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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
249/812

18

 

 この日もいつも通りの朝だった。何時もの食堂で朝食を済ませ、アイリスのサポートを受けながら、シャロットはゴーレムの修理と研究を、リリィは魔術の研究を各自こなしていた。


 島はゆっくりと、だが確実にインファネースへと近付きつつある。アイリスの見立てでは、あと二日もあれば到着するらしい。何とか年末には間に合いそうだな。


 しかし、島に異変が起きたのは昼を少し過ぎた頃だった。


「おや? またお客様が訪れたみたいです。今度のお客様は少々乱暴なお方のようですね」


 アイリスが何かに気付いたのか、上を向いて呟く。島の結界を力で抉じ開けてきたと言う。


「ライル様みたいにスマートに開けて貰えたのなら、修復が早いのですが…… これでは完全に修復するには数日掛かります」


 アイリスから微妙に誉められていると、地上を探索していたハニービィ達から人間を見付けたとの報告がクイーン経由で送られてきた。


 直ぐ様俺は、ハニービィの視覚映像をクイーンを通して魔力念話で送って貰うと、頭の中で二人の男性の映像が浮かんでくる。


 一人は神父服に似た服装をしている男性で、短髪の青髪、背は高く、見た目は青年のようだが、落ち着いた壮年みたいな雰囲気を漂わせ、何とも言えぬ違和感を醸し出している。


 もう一人の男性は、防具の類いは着けないラフな格好をしていた。髪はボサボサで目が血走ってはいるが、そこまで歳はいっていないように見える。何をそんなにイラついているのか、眉間の皺は常に深くなりっぱなしで解れる様子はない。


 ん~? ボサボサ髪の男は、何処かで見たような気がするぞ。何処だったか………… っ!? あぁ! 思い出した! 鉱山町の採掘場で消息不明になった元盗賊の頭領に凄く似ているんだ。でも、こんなに若い見た目だったかな?


 疑問に思った俺は、シャロットに魔力念話で映像を送り確認して貰うと、ハッキリと断言した。


「確かに、あの時の頭領ですわね。多少若くなってはおりますが、あの目は忘れません」


 シャロットがそう言うのなら、あの男は頭領なのだろう。だけどそれならそれで、また新たな疑問が浮かんでくる。何故ここに? どうして若返っているのか? 隣の神父服の男性との関係は?


 嫌な予感がする。それは俺だけでなく、シャロットとリリィとエレミアも同じように感じていたようで、緊張感が漂う空間の中、誰も声を上げずに静まり返っていた。


「それでは、私はお客様の対応をしてきますので、失礼致します」


 アイリスは俺達の時と同じように対応する為、彼等と接触を図ろうとしているようだ。


「お待ちください! アイリスさん。片方は存じ上げておりませんが、もう一人は知っていますわ。とても危険なお人です。無闇に接近しない事をお勧め致しますわ」


 山中での盗賊討伐を思い出しているのか、シャロットは苦々しい顔をしていた。


「成る程、先程の島への乱暴な侵入といい、要注意人物という事ですね。では万が一に備え、防衛用ゴーレムを配置いたします。彼等への接触は私ひとりで試みますので、シャロット様達はここに待機していてください」


「お一人では危険ですわ。わたくしもご一緒いたします。あの頭領だった男性には多少なりとも縁が御座いますの」


 お客様にそんな危険な事はさせられないと渋っていたアイリスだったが、シャロットの強い意思を受けて諦めたようだった。


「勿論俺達も行くよ。相手の目的が分からない内は油断出来ないからね。用心しすぎるくらいで良いんじゃないかな」


「皆様…… ありがとうございます」


「お礼は終わってからですわよ。それに、お友達に力を貸すのは当然の事ですわ」


 その後、俺達は軽く打ち合わせをして彼等への接触を試みる。先ずは防衛用ゴーレムを周りの木々に紛れ込ませ、アイリス一人で彼等の用件を聞く。

 その間、俺はシャロット達を魔力収納内に納め、隠れてその様子を窺う。もし本当にあの男が頭領だった男なら、シャロットを見てしまったら、逆上して襲ってくる可能性がある。何せ捕まって犯罪奴隷になった直接の原因なのだから。

 そうなっては彼等の目的を聞き出せなくなってしまう。危険だが、アイリス一人の方が向こうも油断して話すかも知れない。



 ハニービィ達に監視をさせながら、俺は身を潜めて防衛用ゴーレム達と共にアイリスの跡を追う。迷い無い足取りで進んで行く先に例の二人組が姿を現した。


 向こうもこちらに気付いたのか、動きが止まりアイリスを凝視している。それでもアイリスは怯む事なく歩いて行き、彼等と四~五メートル程の距離を開けて立ち止まった。


「ようこそ、お出で下さいました。私はこの島の管理をしております、自動人形(オートマタ)のアイリスと申します。以後お見知りおきを。早速では御座いますが、どの様なご用件でしょうか? 」


 定型文丸出しの挨拶を繰り出したアイリスに、頭領と思われる男は舌打ちをし、神父服を着ている男は冷たい眼差しでアイリスを見詰めている。


「自動人形…… フン、造り物の分際で人間の真似事ですか? ここの主は随分と良いご趣味をお持ちのようですね」


「おい、こんなのさっさとぶっ壊して先に行こうぜ! 」


「まぁお待ちなさい。このような物でも会話はできるようですので、少し付き合ってあげましょう…… 初めまして、人形のお嬢さん。私はダールグリフ、そしてこの粗暴な男はゼパルダと言います。どうぞよろしく―― と言っても、すぐにお別れになるかと思いますがね」


 頭領と思わしき男―― ゼパルダは、自己紹介をするダールグリフの様子を見ては「また、こいつの遊びが始まりやがった」 と呆れた様子で地面に唾を吐いた。

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