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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十二幕】戦争国家と動き出した陰謀
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3

 

 三が日の値下げ競争も乗り越え、一息ついた所で世話になっている人達へ新年の挨拶も兼ねて、新しく開発した転移も防げる結界の魔道具を設置しに行く。


 先ずはエルフの里だが、既に霧の結界が張ってあるのでバージョンアップという形にしてもらった。これで通常の効果に加えて、転移でも外からの侵入は不可能。これで里の守りはより一層強固なものになる。


 次に人魚の棲みかである島にも結界を張る。島の周囲には巨大な渦潮が発生していて海路から島に辿り着く事は出来ないが、空からは無防備だ。カーミラが今まで手を出さなかったからと言って、これからもそうとは限らない。結界を常時張り続ける為にドワーフの協力の下、島の真下にある海底に設置して大地の血液、即ちマグマから魔力を引っ張り、魔道具の動力とした。


 最後にドワーフの国にも結界の魔道具を届ける。どの様に設置するかは彼等に一任した。誰よりも魔道具の取り扱いには慣れているからね。


 後は有翼人族にも結界の魔道具を届ければ、世界の管理を任されたと言う他種族全てに行き届くのだが、どうするか…… これから向かうにしても、店が忙しい時期だからな。あまり留守にはしたくない。世界の平和も大事だけど、此方も生活が掛かっているからね。疎かには出来ない。

 それにインファネースは人の出入りが多い、何時カーミラの手先が入り込んでくるか分からないから油断は禁物だ。もしかしたら既に潜伏しているかも知れない。


 問題はどうやってカーミラの手先かどうかを判別するかだ。あのダールグリフやゼパルダのように、自分の魂を魔力結晶で保護していたとしても、普通の人では見分けるのは難しいし、隷属魔術で操られていたのなら尚更困難になる。


 妖精には魂を視る事が出来るので、魂を魔力結晶で保護している者がいれば一目で分かるらしい。それと直接体に隷属魔術が施されているのも、注意深く観察すれば判別がつくとも聞いている。

 それでもアンネ一人ではインファネースに入ってくる人達全員をチェックするなんてのは無理な話しだ。もっと多くの妖精がいれば可能かも知れないが…… う~ん、ここはダメ元でアンネに妖精達の力を貸して貰えないか頼んでみようかな?



「え~…… 多分無理だと思うよ。あたしが言うのも何だけど、人間の言うことなんか聞くとは思えないけど? 」


 確かに、アンネを見てると自由奔放だからな。他の妖精も大差はないようだ。だとしたらまだやりようがある。もしかしたら上手く説得出来るかも知れない。


「ふぅ~ん。なら、行ってみる? あたしの故郷に」


「え? それって今すぐにでも行けるものなのか? 」


「あったり前じゃん! あたしの生まれ故郷だよ? 精霊魔法でちゃちゃっと帰れるわよ」


 そう言われりゃそうだよな。自分の故郷の場所や風景は忘れる訳はないか。じゃあお願いしようかな。


「そんで? 何時行くの? 」


「そうだな…… もう少し周りが落ち着いてからだな。まだ色々とやらなきゃならない事が残ってるからね」


 領主の許可を得て、インファネース全体には魔物と転移を防ぐ結界を張ってはいるが、その他にも重要な施設や建物にも結界の魔道具を設置したい。特に領主の館やマジックバッグ等の生産工場、リリィと話した街にある宿屋の各部屋と大浴場。これ等には優先的速やかに設置しなくては。


「なぁ、相棒。大浴場だけは何とか考え直してはくれないでしょうかねぇ? へへへ…… 」


 テオドアが揉み手をしながら愛想笑いを向けてくる。そんなに女の裸体を覗きたいのか? まぁ俺も男だ。その気持ちは分からんでも無いが、でも駄目だ。街の安全の為、しいては俺の平穏の為に犠牲になってくれ! テオドアの覗きを防げる手立てがあるのにそれをしなかったとなれば、エレミア達に何を言われるか分かったもんじゃない。俺の周りにいる女性は強い子達だらけで敵にはしたくないんだ。そういう事だから諦めてくれ。


「うおぉぉ…… これから俺様は何を楽しみに過ごせばいいんだぁぁ」


 市場や価格調査を頑張れば良いと思うよ。母さんも喜ぶからね。


 まぁ、そんなこんなで時間は過ぎていき…… 気付けばもう一週間は経っていた。領主が王室だけでも良いからこの結界の魔道具を設置させて欲しいと頼んでくるから、もう大変だったよ。術式の開発者には、魔術界の異端児との異名を持つリリィの名前を貸して貰い、王都の研究所に術式を提出する事になった。その際に講義を行う魔術師は例の如く、アルクス先生の元クラスメイトである。毎度お世話になります。


 領主の館を訪れたついでにシャロットの様子を伺って来たが、いやぁ凄かったね。目に大きな隈が出来てて、心なしか頬が窶れているように見えた。髪も一応巻かれてはいるがボサボサだったし、聞けば五日も風呂には入らず研究室に籠っていると言う。

 本人の前では言えなかったけど、ちょっと臭うぞ。洗浄の魔道具もあるのに何故使わない? それを使う暇も惜しいのかな。


 店の方もまた落ち着いてきたし、冒険者達も働き出してきた。正月に捌いた商品の補充と在庫も確保したし、そろそろ留守にしてもいい頃合いだ。


 それじゃあ、アンネの故郷に向かうとしましょうか。

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