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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十幕】宗教都市と原初の罪
231/812

17

 

「ふぅ~、ひどい目にあいました。危うく取り殺されるとこでしたよ」


「何時も威厳のある格好をと言ってきましたが、今回はその格好で助かりましたね」


「はは、見窄らしいと言われてしまいました」


 ホッと一息ついている教皇様にカルネラ司教が話し掛けている間に、誓約を交わしたテオドアを魔力収納内へ案内していた。


『な、なんじゃこりゃあ!! 魔力濃度が濃いとかそんな話じゃ済まねぇぞ、魔力そのもので出来た空間だと? 魔物にとっちゃ夢のような所じゃねぇか! 俺様の見立に狂いはなかったな。ここなら直ぐに強くなれそうだぜ』


 テンションが上がりまくってるテオドアは、そのまま魔力収納内を見て回る。


『ほぅ、アルラウネ達もいるのか…… おぉ、こりゃでけぇマナの木だな。ここまででかいのは初めて見た』


 マナの大木に感心しているテオドアの後ろからムウナが走り寄り、腰に手を当て胸を張りながら声を掛けた。


『しんじん! ムウナ、せんぱい! いっしょに、おどる! 』


『あぁ? 何でガキがこんなとこにいるんだ? うん? お前、魔力がねぇな…… は? 何だ? この感覚…… やべぇ、このガキからやべぇ雰囲気がびしびしと感じやがる』


 ムウナの正体に気付き始めたのか、テオドアは恐怖でブルブルと震えだした。中々に鋭い観察眼を持っているようだ。


『む? 我よりも先にその化物に挨拶とは、随分と舐められたものだ』


 人化したギルが二人に近付いて来ると、テオドアは目を剥き絶叫した。


『ぎぃやぁぁぁ!! 何で龍までいやがるんだよ! くそっ! 良い所だと思ったのに、化物共の巣窟じゃねぇか! 』


『ばけもの、ちがう。ムウナは、ムウナ! 』


『失礼な、我をこんな奴と一緒にするでない』


『俺様から見ればどっちも同じなんだよぉぉ!! 』


 うん、どうやら上手くやっていけそうだな。良かった良かった。


 教皇様に挨拶を済ましてカルネラ司教の家に戻り、テオドアにこれ迄の事を説明する。


「へぇ、あの女がまだ生きていやがったのか。あいつはマジで恐ろしいからな。出来れば会いたくはないが仕方ねぇ。で? 俺様は何をすればいいんだ? 」


「逆に聞くけど、何が出来るんだ? 」


「あぁ、そうだなぁ…… 相棒はレイスについてどこまで知ってる? ん? そんなに知らない? なら少し説明してやるよ。俺様達レイスってのはな、体が魔力で構成されてんだ。魔力ってのは普通は肉眼で見ることは出来ねぇのは知ってるな? なら何で俺様の姿が見えてるのか、それは目に見えるほど高濃度な魔力の塊だからだ。その濃い魔力を極限に薄める事で、普段の魔力のように見えなくなるって仕組みだ。それと、体は魔力で出来ている訳だから物には触れないし、壁だってすり抜ける。剣や弓等の物理攻撃は効かないが、魔法や魔術といった魔力を使う攻撃は効く。後は…… まぁそれぐらいか。だから俺様はこの都市のような結界がない所なら、誰にも気付かれずに何処でも潜り込めるし、人に取り憑いて色々と裏工作やそのまま相手を取り殺す事も出来るぜ」


 覗き見と盗み聞きが得意という事か。魔力念話で繋いでいれば、俺が入れない場所の情報のやり取りが可能だな。諜報や斥候、暗殺にも適している。使い所が多いな。それと俺を見た時の反応といい、ギルとムウナの正体を一目で見抜く目を持っている。流石は元アンデッドキングと言ったところか。


 取り合えず全体の情報収集は教会に任せて、テオドアには俺の周りを重点的に注意して貰おう。教会がカーミラの居場所なりアジトなり見つけられたなら、テオドアを送り込むのも悪くはない。まぁ追々とその都度頼んでいけば良いか。


 テオドアの強化だが、レイスについて教えて貰ったところ、一つ試してみたい事ができた。それはテオドアに魔術を施すというものだ。レイスの肉体は魔力で構築されているのなら、その魔力を魔術で各属性に変換することで、雷の体、炎の体、水の体といった具合に変えられるかも知れない。


「ほぉ! そいつは良い! 是非ともやっくれ」


「まぁそう慌てないで。魔物に術式を刻むなんて前例が無いから、色々と検査なりして調べないと危険だ。安全性を確認出来てから少しずつ術式を刻んでいこう」


 これが成功すれば、態々相手に取り憑かなくても攻撃できるし、物体にも干渉可能になる。あれ? 結構強くなるような気がする。ここまでやって大丈夫かな? 調子に乗って俺の死後、人間に危害を加えないといいんだけど。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「カルネラ司教様、色々とお世話になりました。何かありましたら何時でもマナフォンでご連絡下さい」


「いえ、此方こそ助かりました。転移門を通じてお店の方にも寄らせて頂きます」


 翌日、カルネラ司教とエイブル助祭、その他の神官達に挨拶を済まし、アンネの精霊魔法でインファネースの近くまで行き、馬車で南門へ向かう。


「おぉ! ここがインファネースか! 中々面白そうな街だな! 」


「頼むから大人しくしててくれよ。余計な問題は起こさないように」


「大丈夫だって! 誓約もあるし、人間達に危害を加えるつもりはねぇよ。危害はな…… 」


 楽しそうにニヤニヤと笑うテオドアに不安しかない。ほんとに大丈夫か? 早速味方に引き入れたのをちょっと後悔し始めたのだった。

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