赦はしないから覚悟するんだな。

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