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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
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22

 

 激しい地鳴りと雄叫びが島中に響く。ギガンテスが暴れて回っている音だ。そのギガンテス達にエレミア、テオドア、リリィ、アンネが対処している。


 ギガンテスの一体に取り憑いたテオドアは、肉体を操り他のギガンテスに攻撃を加える。


「はっはぁ!! こいつは爽快だ! ほれほれ、どうした? 早く殺してみろよ。そしたらまた別の奴に取り憑くだけだがなぁ! 」


 流石はレイス、エグい戦い方をする。


「あっ…… 失礼。うっかり殺しちゃったわ」


「おいおい! 気を付けろよ。まだ使えたのに」


 エレミアの雷魔法を纏った蛇腹剣が、ギガンテス達の喉を切り裂いていく。その中にテオドアが取り憑いていたのもいたのだろう。木の枝を伝い、素早く移動してギガンテス達を翻弄するエレミア。流石は森育ちのだけはある。


「やるねぇ。リリィ! わたし達もやったるよ!! 」


「…… 当然」


 リリィは魔術で円錐状の氷を生み出して、ギガンテスの足に撃ち込む。すると足に刺さった箇所から凍りつき、ギガンテスはバランスを崩し、膝と手をつく事で頭が地面と近くなる。それを見計らい、土魔術で地面を先の尖った形で隆起させ、ギガンテスの頭を打ち抜いていく。


「おらおらぁ! こなくそぉ! これでどうだぁ!! 」


 風の精霊魔法でギガンテスの体を切り刻んでいくアンネ。うん、何時も通りだな。


 向こうは概ね問題はないようだ。順調にギガンテスを倒している。ダールグリフはギルが抑えてくれているし、先にゼパルダを何とかしないと。


「転送術式、発動…… 」


 そう呟いたアイリスの目の前に、銃口がハンマーのように四角く、銃身が長い銃が出現する。


 何か何処かで見た事があるな…… あれってまさか、対物ライフル!? あんな物まで作っていたのかよ!


「いい加減目障りなんだよ! この化け物め!! 」


 ゼパルダの怒号が聞こえたので急いで振り返ると、今まさにゼパルダの強力な一撃を受けたムウナが殴り飛ばされている所だった。

 木々を薙ぎ倒しながら離れていくムウナを横目に、ゼパルダはシャロットに向かって突進してくる。シャロットもチェーンソーブレードを構え、正面から迎え撃つ姿勢を見せた。


 その時、ドンッ!! という重厚な音が鳴ったかと思うと、ゼパルダが頭から勢いよく後ろへと倒れ込んだ。


 アイリスが対物ライフルを発射したのだ。大口径の銃弾が正確に、ゼパルダの顔に撃ち込まれる。通常は伏射が基本なのだが、自動人形であるアイリスは腰だめでも平気のようだ。それでいてあの精密な射撃、流石としか言えない。


「この、くそがぁぁ!! 」


 起き上がるゼパルダにアイリスは容赦なく銃弾を浴びせる。大したダメージにはならないが、その度にゼパルダに隙が生じるので、シャロットが比較的安全に攻撃が可能になる。


 アイリスの正確無比な射撃に、シャロットは完全に信用しきっている様子。その証拠に後ろは一切気にせず攻撃に集中している。危ない場面になっても、アイリスの放つ銃弾がゼパルダの動きを阻害し、シャロットが追撃する。中々に息の合った連携である。


 しかし、硬すぎるゼパルダに決定的な有効打がないのは厳しい。何かあの筋肉の防御を破る術はないものか。とにかく今は、遠くに飛ばされたムウナを戻すまで耐えてもらわないと。俺はムウナを魔力収納に入れる為に集中する。遠くに離れているからか、ムウナを魔力で包むには少し時間が掛かりそうだ。


 一方、ギルとダールグリフは今だ膠着状態にある。


「貴様らは一体何がしたいのだ? 世界を、彼の方を敵に回すなど、勝ち目などなかろうに、貴様らこそ愚の骨頂ではないか? 」


「フフ、果たしてそうですかな? 私は十分に勝ち目はあると思いますよ? 」


 自信満々のダールグリフに、ギルはピクリと反応する。何処にそんな自信があるのか、俺も不思議に思う。


「解せんな…… 神に逆らうのは無駄だと、既に証明されている筈だが? 」


「フ、フフ、フハハ! 神…… ですか? そんなものはいない!! この牢獄のような世界を創り、我々を閉じ込め管理し、理不尽な規則を強要する。世界の維持だけを求めて、個人には興味を示さない。まるで家畜のように増やしては、都合が悪くなると減らしてくる。そんなのは神とは呼ばない! ただの独裁者だ!! 我々はこの独裁された世界から抜け出す為、囚われ理不尽な争いを強いられている人々を救う為、この世界を終わらせるのだ! 」


 神ではなく独裁者か…… そんな見方をしているなんて思ってもいなかったな。


「独裁者だと? …… 彼の方をそんなものと一緒にするな!! 何も分からん小僧め! 知ったふうな口を叩きおって。どんなに足掻いた所で、この世界がある限りどうにもならんぞ! 全ては無駄に終わる。貴様らの抵抗など彼の方の足下にも及ばぬわ! 」


 自分が仕える存在を侮辱され激怒するギルは、更に力を込めて結界を握り潰そうとする。


「我が君は仰いました。人間の可能性は無限だと…… 既に囚われている魂を解放する術は確立しているのです。後は準備するだけ、最早誰にも止める事は不可能! 我が君が皆を導いてくれる。我が君こそ一筋の希望の光り! 世界を壊し、新しき理想の世界へ! いざ旅立たん!! 」


「この狂信者め…… お前のような者共がいるから、世界は安定せぬのだ」


「はて? そう言う貴方はどうなのですか? 独裁者に尻尾を振る憐れな従僕よ。信じるものが違うだけで、お互い様なのでは? 」


「ぬかしおる。その減らず口を二度と叩けぬようにしてやる」


 ギルもダールグリフも、お互いに信じる者の為に戦っている。それが絶対に正しいと疑わない。そう言う意味では二人とも狂信者と言えるのかも知れないな。

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