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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十二幕】戦争国家と動き出した陰謀
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 すっかり勝利ムードに満たされた基地の中、俺は少し焦っていた。テオドアの調査によりオーガキングが見つかったのは良いけど、それから先が思い付かない。


 普通のオーガと比べて背は低いが、赤く引き締まった肉体、知性を思わせる顔付き、そしてその身に宿る魔力は他のオーガと比べるまでもない。全体的に人間に近い見た目だ。体の色と角が無かったら人間とそう区別がつかないと思う。

 知性も高いんだろうな、そうじゃなきゃここまでオーガ達を統率なんて出来やしない。しかも自分の周りに屈強なオーガ達を集め守りを固めている。随分と用心深いようだ。


 前にエルフの里近くの森で、エドヒルと戦ったオーガは魔法スキルを持っていた。あの時エドヒルは、オーガが魔法を使うのは珍しくはあるが特別という程ではないと言っていた。だとすると、オーガキングの周りにいる奴等も魔法が使える個体だと思った方が良さそうだ。


 一体でも苦戦したのに、あれだけの数が揃って攻めてきたら脅威にもなる。相手が帝国でなければとっくに国ひとつ滅んでいてもおかしくはなかっただろう。


 もし、本当にカーミラの狙いがオーガキングだとしたら、あの用心深さで近寄れずにいた為、ギガンテスを使って帝国を追い込み黒騎士を誘き出した。そしてオーガキングの守りが手薄になった所で捕獲に動き出すつもりなんじゃないか?


 そうだったとしても、それを阻止するにはどうしたら良いんだ? 俺達が先にオーガキングを討ち取り、死体を収納する? でもそんな簡単には行かないよな。そんな事をすればカーミラ達の邪魔が入る筈だ。


『ならばそれを利用するのはどうだ? 』


『ん? ギル、それはどういう意味? 』


『此方がオーガキングを攻めると彼奴等が現れるのなら、態々探さなくとも向こうからやって来る訳だ。そして我等がカーミラ共を抑えている間に、黒騎士達にオーガキングを討って貰えば良かろう? 』


 成る程、今度は俺達がカーミラ達を誘き出すって事だな? 上手くいく確証はないけど、少しでも可能性があるのならそれに賭けてみるのも悪くはない。


 そうなると問題はどうやって此処を離れるかだ。レスターの監視を掻い潜り、前線へ向かうとなると難しい。出来るなら帝国がオーガ達を追い込み、オーガキングを引き摺り出した頃合いで此方も動き出したい。

 その為には前線で待機している必要がある。その間店はどうするか? エレミアに店番を頼んでも絶対に断るんだろうな。レスターひとりに頼んだとしても何処に行くのか聞かれるだろうし、何か良い言い訳はないものか。


『めんどいから、何も言わず消えちゃえば? 』


『いやいや、絶対後でもっと面倒な事になるって。それにそんな事をしたら、オーギュスト砦いるヘイザルさんにも迷惑が掛かる。彼には此処での商売を出来るように口利きして貰ったんだしさ』


 え~、とアンネは不満の声を漏らすが、流石にそれは不義理ってもんだろ?


『じゃあどうすんの? テオドア一人じゃ荷が重いんじゃない? 』


 そうなんだよな…… となると、自由に動ける者に頼むほかない。


『なあ、ギル達に頼んでも良いかな? 』


『それは我等だけで前線に赴き、カーミラ達の相手をして欲しいという事か? 』


『はぁ!? 何でこんなのと一緒に行かなくちゃならないのよ! 』


『フン! 我もこんな羽虫とは御免だな。足手まといになるだけだ』


 あ~、やっぱりこうなるか。仕方ない、なんとかレスターを説得して店を任せる方向で進めよう。


『それとな、ライルよ。我等は黒騎士と面識がないのだぞ? 幾らライルの仲間だと言っても信用されんのではないか? 』


 そうだな、ギル達は魔力収納内から見てたから分かるけど、黒騎士とは実際に会っていない訳だから警戒もされるだろう。やっぱり俺が直接前線に行かなくてはならないか。


『あの、レスターさんには、もう戦争が終わりそうだとか言ってこの基地から離れ、アンネさんの精霊魔法で私達だけまた此処に戻ってくるというのはどうです? テオドアさんには戦況を随時確認してもらい、人間達がオーガを追い詰めた頃に前線に向えば良いのでは? 』


 アルラウネの一人が、俺達の話し合いに見るに見かねて意見を出してきた。


 確かに、もうすぐオーガ達との戦争が終わるとなればこれ以上負傷する兵も新しい志願兵もこないだろう。そうなるとこの基地で商売をする旨味もなくなる。レスターにはギガンテスの調査は一区切りしたとでも言えば良い。


 そうやってこの基地を出てオーギュスト砦を抜けてしまえば、後はアンネの精霊魔法で前進基地へと戻り、魔力飛行で前線に飛んで行けばいい。ちょっと遠回りな気はするけど、今日明日でどうにかなる程ではないようだし、まだ時間的に余裕はあると思う。


『うん、それで行こう。ありがとう助かった』


『いえ、此方こそ差し出がましい真似をしてすいませんでした』


『全然大丈夫だよ。これからも何か気づいた事や意見があったら、遠慮せずに言って欲しい』


 こういう一歩引いた者の意見も必要だからね。特にアルラウネ達は魔力収納の中で一番理性的だから頼りになるよ。


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