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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第二幕】マナの大樹と眼なしのエルフ
25/812

9

 

「着いたぞ、ここが我らの里だ」


 木で出来た門をくぐると、拓けた場所に出た。周りに大きな木が沢山生えていて、幹も枝もすごく太く、広範囲に伸びている。

 しかもその上に家が建っているから驚きだ。エルフ達は木の上に家を建てるのか……木と木の間には吊り橋が掛けられていて、木から降りずに移動出来るようになっている。


「長老の元へ案内するからついてきてくれ」


 エドヒルの後を大人しくついていくと、周りの家より一際大きく立派な家が木の上に建っていた。ここが長老の家だろうか?


 木の幹に沿って作られた螺旋階段を上り、家の中に入った俺達は、広い部屋に案内された。ここは応接室みたいなものか?


「ここに座って待っていてくれ、すぐに長老を呼んでくる」


 エドヒルに薦められた通り、座って待つ事にした。その椅子は長めに作られていて、何かの動物の革を張られている。その上にクッションが敷かれていて、座ると中に綿でも詰めているのかフカフカだった。これ、完全にソファーだよな……


「おお! フカフカだね!」


 アンネと一緒にソファーの座り心地を楽しんでいたら、エドヒルが一人の男性を連れて戻ってきた。


 その男性は緑の髪を後ろに流し、オールバックにしている中年の男性に見えるが、俺の知っている中年とは全然違う。なんて言うか……もの凄いダンディーだ。彼がイズディアなのだろうか?


「やあ、待たせてしまったかな?」


 渋い声でそう言われ、反射的に「そんな事はありません」と答える寸前にアンネが口を開いた。


「おっそーい! せっかく会いに来てあげたのに、何してんの!」


 おい! いくら知り合いでも、エルフの長老にそんな態度で大丈夫か!? 内心焦っていたら


「ハハ! 相変わらずだなアンネ、元気そうで何よりだよ」


 と、正面のソファーに座りながら、にこやかに対応してくれた。良かった、気にしていなくて……それにしても、アンネの性格は昔から変わっていないようだ。


「でも、どうしたんだい突然、会いに来るなんて……しかも、人間を連れて」


 イズディアはまるで値踏みをするかのように見つめてくる。


「大した理由な無いわね、偶然近くを通っただけだから」


「そうか、私にその子を紹介してくれないのか?」


 あっ……そう言えば自己紹介がまだだったな、すっかり忘れていた。


「そうだね! この子はライル、今はわたしと一緒に旅をしてるんだよ!」


「ライルです。どうぞよろしくお願いします」


 俺はソファーから立ち、深く一礼した。


「これはどうもご丁寧に……私はイズディアと言う、この里の長老をしている。こちらこそよろしく」


 そう言うと、立ち上がり握手を求めてきた。


「あっ……すみません……」


 向こうも気づいたようで、


「いや、此方もすまない……配慮が足りなかった。いつもの調子でついな……」


「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」


 それを聞いたイズディアは少し目を見張った後、懐かしそうに目を細めた。


「似てるでしょ?……クロトに」


 それを見ていたアンネがイズディアに言った。


「そうだな、懐かしい感じがする……ライル君だったかな、アンネに気に入られてしまって大変だろう?」


「ちょっと! 大変ってどういう意味よ!? めちゃくちゃ助けてあげてるっちゅうの!」


 アンネがプリプリと怒ってるのでフォローを入れることにした。


「いえ……色々と教えて貰って、助かってます。アンネがいなかったら、どこかで野垂れ死んでいたと思います」


「ほら! ライルもこう言ってるでしょ! 全く、失礼しちゃう!」


 我が意を得たりとアンネはイズディアに噛み付いた。


「ハハハ! 悪かったよ……しかし、ちょうど良かったよ、アンネが来てくれて……少し相談に乗ってくれないか?」


「相談? どったの? 困り事?」


 イズディアは渋い顔をして、


「ああ、とても困っているんだ。君の助けが必要だ」


「ふ~ん……いいよ、何があったの?」


 昔からの知り合いの頼みだからか、アンネは協力するようだ。


「ありがとう、助かるよ……エドヒル、ライル君にこの里を案内してあげなさい」


「はい、わかりました」


 お? これは部外者には聞かれたくない話しなのか……


「ん? なんでライルを追い出すの?」


 あれ? アンネが不機嫌になってきたな……


「いや、長い話しになるからね……ライル君も退屈だろうから、この里でも見て回ったらと思ってね」


「ライルを仲間外れにするつもり?」


 アンネの気持ちは嬉しいけど、イズディアの気持ちも解らなくはないんだよな……きっと、とても重要な事なんだと思う。ここは大人しく従った方がいいだろう。


「アンネ、俺はエドヒルさんと里を見てくるよ」


「ライル……いいの?」


「ああ……だから、イズディアさんの力になってあげてほしい」


 俺のせいで二人の関係が拗れるのは嫌だしな。


「はぁ……わかったよ! チョチョイと終らせてやるわ!」


「すまないね、ライル君……助かるよ」


 イズディアにお礼を言われ、俺は部屋から出ていった。


 部屋から出ると、エドヒルが待っていたので「お待たせしました」と言って近づいていった。



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