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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
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9

 

「あの盗賊の頭領だった者が…… 確かに、不可解ですわね。ライルさんの言うようにあの者が生きているとしたら、このレインバーク領へ向かっている可能性は大いにありえますわ。兵士の皆様に警戒するよう通達したします」


 鉱山町から戻ると、シャロットが店の中でリリィと紅茶を飲んでいたので、グラントから聞いた元盗賊達の頭領だった犯罪奴隷が、採掘作業中に忽然と消えた事を伝えた。


「…… 元来、隷属魔術とは奴隷本人に刻むもの。それを首輪という形にしてしまったのが裏目に出たんだと思う」


「リリィさんは、頭領は生きているとお考えなのですか? 」


「…… その可能性が高いというだけ。その調べた役人の言っていたように、死んでいるのかもしれない」


 結局は憶測の域を出ない。此方としては、もしもの時に備えて警戒網を強化するだけしかない。ふぅ、次から次へと懸念要素が増えていく。その全てに対応するとなると大変なので、出来る事から少しずつやるしかない。先ずは結界の魔道具を完成させる事に集中しなくては。


 などと思っていると、俺のマナフォンが震動し始めた。


「はい、ライルです。どちら様で? 」


「私です、リュティスです。ライル君にお知らせしたい事がありまして連絡しました」


 おや? 人魚の女王様が俺に知らせたい事だって? 一体なんだろう。


「実は、漁をしていた子達が海に浮かぶ島らしきものを発見したと報告を受けまして、魔力に長けた子を調べに行かせた所、どうやら魔術で守られているらしいのです。カーミラという者の件もありますし、私達では中へは入れません」


「それで私めに報告を…… 態々ありがとうございます。しかし、島らしきものとはどういう意味ですか? 」


「えぇ、一件島に見えますが、違うらしいのです。調査した子達が言うには、島ほどの大きさを持った乗り物のようだと」


 乗り物? 船ってことか? 島と思えるぐらいに大きい船。如何にも怪しい。女王様が思っているように、カーミラと何か関係があるのかも知れない。調べてみる価値はありそうだ。

 でも、もうすぐ年末で忙しくなるし、年が明けてからの方が都合が良いんだけど。どうしようか?


「調べるなら早めにした方がよろしいですよ? そんなに速くはありませんが移動しているらしいのです。放っておいたら何処か別の海へ行ってしまうかと思います」


 潮に流されてる訳ではなく、何かしらの動力で動いているというのなら、誰かが操縦しているって事だ。見失わない内に調べるべきか。


「分かりました。明日、直接調べてみようかと思います。詳しい場所など教えて頂けませんか? 」


「それなら案内を出しましょう。明日の朝、漁港に向かわせますので、そこで落ち合うのはどうでしょう? 」


「それは助かります。ありがとうございます」


 マナフォンを切り、一息つく。今月は街でゆっくりとしていたかったけど、そうもいかないらしい。


「どうかいたしましたの? 」


 そんな俺の様子を伺うシャロットが心配そうに尋ねてきたので、今さっき人魚の女王様と話していた内容を伝えた。


「確かに、それは怪しいですわね。もし、それが本当に船だといたしましたら、とても高い技術力で作られていると思われますわ。後学のために、わたくしもご一緒させて頂いてもよろしいでしょうか? 」


「…… 島と見紛う程の船。とても興味深い。私もついていっても良い? 」


 おぉ! 魔術と機械に詳しい二人についてきて貰えるのは心強い。断る理由はないな。


「分かった。明日の朝に出発する予定だから、漁港で待ち合わせという事で、よろしくお願いするよ」


「了解いたしました。そうと決まればアルクスさんに留守をお願いしなくては。これで失礼しますわ。ごきげんよう」


「…… 私も、クレス達に言ってくる」


 そう言ってシャロットとリリィは店を後にした。俺も母さん達に話さないとな。




「そう…… もうすぐ年が明けると言うのに。無茶だけはしないようにね。危険だと思ったら直ぐに逃げるのよ」


「大丈夫だよ、母さん。エレミアとギル達もいるし、何かあってもアンネの精霊魔法で簡単に戻れるからさ。年末までには戻るから、心配しないで待っててよ」


「気を付けるのよ。エレミア、この子をお願いね」


 母さんの言葉を受けたエレミアは小さく頷いた。


「任せて、クラリス。無茶しようものなら殴ってでも止めるから」


 最近、エレミアが乱暴的になってきている気がする。俺ってそんなに信用出来ない?


「自分の胸に手を当てて考えてみなさい」


 エレミアに言われた通り、手の代わりに木の腕を胸に当てて考えてみる。う~ん…… どうしよ、心当たりしかない。そんな俺の様子を見てエレミアはこれ見よがしに嘆息した。



 翌朝、約束した待ち合わせの場所へ向かうと、そこにはもうシャロットとリリィが来ていた。


「ごめん、待たせたかな? 」


「いいえ、わたくし達も今到着した所ですわ」


 待ち合わせのカップルのような会話をしながらも、周囲を軽く見回す。クレスとレイシアが見当たらないな。二人の事だから、リリィが心配だとか言ってついてくるかと思っていたんだけど。


「…… クレス達は来ない。ライルと一緒なら大丈夫だろうと言っていた。それよりもキングの捜索に力を入れるみたい」


 まぁ、信用してくれるのはうれしいんだが、クレス達も来てくれたなら助かったんだけどな。来ないのなら仕方ない、ちゃちゃっと調べて帰りますか。

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