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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
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19

 

 とても友好的な態度ではない二人に、アイリスは再度質問を投げ掛ける。


「ダールグリフ様とゼパルダ様ですね? もう一度お尋ね致しますが、どの様なご用件で此方へ? 」


「えぇ、それは我が君の崇高なる目的の為、この島の動力源を頂きに参りました。あるのでしょう? 此処に、大魔力結晶が…… 大人しく差し出してくれるのなら、こちらも手荒な真似は致しません。どうです? 」


 あいつらの目的は大魔力結晶か。それにダールグリフと名乗った男性が言った “我が君” とは一体誰なんだろう? 予想はつくけど外れてほしい。


『ライル! あの二人、カーミラと何か関係があるかもよ! 』


『それはどういう事なんだ? アンネ? 』


『カーミラと同じように、魂が視えないのよ。何かに隠されている感じがする』


 妖精の目は魂を視る。アンネがそう言うのならそうなんだろう。それじゃあ、やっぱりあの男性が言っていた我が君とはカーミラの事なのか? だとすると、彼等もカーミラと同じように人間の肉体では無いのかも知れない。



「お断り致します。あの大魔力結晶は島の維持に必要不可欠な物。マスターの命令に背く事は出来ません。なので、あなた方が大魔力結晶を持ち出すのも許容致しかねます」


 ハッキリと、それでいてキッパリとアイリスは断った。それを聞いたダールグリフは、やれやれと言ったように首を振り、溜め息を一つ溢す。


「なら仕方ありませんね。力ずくで奪わせて貰います。さぁ、出番ですよ、ゼパルダさん」


「へっ! 最初っからこうすりゃ良いのによ、回りくどいったらありゃしねぇぜ! 」


 元盗賊の頭領だったゼパルダが、腰に差している剣を抜き、鋭い目線でアイリスを射抜く。


「戦闘の意思ありと判断致しました。これより防衛と撃退に移ります」


 アイリスが命令を送ると、周辺の木々から何体もの防衛用ゴーレムが出てきて、アイリスの周りに集まってくる。


 二メートル近くある人型で全身鎧を模したゴーレム達に、彼等は怯まず、寧ろうっすらと笑みを浮かべている。その様子に何か薄ら寒いものを感じた。


「ゴーレム達よ、彼等を取り押さえなさい」


 アイリスから命令を下されたゴーレム達が、ゼパルダに襲い掛かる。


 ゼパルダは、その身に振り掛かるゴーレム達の大きな拳を余裕で避け、剣で斬りつける。だが、金属でできた体には薄い斬り痕しか残せない。


 その時、アイリスの傍で待機していた二体のゴーレムが、片腕をゼパルダの方へ向ける。すると掌から腕が開き、中から銃口のような物が顔を出す。もう片方の手で固定しながら、照準をゼパルダへと合わせると、タタタタンッ と音を鳴らして銃弾を発射した。


『やはり、ロボットといったら重火器は外せませんわね』


 収納内で得意気な顔をするシャロット。あぁ、あれは彼女の仕込みだったか。


 だが、ゼパルダは軽い身のこなしで銃弾を躱し、巧みな剣捌きで弾き、一発もその身には当たらなかった。


「ふぅ~、今のはちっとばかし驚いたな」


 あれは本当にあの時捕らえた盗賊の頭領なのか? 動きが全然違うぞ。


 その後もゴーレムの追撃を躱しつつ、剣で反撃をするゼパルダだったが、ついに剣が耐えられなくなり中程からポッキリと折れてしまった。


「ちっ! 思ったより硬いな。しょうがねぇ…… そろそろ本気で行くとするか」


 折れた剣を投げ捨てたゼパルダは、今までのは遊びだとでも言いたいのか、不敵な笑みを浮かべる。


「ふんっ!! 」


 気合いを入れた瞬間、ゼパルダの体に変化が起きた。全身の筋肉が膨張したように膨らみ出し、特に腕と足は考えられない程に発達し始める。

 筋肉の盛り上がりで上着とズボンが破れ、その隙間から血管が浮き出ている肢体が窺える。今のゼパルダの姿は “筋肉ダルマ” と呼ぶに相応しい体に変貌していた。なんだよあの首回り、エレミアの腰ぐらいはあるぞ。


『何あれ!? 気持ち悪い!! 』

『…… 激しく同意』

『ボディビルダーの比ではありませんわね』


 女性陣にはあの姿は大不評のようだ。無理もない、俺もあれはちょっと引くな。


「はぁ~…… 良い気分だ」


 変化し終えたゼパルダは、恍惚な表情をして突っ立っている。ゴーレム達はその隙に攻撃を仕掛けた。


 しかし、一向に避ける気配がないゼパルダは、そのままゴーレム達の迫り来る拳に身を委ねる。鉄の拳がゼパルダの顔を、頭を、腹を、背中を、四方から襲う。


「あ~? 今なんかしたか? 全然効かねぇぞ、おらぁ!! 」


 驚いた事に、ゴーレム達の拳ではゼパルダにアザひとつさえつけられなかった。そればかりか、反撃に移ったゼパルダの拳がゴーレムの体を打ち砕く。腕をつかんでは容易く引きちぎり、蹴りを放てば残骸を撒き散らしながら飛んでいく。

 文字通り、千切っては投げる。そんな光景が俺の前で繰り広げられていた。


「ギャハハハハ! 脆い! 脆すぎるぜ!! 」


 ゴーレム達は少し離れて銃弾を撃ち込むが、全て筋肉に弾かれてしまう。どんだけ頑丈なんだよ。そしてまたゴーレム達を笑いながら一方的に蹂躙していく。

 通常、あの発達し過ぎた筋肉ではスピードが落ちると思われるのだが、ゼパルダは違った。更に素早い身のこなしでゴーレム達を翻弄していく。


「そうだ! これだよ、これ! この圧倒的な力!! 俺が求めたのはこれなんだ! ヒヒャハハハ!! 」


「その力をお与えになった、我が君の慈悲に感謝しなさい。そして我が君の為に尽くすのです! 」


 ダールグリフが自分の事のようにはしゃぎ、次々にゴーレムが破壊されていく様子にシャロットは憤慨し、今にも飛び出して行きそうな雰囲気だ。


『わたくしとアイリスさんで修理したゴーレム達が…… もう、我慢の限界ですわ!! 』


 魔力収納から飛び出たシャロットが、土魔法で造り出したゴーレムスーツを身に纏い、同じく土魔法で造った両手剣を担いでゼパルダの前に立ちはだかる。


「ここからは、このわたくしがお相手致しますわ! お覚悟はよろしくて? 」


 両手剣の切っ先をゼパルダに突きつけるシャロットに、慌てて俺も傍に駆けつける。


 こうなったら仕方がない。あの神父服のダールグリフという男の実力は未知数だけど、黙って見ている訳にもいかないからな。

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