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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
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21

 

 ダールグリフが召喚石と言った物で呼び出したギガンテスだが、ジパングの時とは違い数が多い。その数は十にも及ぶ。


「何かと思えば、図体だけの雑魚ではないか。そんなものを何匹呼び出したとしても、ものの数にはならんわ」


 ギルはフッと鼻で嗤う。そう思うのも当然で、ジパングで戦ったギガンテスは巨体で力はあるが動きが遅く、簡単に対処できる相手なのだから。


 だが、ギガンテスが動き出した事によって、その考えが間違っていたのに気付いた。その動きには躊躇と言うのがなく、目の前に障害物があろうがお構いなく、激しく、縦横無尽に暴れだす。

 木を薙ぎ倒し、遠慮なしに拳を地面へと降り下ろす。そんな理性をなくし暴れまわる姿は、まるでバーサーカーのようだ。


「ギガンテスは人工魔物、なので幾らでも改良が可能なのですよ。前の失態を考慮して、今回は狂暴性を強めてあります。どうです? これならもう鈍間とは言わせませんよ」


 暴れまわるギガンテスの手は、攻撃をする度に傷付きボロボロになっていく。自身が傷付くことなどお構いなしだ。この調子だと、そんなに長くは持たないだろう。


「なんて非道いことを…… あなた方のお仲間ではないのですか! 」


 その非道な行いに敵にも関わらず、シャロットは思わず叫んでしまっていた。


「仲間? 違いますよ。これは物です。使い物にならない物を大事にしても無意味というもの。ならば多少無理をしてでも役に立ってもらわなければなりません。謂わばこれらは使い捨ての道具なのです。仲間ではありませんよ。それに我が君に貢献できるのです。彼等も本望でしょう」


 馬鹿馬鹿しいと微笑を浮かべるダールグリフに、苛立ちを覚えたのはシャロットだけでは無い筈だ。俺も胸くそ悪い気分になる。


 とは言え、このままでは島が滅茶苦茶にされてしまう。ゼパルダは執拗にシャロットを狙ってるのでギガンテスの相手は難しい。かといってムウナを外したら苦戦するのは目に見えている。


『テオドア、あのギガンテス達を頼む。魔物だから誓約外だろ? 』


『あぁ!? 俺様一人であんなデカブツ共を相手にしろってのか? そりゃちと厳しいぜ相棒』


 テオドア一人でも大丈夫だと思うけど、かなり渋っている。単に面倒なだけだろ? こいつ。 でも数が数だし、早急に対処したいのもある。


「エレミア、頼めるかな? 」


「はぁ…… ほんとは心配で離れたくないけど、仕方ないわね。何かあったら直ぐに私を呼び戻すのよ」


 やれやれと首を振るエレミアとテオドアが、今も暴れまわるギガンテスの群れに向かっていく。


「羽虫とリリィも行くが良い。こやつの相手は我だけで十分だ」


「…… まだ何か隠し持っているかも知れない。一人は危険」


「こいつが大丈夫だって言うんだから大丈夫なんでしょ? 好きにやらせれば良いのよ。わたし達はあのデカイのをさっさと倒してしまおうよ」


 どうやら、リリィとアンネもギガンテス達の方へ向かうようだ。これなら島の被害も最小限に抑えられるかも知れない。


「ほぅ、貴方お一人で私の結界を破ると? 果たしてそれは可能なのでしょうかね? 」


「いい気になるなよ、小童め。貴様など、其処らの有象無象と同じよ」


 持っていた大剣を投げ捨て、ギルの体が光りだす。その光りは巨大な形を造り、収まった先に本来の龍の姿をしたギルが現れる。


「我では困難と言ったその結界の強度、確めてやろう」


「おぉ! それが本来の姿ですか、なんと禍禍しいのでしょう」


 龍形態のギルを見ても、ダールグリフは怯むことなく不敵な笑みは崩れない。


「そのふざけた態度、何時まで持つか見物だな」


 ギルの巨大な腕がダールグリフへ迫り、半透明で球体状の結界ごと掴み上げる。尻尾と足で上手くバランスを取り、胸の前まで持ってきた両手でダールグリフを挟み込んでは、押し潰すように力を入れる。


「このまま結界もろとも握り潰してくれようぞ」


「それは恐ろしいですね。では私の結界と貴方の力、どちらが強いか勝負といきましょうか! 」


 まるで遊びを楽しむかのように、ダールグリフは両手を広げ笑っている。何処までも余裕の姿勢を崩さない。



「くそっ! この化け物め!! その気持ちわりぃもんを俺に向けんじゃねぇ! 」


「それ、ムウナの。かえして? 」


「はあ? なに訳の分からねぇ事を言ってやがる! 」


 迫り来るムウナの触手から身を躱すゼパルダ。さしもの彼も、正体不明の化け物は苦手と見える。だけど、ムウナの様子が何処かおかしい。ゼパルダに執着しているようだ。さっきも同じ匂いがする―― とか言っていたしな。変異したゼパルダに何かを感じ取っているのか?


 その時、キュイィィンという音が聞こえてくる。それはシャロットが持っている物から発せられているみたいだ。見た目はよくある両手剣だが、刃がギザギザになっていて、剣身の周囲を高速で回転している。おい、あれってもしかして……


「ライルさんの丸ノコを見て思い付きましたのよ。名付けて “チェーンソーブレード” ですわ! これで削り斬ってあげます! 」


 シャロットが振るうチェーンソーブレードとゼパルダの太く発達し過ぎた腕が激突する度に、ギャリギャリと音を立てながら火花が散る。おいおい、なんて硬さだ。


「だから無駄だって言ってんだろうが! 俺の肉体に傷をつけたけりゃ、アダマンタイトでも持ってきな!! 」


 乱暴に腕を払い、シャロットを弾き飛ばす。悔しそうに顔を歪めているシャロットの手には刃が欠けてボロボロになっているチェーンソーブレードが握られていた。


 つまり、ゼパルダの肉体はアダマンタイト並でないと傷付けられないという訳か。厄介だな、奴を仕留める程の武器を作る量のアダマンタイトなんて持ってはいないぞ。


「ならば、更に魔力を込めて強度を上げれば良いだけですわ」


 シャロットは土魔法で、チェーンソーブレードの刃を更に強化して作り出す。アダマンタイト並の強度にするには、どれだけの魔力が必要なのか分からないが、シャロットへの魔力供給は惜しまない。ギルの牙で作成した俺の丸ノコなら、ゼパルダの体に傷を付けること位は可能かも知れないが、皆の魔力管理と回復で余裕がない。

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