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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
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11

 

 夜、俺とエレミアはボートで、シャロット達は魔力収納内で眠る事にした。その際に、リリィの協力を得て作った結界の魔道具の試験運用として、ボートに結界を張る。


 魔力結晶をミスリルで囲った魔道具は、四角い見た目と大きさでルービックキューブと酷似している。発動は問題ない。転移についてもアンネの精霊魔法で試したが、きちんと防げていた。後は普通の結界の効果はあるかだけ。これについては、一晩様子を見ることになっている。


「良いの? エレミアも収納内で休んでも大丈夫なのに」


「ライルを一人こんな所で寝させる訳ないでしょ? クラリスとも約束したし、それに私がライルのそばにいたいから。迷惑だった? 」


「いや…… 迷惑なんて思った事もないよ。ありがとう」


 良かった―― そう言ってエレミアは静かに目を閉じた。暫くすると規則正しい寝息が隣から聞こえてくる。俺は中々眠れず、夜空に広がる星を眺めていた。


 明かり一つない海の上、俺一人だったのなら不安になっていたかも知れない。隣に誰かがいるだけで、こんなにも安心できる。微かに聞こえる水の音と、揺りかごのように優しく揺れるボート。


 次第に瞼が重くなり、ゆっくりと暗闇に身を任せながら、微睡みの海へと沈んでいった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「う~ん! 良く寝た。魔力収納って凄いね! あんなに澄んだ水は初めてだよ」


 翌朝、ボートの上で伸びをするヒュリピアは、収納内にある湖に感心いていた。朝食も頂いたことだし、ヒュリピアに案内して貰い、移動を始める。


「…… 結界はどうだった? 」


「発動は問題なかったよ。効果もちゃんとあったし、消費魔力もこのぐらいなら一般の人でも何とかなると思う」


「…… ん、それは上々」


 ボートを操縦しながら、リリィと結界の魔道具についてあれやこれやと話し合っているその横で、シャロットとエレミアは雑談に花を咲かせていた。


「それじゃあ、シュバリエは今アルクスさんが? 」


「えぇ、此方にはギルさんとアンネさんもいらっしゃるので、過剰戦力だと思いましたの。なら、街の守りにと一時的に命令権をアルクスさんにお譲りいたしましたのよ」


 うん、シャロットのその判断は分かる。ムウナもいるし、戦力を余らすの勿体ないからね。


 ボートを可能な限り飛ばして、ヒュリピアの後をついていくこと半日。俺達は目的地へとたどり着いた。


「あれだよ。ね? 見た目は島でしょ? でも動いてるんだよ、不思議だよねぇ」


 確かに、土の地面に木も生えていて、見紛うことなく島である。しかし、潮の流れに逆らい動いていることから、ただの島ではないのが窺える。


 魔力が島全体を覆っているのが視える。調べたという人魚達の言う通り、何かの魔術が発動しているのは間違いないようだ。


「何だか思っていたのと、違いますわね」


 思わずといった感じでシャロットが呟く。無理もない、俺も同じように思っていたから。多少は船のような形をしているかと思っていたけど、まんま島だよ。一通り外周をボートで回って確認しても、何の変哲もない島にしか見えない。


「どうする? 上陸するの? 」


 エレミアに聞かれて、暫し考える。木が生い茂っていて、中の様子が見えないのは不安だ。ここはテオドアに先行して貰った方が良いかな。


『テオドア、ちょっと先に行って様子を見てくれないか? 魔力が島全体に覆っているのが視えるから、慎重にな』


『おう、任せろ! んじゃ、ちょっくら行ってくんぜ』


 魔力収納から出たテオドアが、島と海の境目に手を伸ばす。すると、バチンッ! と何かを弾く音が聞こえたと同時にテオドアの片腕が消失した。


「相棒! こりゃ無理だ! 腕が吹っ飛びやがった!! 」


 弾き飛ばされた腕を戻しながら、テオドアがボートに戻ってくる。吃驚したけど、大丈夫なようで安心したよ。


「いや、全然大丈夫じゃねぇよ。腕一本分の魔力が飛ばされちまったんだぜ? その分の魔力、補充してくれよ」


 魔力さえ補充出来れば、体の一部を失っても問題にはならないなんて、レイスってのは凄いな。人間達から恐れられているのも頷ける。


「…… 多分、結界魔術だと思う。結構強力なもの」


 リリィの見立では結界が張られているらしい。それでなくても海岸等が見当たらず、沿岸は見上げるばかりの断罪絶壁をなしていて上陸は難しそうだ。


「これはライルさんのお力で結界を抜けるしかありませんわね」


 はぁ、それしかないか。結界を抜けるのは問題ないけど、島に入るには空を飛ばなきゃならないんだよね。


 シャロット、リリィ、テオドア、エレミアとボートを魔力収納へと入れて、魔力飛行で宙に浮く。


「ヒュリピアはどうするんだ? 一緒に来るのか? 」


「そうしたいけど、女王様から案内したら戻ってくるように言われてるの。残念だけど、ここでさよならだね」


「そうか、案内ありがとう。助かったよ。女王様にもお礼を伝えてくれ」


「うん、分かった! ばいば~い、またねぇ~ 」


 海面から腕を降り、海に潜ったヒュリピアは、瞬く間に遠ざかって行く。あれが人魚の本気の泳ぎか、確かに速い。


 ヒュリピアを見送った俺は、高度を上げて島に近付き、結界に自分の魔力を浸透させて人ひとり通れる程の穴を開ける。


『…… 何時見ても素晴らしい魔力操作。スキルの力だとしても、こんなにも簡単に穴など開けられない』


 ん~、何やらリリィが感心しているようだけど、周りが俺よりも凄い人達で一杯だから素直に喜べない。


 空けた穴を通り、島へと上陸した。さて、調査開始と行きますか。

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