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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十幕】宗教都市と原初の罪
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15

 

 元アンデットキングのレイス――テオドア。彼がキングだったのは五百年前。だけど、勇者クロトとその仲間達によって力の大半を失い、命からがら逃げ延びた。失った力を取り戻すため眠りに就き、最近目覚めたらしい。


「その体でも眠るんだ? 」


「ん? どっちかというと、瞑想に近い感じだな。俺達アンデッドは眠る事はない。ヴァンパイアも棺の中で眠っているように見えるが、あれは意識を薄くしてるだけで寝ている訳ではないんだぞ」


 この世界にはヴァンパイアもいるらしい。というかそのヴァンパイアの一人が新しいアンデッドキングに選ばれたのだそうだ。


「くそっ! あいつ、俺様にこう言ったんだ。レイスがアンデッドキングじゃ様にならないってな! 舐めやがって、今に見てろよ~、必ずキングの座を取り戻してみせるぞ! 」


 その新しいアンデッドキングに馬鹿にされ、元部下達にも嗤われたテオドアは、自分の力を誇示するために聖教国に潜り込み、教皇様の暗殺を目論んだ。十分な下調べもせずに己の力を過信して、勢いだけで突っ込んできた結果、今こうして俺に捕らわれていると。やっぱり馬鹿だろコイツ。


「はぁ、彼は逃げ足だけは一流でしてね。よく取り逃がして苦労させられましたよ」


 昔を思い出してうんざりするカルネラ司教にテオドアは思い出したかのように声を上げた。


「あっ、お前もしかして勇者と一緒にいた神官のガキか? 久しぶり! また随分と老けたな。元気してたか? 」


「えぇ、お陰様で。貴方がキングで無くなった事を心底安心しました」


「ちくしょう…… あいつら、散々面倒を見てやったというのに、キングじゃなくなったらあっさりと裏切りやがって」


 がっくりと項垂れ、哀愁を漂わせる姿は何とも哀れである。


「それで、どうするんですか? 」


「そうですね、本来なら浄化して神の身許に送ります」


 カルネラ司教の言葉を聞いてテオドアは慌てふためいた。


「ちょっ、ちょい待ってくれ! 俺達はこんなとこで終わる訳にはいかないんだ! な? お前と俺様の仲だろ? 頼むから考え直してくれよ」


「私と貴方とは敵同士の仲ですよ。しかし…… 貴方の力は色々と役に立ちます。どうです? ライル君の力になるのなら浄化は見逃してあげますよ? 」


 え? それってコイツを味方に引き入れるって事か? 大丈夫なのかね?


「ライルってのはこのガキの名前だったな…… いいぜ、力を貸してやるよ。俺様としてもその方が都合が良い」


 何かを企んでいるような、小悪党っぽい笑みを浮かべる。


「カルネラ司教様。信用出来るのですか? 未遂だったとしても、教皇様の暗殺を企むような奴ですよ? それにもとアンデッドキングですし、危険なのでは? 」


「あぁ、大丈夫ですよ。彼はアンデッドキングではありましたが、人を殺めるような事はしませんでした。寧ろ彼がアンデッドキングになった事により、アンデッド達による被害が大幅に少なくなったぐらいです」


 なんじゃそりゃ? じゃあ、コイツは何やってたんだ?


「当たり前だ。人間なんかに手を出したら、倍以上になって返ってくるだろうが。そんな事になったら部下の数が減って、俺様を讃える声が少なくなっちまうだろ? 俺様がキングに返り咲いたら、お前にもヴァンパイア達の裸踊りを見せてやるよ。キングの権限で無理矢理命令されたヴァンパイア達の恥辱と屈辱にまみれた顔で踊る姿は見物だぞぉ。あいつら自尊心だけはくそ高いからな。そういう奴を辱しめるのは心が弾むってもんよ」


 いい笑顔で下衆な事を言う。何でこんなのがキングになれたんだ?


「それじゃあ、何で勇者達と争う事になったんですか? 」


「あ~…… それはですね、その、カーミラさんが…… 」


 うん? カーミラが…… 何だって? カルネラ司教は凄く言いにくそうにしているし、アンネも苦笑いを浮かべている。


「逆恨みだよ。カーミラっていう女のな。あの女が勇者に惚れてんはバレバレなんだが、一向に進展しやがらねぇ。だから俺様が女の方に取り憑いて理性をちっとばかし外したんだ。ほら、男ってのは一発ヤッちまえば簡単に惚れちまうだろ? 俺様がそうだったからな。俺様はあの女の為にと思ってやったのによぉ、まるで親の仇のように襲い掛かって来やがった。まったく恩知らずな奴だぜ」


 いや、それは当然だろ。他人が人の恋路に手を出すのは駄目だよ。


「はぁ…… あれからクロトさんとカーミラさんの仲が気不味くなってしまって困ってたんですよ? 未遂だったから良かったものの、余計な事はしないで貰いたいですね」


「ほんと、あれには参ったよね~。カーミラったら、絶対にぶっ殺してやるって息巻いてて、恐いったらありゃしなかったよ」


 未遂だったとしても気不味いよな。俺だったらまともに顔も見れない。


「は? 未遂? 何言ってんだ? しっかり最後までヤッてたぜ。取り憑いてた俺様が言うんだから間違いない。特等席で見届けてやったぜ! 」


「え? 本人達は未遂だと…… 」


 あちゃ~、知らなきゃ良かった事もあるのに、何で言っちゃうかな~。これにはカルネラ司教とアンネも絶句していた。


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