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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
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20

 

「てめぇは!? あの時のくそ女ぁ! なんでここにいやがる! 」


「あら? わたくしの名をお忘れかしら? たしか名乗りを上げた筈でしたが? 」


「いいや、覚えてるぜ。忘れる訳がねぇ…… シャロット・レインバークぅぅ!! お前だけは俺の手で殺さねぇと気が済まねぇ! 」


 シャロットを見て怒りを顕にするゼパルダ。やはりこの男、あの盗賊達の頭領に違いないようだ。


「少しお待ちなさい、ゼパルダさん。あぁ、その姿…… 貴方がライル君ですね? 我が君から話しはお伺いしていますよ。こんな所で出会うとは正に運命。どうです? これを機に私達の同志になりませんか? 貴方にはその資格が十分にあります。一緒にこのくだらない世界から人々の魂をお救い致しましょう! 」


 ダールグリフが此方へ近づきながら、俺に声を掛けてくる。もしかして勧誘されてる?


「貴方の言う我が君とはカーミラの事ですか? 」


「様を付けなさい!! あの御方は我々なんかより遥かに崇高な存在なのです! …… まぁ良いでしょう、最初ですからね。今のは見逃して差し上げます。次はありませんよ? それで、お返事の方は? 」


 随分とカーミラに入れ込んでいるな。めんどくさい相手だ。だがカーミラを様付けする気なんか無いけどね。


「その件に関してはお断り致します。俺はこの世界で生きると決めたんだ。そんなふざけた計画に加担する気はない」


 俺の答えにダールグリフは意外だと言わんばかりに、目を見開き驚いている。もしや断れるとは微塵も思ってはいなかったのか? その自信と根拠は何処から来るんだ?


「なんと愚かな…… 貴方はこの世界の仕組みを理解しておられるのですか? 」


「はい、全部知ったうえでこの結論に至りました。俺はカーミラの計画を阻止する。そしてこの世界を守ると決めたんだ」


「…… 言いましたよね? 次はないと…… それに世界を守るですか? そんな価値など、この世界には無い! かけらも無い!! 愚か…… 愚か愚か愚か愚かぁぁ!! なんたる不敬極まりない輩なのでしょうか。この様な者に我が君が目をかけて下さっている事実が更に腹立たしい! 貴方達ごときが、いくら束になろうとも我が君の前では無力なのだ。その事を理解しなさい! 」


 どうやらダールグリフの忌諱に触れたようで、俺の事を恨みがましく睨んでいる。


「おい! もう良いか? 良いよな! このくそ女もろともまとめてぶっ殺してもよぉ! 」


「えぇ、構いません。いくら小さな障害でも、我が君の手を煩わせる訳にはいきませんからね。ここで始末するべきでしょう」


 やっと殺せる―― とゼパルダはいきり立ち、シャロットへ襲い掛かろうとした時、魔力収納からリリィ、アンネ、ギル、ムウナが立ちはだかる。


「あぁ? 何だこいつら!! 何処から出てきやがった! 」


「ほぅ、それが魔力支配の力ですか。興味深いですね」


 突如現れたリリィ達に狼狽えるゼパルダに、冷静に受け止めるダールグリフ。さて、ここからが本番だ。出来るだけこいつらから情報を引き出せると良いんだけど……。


 俺は何時もの如く、皆に魔力を繋ぎ後ろへと下がった。傍には俺を守る為、エレミアが待機している。ゼパルダの相手はシャロット、アイリス、ムウナがするようだ。


「もはや人間を止めた貴方には、法律は無用ですわね。大人しく罪を償って頂かなくて残念ですわ。ここで終わりに致しましょう」


「シャロット様、援護致します」


「む~、ムウナと、おなじにおい。なんで? 」


 そしてダールグリフの前にはギル、リリィ、アンネが陣を取る。


「世界を貴様らの好きにはさせん。何を企んでいるのか吐いてもらおう」


「…… 貴方に恨みはないけど、ライルの敵なら私の敵」


「な~にが、魂の解放よ! 全部あんた達人間の自業自得じゃない! こういうのを逆恨みって言うのよね!! 」



 先に仕掛けたのは筋肉ダルマになったゼパルダだった。素早く、そして真っ直ぐシャロットに突進して、その大きく肥大した拳を放つ。そこにはただ殺すという意思しか感じられない。


 しかし、それはシャロットには届かなかった。何故なら、異形の姿をしたムウナによって防がれたのだ。ドラゴンの腕に変化した拳とゼパルダの拳が激しく衝突する。


 ムウナがゼパルダの攻撃を受け止めた事により、両者の動きが一瞬止まる。その隙にシャロットは土魔法で作り出した両手剣をゼパルダに叩きつけるように振り落とすが、もう片方の手で難なく掴み取られてしまった。


「あめぇな、そんなもんで俺の体には傷一つ付けられねぇぞ」


 そう言って、掴み取った両手剣を握り壊したゼパルダは笑みを浮かべる。でもその笑みはムウナによって消されてしまった。ムウナから触手が伸び、ゼパルダを絡み取ろうと迫っていく。


「何だ、このガキは!? 気持ちわりぃ化け物め! 」


 いや、あんたも大概化け物だよ。


 ゼパルダは後ろへ飛び下がり、ムウナの触手から逃れる。得体の知れないムウナにどう対処すればいいのか、戦いあぐねているように見える。


 一方、ダールグリフを相手にしているギル達はと言うと……


「ちっ! 面倒な結界だ」


「フフフ、私の結界魔術は一味違いますよ。何せ、我が君から授かりし、この肉体と力がありますからね。幾ら厄災龍といえど破ることは困難」


 人化したギルが振るう、総ミスリル製の大剣でも、ダールグリフを包む半透明の結界に弾かれて攻撃が通らないみたいだ。リリィも様々な属性の魔術を繰りだし攻撃を仕掛けているが、尽く結界によって防がれてしまっている。


「…… 硬い」


「ちょっと! 籠ってないで出てきなさいよ!! そんなの卑怯じゃない! あんた戦う気あんの? 」


 守り一辺倒のダールグリフに業を煮やしたアンネが叫ぶ。


「いえ、私は守るのは得意なのですが、攻めるのはどうにも苦手でして…… とは言え、この数で攻められ続けていては少し困ります。なので、此方も数を増やしましょうか」


 ダールグリフが伸ばした手には、丸く加工された野球ボール程の赤い物体が乗せられていた。あれは、魔核か? 何時の間にあんなものを?


「これには召喚の術式が施されています。さしずめ “召喚石” と言ったところでしょうか」


 ダールグリフが言う召喚石に魔力が流れ、術式が発動する。それと同時に召喚石は割れて砕け散り、地面に大きな魔術陣が形成された。


「さあ、お出でなさい! 我が君が造り出した忠実なるしもべ達よ! 愚かなる者共に魂の鉄槌を!! 」


 魔術陣から這い出たものは、ジパングでカーミラが召喚したあのギガンテスだった。

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