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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
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23

 

 アイリスとシャロットの連携は素晴らしいものだった。ゴーレムスーツと魔術で自身を強化したシャロットが、チェーンソーブレードを携えてゼパルダと対峙する。その後方からアイリスが対物ライフルでの精密射撃によって、ゼパルダの動きを阻害していく。


「くそが! こうなりゃ出し惜しみは無しだ。本気でいくぜぇ! 」


 ゼパルダがそう叫ぶと、魔力の流れが変わるのが視えた。魔術を発動するときに似ている。あれは、身体強化の魔術か。


『シャロット! 気をつけろ!! 奴は身体強化の魔術を発動したぞ! 』


 魔力念話でシャロットに警告を発したが、間に合わなかった。ただでさえ身体能力が高いゼパルダが、更に魔術で強化してきたのだ。ゴーレムスーツと強化魔術で何とかゼパルダの動きについてきていたシャロットは、難なく懐に潜り込まれてしまう。


「死ねやぁ! ごらぁぁ!! 」


 ゼパルダの無慈悲な右ストレートが、シャロットの腹部に炸裂する。ゴーレムスーツは容易く砕け、シャロットの細い体にゼパルダの拳がめり込み、地面をバウンドしながら飛ばされていく。


「シャロット様ぁぁ!! 」


 アイリスの悲痛な叫びが聞こえる。俺は慌ててシャロットに駆け寄り、魔力収納へと待避させた。


『ごぼっ! す、すみま、せん。ゆ、ゆだん、いたし、ました…… わ』


 意識はあるが、魔力収納内でシャロットは夥しい程の血を吐いている。ゴーレムスーツのお陰で上半身と下半身が泣き別れせずには済んだけど、肋骨が何本か折れて内臓も酷い有り様だ。急いで治療しなくては死んでしまう。


 俺が魔力でシャロットの細胞を支配して造り治していると、シャロットが突然消えて唖然としていたゼパルダが叫び近付いてくる。


「お前かぁ! 腕なしぃぃ!! あのくそ女を何処に隠したぁ! 」


 くそっ! ゼパルダの殺気がダイレクトに浴びせられる。こ、こぇ~、生きた心地がしない。こんな中でシャロットは戦っていたのか。すげぇな。若干、恐怖で足が震える俺にアイリスが庇うように前に出る。


「ライル様。私があの方を抑えますので、シャロット様の治療をお願い致します」


『だ、駄目ですわ…… ここは、エレミアさん達の…… 所まで、撤退、致しま、しょう』


『それは不可能です、シャロット様。あの方は決して私達を逃がしてはくれません。直ぐに追い付かれてしまいます。それならば、私が多少でも時間を稼ぐ方がシャロット様の生存確立が上がるというもの。それに…… シャロット様が教えてくれたのですよ? お友達を守るのは当然だと』


『ア、アイリス、さん』


 対物ライフルを構え、ゼパルダに発射するが、全て避けられ接近を許してしまい、ライフルを壊されてしまう。しかしアイリスは転送術式で新たにサブマシンガンを二丁呼び出し、時間を稼ぐ為にゼパルダに立ち向かっていく。


「調子こいてんじゃねぇぞ! この鉄屑がぁ!! 」


 ゼパルダの蹴りがアイリスの両足を砕く。膝から下を失い倒れるアイリスの横顔を、ゼパルダが乱暴に踏みつけた。その衝撃にアイリスの顔と左目に罅が入ってしまう。


「おい、小僧! シャロット・レインバークを出せ! じゃねぇとこいつの頭を踏み潰すぞ! 」


 脅してきやがったか。それほどまでにシャロットを殺したいらしい。アイリスのお陰で治療はほぼ完了してはいるが、戦うのは厳しいだろう。だが、シャロットはゆっくりと立ち上がった。


『ライルさん、治療して頂きありがとうございます』


『まだ安静にしてないと駄目だ! 傷は治せても、体力は戻せない。満足に体も動かせないのに、どうするつもりなんだ? 』


『それでも、行かなくてはなりません。彼女を…… お友達を見捨てるなど、わたくしには出来ませんわ! 』


 魔力収納から出たシャロットは、覚束無い足取りでゼパルダと向かい合う。


「はっ! そんなに大事か? このポンコツがよ! 」


「えぇ、とても大切ですわ」


 立つのもやっとだと言うのに無茶をする。何かあったら直ぐにでも収納出来るように準備していると、ムウナから魔力念話で通信が入った。


『ライル、たのみ、ある。まりょく、ちょうだい』


『魔力? それは良いけど、魔力を貯める事は出来ないんじゃなかったか? それよりも今ムウナを魔力収納へ戻すから―― 』


『―― それじゃ、おそい。だいじょぶ、ムウナ、まかく、つくれる。まりょく、ためられる。つかいかたも、おぼえた』


 そうか、ムウナは自身の肉体で魔核を生成できる。それならば魔力を貯める事は可能だ。魔力操作もきっと、俺達を見て学習したのだろう。ここはムウナを信じるか。


「ヒャハハハ! 待ってたぜ、この時およぉ! こうなるとすぐに殺すのはつまんねぇな…… 先ずはてめぇの体を隅々まで蹂躙してやるよ。その後は奴隷にされた奴等を解放して、全員でお前を犯し尽くしてやる。そして目の前で、大切だと言うものを全て奪ってやる! お前の親も、領民も、街も、全部ぶっ壊してやるぜぇ!! 」


「そんな事、わたくしがさせませんわ! 」


「今のてめぇに何が出来る! 見ろ、この力を!! 圧倒的じゃねぇか! この力さえあれば何だってできる。誰も俺を止められねぇ、法律だって無意味だ。お前達が教えたんだぜぇ、力ある者だけが正しいとなぁ。今度はお前達が奪われる側になる番だ! 手始めにてめぇからこの人形を奪ってやる」


 ゼパルダが足に力を入れると、アイリスの顔の罅が徐々に広がり、パキパキと割れる音が聞こえてくる。


「お止めなさい!! 」


 シャロットはアイリスを救わんと急いで駆け寄ろうとするが、まだ体力が充分ではないので、思うように足が動かない。


『もう、だいじょぶ。これだけあれば、いい』


 そんなムウナの念話が届くと、物凄い速さで此方へ近付いてくる魔力が視える。


 ムウナだ…… ムウナが魔力飛行で飛んで来ているんだ。


「ん? なんだ―― あぁぁぁ…… !! 」


 シャロットの反応を楽しんでいたゼパルダはムウナの接近に気付かなかったみたいで、トップスピードに乗ったムウナの突進を横から諸に食らい、そのままムウナと共にその場から飛ばされていく。


「アイリスさん! 大丈夫ですか!? 」


「は、はい…… しかし、これでは満足に戦えませんね。申し訳ございません」


 ふぅ、良かった。損傷は激しいが、何とか無事のようだ。

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