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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十二幕】戦争国家と動き出した陰謀
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2

 

 人工的に作られた魔物であるギガンテス。それと最初に戦ったのはジパングでの事。その時はギガンテスの死体は全て国の方に回収されてしまい調べる事が出来なかったが、今回は違う。

 ギガンテスの死体を丸ごと確保できたので、魔力支配の力でギガンテスを解析した結果、驚くべき仮説が浮かび上がった。


「クレスさん。消えたオークキングやオーク達の足取りは掴めましたか? 」


「いや…… 色々と手は尽くしてはいるんだけど、何も進展はなしだよ」


 はぁ…… とクレスは深い溜め息をつく。


「実はですね…… ギガンテスの死体を解析した所、細胞の作りがオークと酷似しているのが分かりました」


「…… ? つまり、どういう事だい? 」


「ギガンテスは人工的に作られた魔物だと言うのは話しましたよね? 何も無い所からあんな巨大なものは作れません。何処からか材料を用意する必要があります」


 突然消えたオーク達、そしてギガンテスの肉体はオークと同じ細胞で構築されている。ここまでくればもう想像はつくだろう。

 因みにオークの細胞は、ドワーフの国へ行く途中で拐われた人達を救うため、クレス達が倒したオークの死体で既に解析済みである。


「カーミラは、オークを使ってギガンテスを作っている? でも、一体何の為に? 」


「それは俺にも分かりません。裏切らず、命令に忠実な手駒が欲しいのか、それとも何か別の目的があるのか、手持ちの資料だけでは、まだ何とも言えません」


 とにかく、オークが消えたのはカーミラが原因だと考えるのが妥当だと思う。その場合、オークキングはどうなったのかはあまり想像したくはないな。カーミラの事だから、より強力で狂暴に改造されている可能性がある。


「ひとつ良いか? 我も少々気になる事がある」


 魔力収納から人化したギルが出てきた。気になる事とはなんだろうか? 俺達を軽く見回した後、ギルが徐に口を開く。


「前にも言ったと思うが、キングと呼ばれる魔物が複数出現しているのは、魔王誕生の兆候である。しかし早すぎるのだ」


「何が早いと言うのですか? 」


 うん、俺もクレスと同じ疑問を抱いた。どういう事?


「それはだな、前の魔王がいなくなってから次の魔王が現れる迄には長い期間が空く。少なくとも千年は掛かるだろう。これは魔王出現の条件が理由なのだが…… 」


「確か、魔物の数が人間の数より大きく下回ると魔王が先に誕生するんだったっけ? 」


「あぁ、その通り。魔王と勇者の出現とは即ち、魔物と人間との全面戦争の始りである。その結果、どちらが勝利を収めたとしても、双方の数は減少し、増えるにはそれ相応の時間を要する。人間も魔物も、繁殖力だけでいえばそんなに大差はない。にも関わらず、今回は前の魔王がいなくなってからまだ五百年しか経っていない。これは余りにも早すぎる」


「つまりギルは、何か作為的なものを感じると? 」


 まぁ、そんな事をするような奴は一人しか思い付かないけどさ。


「何も数が多くなくても、相対的に見て大きな差が開いていれば良い。今回は魔物の数が減っているのが原因だ。大方カーミラが魔物を乱獲しているせいだろう。ライルの言うギガンテスの材料にしているのもあるだろうが、我には魔王の誕生を早めているのではないかと考えている。いや、あの女の事だ、自分で魔王を造り出さんとしているやもしれんな」


 あぁ~、カーミラならやりかねんな。


「でも、そんな事をして何の意味があるのでしょうか? 魂の救済とやらに関係がありますの? 」


 シャロットは頬に手を当てて唸っている。


「とにかく、ライル君の言う通りだとしたら、オーク自体を探すよりもカーミラとその関係者を調べた方がよさそうだね。もし本当に魔王を造り出そうとしているのなら、オークキングは既にカーミラの手に落ちたと見て良いだろうね。魔王が選定される前にどうにか全てのキングを倒したかったけど、難しくなってしまった」


 クレスが危惧している通り、キングと呼ばれる魔物の中から魔王が選ばれる。オーク達が大陸から姿を消したのがカーミラの仕業なら、オークキングも捕らわれていると考えるのが妥当だな。


 当初の考えでは、今いるキング達を魔王としての力がつく前に出来るだけ早く倒そうとしていたのだが、オークキングがカーミラに捕らえられたかも知れない今ではそれも厳しくなった。


「クレス、まだ諦めるには早いと思うぞ。オークキングはカーミラの元にいるのなら、カーミラはライル達に任せて、私達はアンデッドキングの行方を探ろうではないか。魔王出現も、カーミラの野望も、両方潰してしまえば良いだけだ! 」


 フンスッ! とレイシアは鼻息を荒くして断言する。それを見たクレスはどこか安心したような笑みを浮かべた。


「そうだね。すまないレイシア、僕としたことが弱気になってしまった。何を企もうが、皆の力を合わせて全て阻止すれば良い。ライル君、僕らはアンデッドキングについて調べてみるよ。カーミラとオークキングの事は任せても良いかな? 」


「はい、大丈夫ですよ。元よりカーミラの野望を阻止すると決めていましたから」


 島から奪った大魔力結晶の用途も気になるし、本当に何を企んでいるのやら…… カーミラは時間を掛けて入念な準備と計画を立てている分、此方が後手に回っているこの状況を何とか覆さないと。

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