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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
243/812

12

 

 島へと降り立つと、魔力収納からエレミア、リリィ、シャロット、テオドアが外に出てくる。


「こうして島の中に入りましても、船とは思えませんわね」


「…… でも、この島自体が海の上を動いているは事実」


 周りの見る分には何も変な所はないと思う。よし、ここは探索に適している者達の協力を仰ごう。


「テオドア、俺と魔力を繋いだまま地面の下を調べてほしい」


「調べるのは良いんだけどよ、何で下なんだ? 」


「もし、この島が船のような乗り物だとしたら、地下に秘密があるのが相場なんだよ」


「へぇ、確かに言われてみれば、船だったら中に幾つか部屋があるかもな。分かった! ちょっくら潜って見てくるぜ! 」


 俺との魔力の繋がりを維持したまま、テオドアは地面に潜り込んで行く。さて、地下の探索はこれでいいとして、後は周囲だな。


『クイーン、ハニービィ達に周りの探索をお願いしても良いかな? 』


『了解、どんな事を調べれば良い? 』


『そうだな…… 建造物や生き物、他に気になる物があったら報告してくれ』


 複数のハニービィ達が魔力収納なら飛び出し、周囲に散開した。報告をただ待つのもつまらないので、俺達も歩きながら島の調査を開始する。


 地面は固く、舗装された跡があることから、整備していた者がいたのだろう。それと加えて、雑草が無造作に生えている状況からして、人の手から離れ長い年月が通過しているのが窺える。


「ねぇライル、この朽ちた道の感じ、何処かで見たことがあるとは思わない? 」


「やっぱりエレミアもそう思う? そうなんだよね、まるで―― 」


「―― まるでムウナが封印されていた遺跡と酷似している」


 リリィと言葉が被ってしまったが、そういうことだ。全く同じではないけど、似ている。ただこっちの方が古めかしい感じがするな。


「では、ここは遺跡だと言うことですの? 」


「…… 恐らくは。しかも、かなり古い遺跡かも知れない」


 あの封印の遺跡よりも古いとなると、千年以上前のものとなる。


 朽ちた道の上を進み辿り着いたのは、老朽化が激しく、植物に覆われた建物が立ち並ぶ空間だった。建築材料は主に木材を使用しているな。瓦屋根の民家のようだ。誰かが住んでいたのは間違いない、しかも大勢。


 しかし建物の損傷が激しいな。あれなんか木と一体化してるぞ。何れだけの年月が経てばああなるんだ? と、ここでテオドアから魔力念話で通信が送られてきた。


『おい! 相棒の読み通り、地下通路があったぜ。それと、部屋も複数あるな。一部屋ずつ調べてみるか? 』


 テオドアの視界を通じて、その地下通路を見てみる。床と壁は金属で出来ていて、天井には幾つものパイプが張り巡らされている。長い通路には等間隔に金属扉がついていた。見た限りでは、そんなに古いとは思えない。地上はただの遺跡だと思わせる為のカモフラージュなのかね?


『クイーン、何か地上で分かったことはある? 』


『虫や鳥などは確認できたけど、大きな生物は見当たらない。それと、ここと同じような朽ちた建物が集まっている場所を子供達が見つけた』


 この島に生息しているのは虫と鳥だけか。草食動物くらいはいると思ったんだけどな。


「手分けしてお家の中を調べてみましょう」


 シャロットの提案で、俺達は別れて朽ちた家々を調べる。中はボロボロで原形もとどめている物は少ないが、ベッドやテーブル等もあり、キッチンもある。カモフラージュだとしても凝っている。ここから少し離れた場所にも同じような集落らしき場所もあるみたいだし、本当に誰かが住んでいたのか?


 ん? 地面を注意深く視てみると、魔力の流れができている。流れを辿ると島の中心から来ているようだ。


『テオドア、島の中心に向かってくれ。そこから魔力が流れているのが視える』


 地下からはテオドアを、地上からは俺達が島の中心部に向かって歩いていると、前方から魔力を持った何かが近付いてくるのが視えた。


 何だ? 魔力はあるけど生き物ではない。まるでシャロットが作ったゴーレムのシュバリエみたいな感じだ。


「……? ライル、どうかした? 」


 立ち止まった俺にエレミアは何かを察したのか、剣の柄に手をかけて尋ねる。


「あぁ、何かが近付いてくる。生き物じゃない、多分ゴーレムか何かだと思う」


「なら、それを操る術者がいらっしゃる筈ですわ」


「ん~、視た限りじゃ近くにはいないみたいだ」


 シャロットの言うように俺もそう思ったのだが、それらしい魔力が感じられない。それどころか術者との魔力の繋がりも視えないのだ。

 近付く魔力の塊は一つ、形は人間に似ている。警戒を怠らないように待つこと数分、肉眼で確認出来る距離までそれはやった来た。


「あら? あれって、確かセーラー服ではありませんか? 」


 シャロットは先ずそれが着ている服に注目した。確かに、セーラー服に似てなくもない。どちらかというと水兵の服に近いが、下がスカートなので学校の制服のようにも見える。


 黒髪を肩口で切り揃えている女性が無表情で歩いてくる。見た目は完璧な成人女性なのだが、俺には彼女が人間でないことが分かる。だが疑問も生じた。シャロットから聞いた話ではゴーレムは術者と魔力で繋がっていなければ動けない筈なのに、あの人間にしか見えないものは一人で平然と動いているのだ。これにはシャロットも驚きを隠しきれていない様子である。


 俺達と数メートルまでの距離で立ち止まった女性は足を揃え、それはとても綺麗な九十度のお辞儀をした。


「ようこそ、お出でくださいました。この島に客人が訪ねて来るのは千と七十三年、十四時間二十二分、五十秒振りで御座います」


 うぉ…… なに? ずっと数えてたの? いや、それよりも喋ったよ。言葉も流暢で、とても作り物とは思えない程の出来栄えだ。シャロットなんか早く調べたいとばかりに目を輝かせている。

 取り合えず、シャロットが暴走しないよう見張りつつ、目の前の彼女から情報を聞き出そう。

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