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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十一幕】古代遺跡と終わりを願う自動人形
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1

 

 聖教国から戻り二週間。元アンデッドキングであるレイスのテオドアとアルラウネ達を母さんに紹介した。はじめのうちは魔物という事で母さんも警戒はしていたが、意思の疎通ができ尚且つ気さくな雰囲気のテオドアに慣れたようで、今では俺よりも母さんの方がテオドアによく頼み事をしている。


「相棒のお袋さん、随分とレイス使いが荒いな。いや別にいいんだけどさ、価格調査とか俺様には相応しくないと思うんだがどうよ? 」


 母さんはテオドアにそんな事をさせていたのか。確かに調査とかには便利な存在なんだけどね。


「あら? テオドアさん、帰って来てたの? それで、どうだった? 」


「うん? あぁ…… 海産物はいつもと変わらねぇ、鶏肉は安くなってるから今が買い時だな。何でも魔獣の被害にあったとかで、死んじまったニワトリを大量に捌いて、食える所だけを持ってきたらしいぜ。今後は値上りするかもな。野菜は芋以外は相変わらずの高値だけど、エルフ達から直接仕入れているから関係ねぇか」


 すっかりと良いように扱き使われているな。


「そうなの、じゃあ鶏肉を買溜めしておこうかしら。何時もごめんなさいね、こんなこと頼んでしまって」


「なに、相棒の頼みのついでだし、別に構わねぇぜ」


 まぁ今の所、テオドアは目立った悪さもせずに大人しくしている。だけどこいつの悪趣味には困ったものだ。姿が消せるのを良いことに覗きをしまくっている。やれどこぞの主婦が不倫してるとか、修羅場になっていた家庭があるとか、とにかく下衆いものが多い。

 前に宿屋の女子風呂をリアルタイムで魔力念話を通して映像を送ってやろうかと言われた事がある。当然断ったけど、少しだけ心が揺れ動いたのは秘密だ。


「それで、街に異常はなかった? 」


「おう、何人か他国の密偵らしき人間はいたけど、特に気になることは無かったな」


 テオドアに街の様子を見てもらうようになって分かったが、色んな国からの密偵がこの街に送られてきているようだ。まぁ他国に密偵を送るなんて普通だし、一介の商人がどうこう出来るものでもないので、領主に報告するだけにしている。後は向こうで何とかしてくれるだろう。


 アルラウネ達が畑等の世話をしてくれるようになったお陰で随分と楽になった。その分、魔道具の開発とかに時間を使える。目下の目標は転移も防げる結界装置を開発する事だ。これにはアルクス先生にも協力して貰っているけど著しくはない。

 転移の仕組みは転移門に使われている術式である程度分かっているんだけど、それを防ぐ手立てが思いつかない。どうやって特定の魔術のみを防げるのだろうか? 空間を飛び越えてしまうので今までの結界ではほぼ役に立たないのだ。


 一方、シャロットのゴーレム研究も滞っていた。マナトライトにより関節部分がスムーズに可動できるようになったのは良いけど、肝心のコアの改良に手こずっているみたいだ。魔術で人工頭脳を再現して完全自律型ゴーレムを作ろうとしているらしい。


 結界もゴーレムも完全に行き詰まった状況にある。だが、それを打破してくれるであろう人物がこのインファネースに戻ってきた。


 青い髪に何時も眠そうな目をした魔術界の異端児とも呼ばれている女の子、リリィ。


 勇者を夢みる青年、金色の短髪が清潔感を漂わせる爽やか系イケメンのクレス。


 騎士の名門であるアイズハート家の長女、銀髪セミロングで少し融通の利かない生真面目者、レイシア。


 この三人が、オーク討伐を終えて最北の国であるレグラス王国から戻り、今俺の店に来ている。


「ガストールさんから聞きました。オーク討伐、お疲れ様です。オークキングの捜索はどうなりましたか? 」


 そう、クレス達はオークの大規模討伐を成功させたが、オークキングを取り逃がしてしまい、捜索の為にレグラス王国に残っていたのだ。それが今ここにいるという事は何かしらの進展があったのだろう。


 しかし、クレスは困惑した様子で指で頬を掻いた。


「実は、オークキングはまだ見つかっていないんだ。あの討伐の後、南の方向に下ったのは分かったんだけど、それ以降の足取りが全く掴めなくなってね。しかもそれだけではなく、他の国や地域にいたオーク達も忽然と姿を消してしまったんだ。オークキングの後を追う為に僕らも南に下ってきたんだけど、それまで一体もオークと遭遇する事は無かった。実に不可解だよ」


 大陸からオークが消えた? 絶滅でもしたのか? いや、オークキングは逃げ延びていると聞いているのでそれはない。大陸中のオークが何処かに集まっていると考えた方が普通かな。そうクレス達に伝えると、レイシアが若干鼻息を荒くして答えてくれた。


「うむ! 私達もそう思って心当たりを捜索したのだが、一向に見つからぬのだ! 地下にいるかも知れないとドワーフにも尋ねたけれど、空振りに終わってしまった。むぅ、何処へ行ったのやら皆目見当もつかない」


 地下を熟知しているドワーフに聞いても分からないとなれば地下には潜伏していないのだろうな。だとすれば一体何処へ?


「…… まだ探していない場所は、西のアスタリク帝国。ここより南のサンドレア王国と東のヴェルーシ公国だけ」


 相変わらずの眠そうな目をしたリリィが気だるそうに喋る。確か西にはオーガが暴れていると聞いている。そんな所にオーク達が行ったらオーガ達と衝突してしまう。流石にオークもそこまで馬鹿では無いと思う。


 そして最南端のサンドレア王国だが、これも可能性は薄い。オーク達がサンドレア王国に向かったのなら、このリラグンド王国を抜けなければならない。もしも大陸中のオークがこの国に入って来たのなら噂にならない筈がない。


 となると、消去法で大陸東に位置するヴェルーシ公国方面に向かった事になるな。はぁ、此方の問題解決どころか、更に不安要素が増えてしまった。

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