表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十幕】宗教都市と原初の罪
227/812

13

 

 教皇様は俺の提案を受け入れ、教会主催で餡子を使用した甘味処を出す事にした。教会の人等に餡子と団子と饅頭の作り方を教え、カルネラ司教の家へと戻る。


 教皇様とカルネラ司教の許可を貰い、カルネラ司教の家の庭にある物置小屋に転移門を設置した。これで何時でも聖教国に訪れる事が出来る。だが、聖教国に施されている結界の影響は受けるので誰でも使用できる訳ではない。


「ライル君にこれをお渡しします。これはライル君が教会に認められた証であり、聖教国を自由に出入り出来る許可証のようなものです」


 カルネラ司教から渡されたのは、教会のシンボルを象った首飾りだった。不思議な力を感じたので魔力で調べてみたが、何も分からない。


『結界と同じで属性神達の加護が込められている。これを身に付けていれば、結界の対象にはならないようだな』


 ギルの見立てではそうらしい。成る程、だから許可証なのか。この結界は転移も防げる。どうにか魔術で再現出来ないだろうか? 国や町全体に結界を張らなくとも、せめて王城や領主の敷地等の主要な場所に張れたらと思う。

 その事をカルネラ司教に相談してみると、少し困った顔をした。


「残念ですが、この結界は神達の奇跡によるものですので、どんな原理かは存じ上げないのです。お力になれなくて申し訳ありません」


「いえ、出来たら良いなと思っただけですので、そんなに気になさらないで下さい」


 やっぱり駄目か。転移さえも防げる結界、是非とも魔術で再現したい。カーミラの言葉を借りる訳ではないが、人間の可能性は無限である。なので出来る筈だ。でも俺だけでは望みが薄い。ギルは知識はあっても、そこから新しいものを生み出す事は苦手のようだし、アルクス先生やリリィの協力が必要だな。


 この日はカルネラ司教の家に泊まり、翌日、観光がてら聖都を見て回る事にした。


「態々案内して頂き、ありがとうございます。エイブル助祭様」


「いえ、カルネラ司教の大切な客人ですからね。それと、私に様付けはしなくてもいいですよ。そんな大した者ではありませんので」


 忙しいカルネラ司教の代わりに、エイブル助祭が街の案内をしてくれている。神官達の住宅街を抜けて、一般の人達が滞在している区画へと馬車で移動する。

 そこには教会が営む店に、外から来た商人が出店を出していたりと、中々に賑やかだ。


 おっ、酒場もあるのか。食物に関する戒律はそんなに厳しくはないようだ。


「聖教国にもギルドはあるんですね」


 てっきり中立を保つ為とか言って置いていないと思ってたよ。


「ギルドは何処の国にも属してはいませんので、特別に許可したそうです。しかし職員以外は永住は認められはていません」


「ならお店を開いている者はどの様に経営しているのですか? 永住出来ないのならば、いずれ店を畳まなければなりませんよね? 」


 エイブル助祭は少し呆れたような顔をして答えた。


「いや、それがですね。店員が入国時期をずらして滞在期間が切れる前に、商品の補充と同時に入れ替わるといった方法で店を継続させているのです。大した問題ではありませんのでそのままにしていますが」


 ほぉ、ビザが切れる前に店員を替えるのか。法の穴を上手く利用している。だけどその方法は個人商店では難しいな。


 日の光を反射して輝く白い街を馬車で回り、各国から訪れた商人達の出店を覗き、教会が営むレストランで昼食を済ました頃に俺のマナフォンがブルブルと震える。


「はい、ライルです」


「ライル君ですか? カルネラです。凄いですね、本当に繋がりましたよ」


 おや? カルネラ司教か。本当に繋がるかどうか試したって訳ではなさそうだけど、どうしたのだろう。


「観光を楽しんでいる所申し訳ありませんが、ライル君の力をお借りしたいのです。今から教会へ来て頂けませんか? 」


「俺の力ですか? 分かりました。今から向かいます」


 俺の力というと、魔力支配の力だよな?


 エイブル助祭に事情を説明して、教会へ馬車を走らせて貰った。昨日通った道を走り、関係者用の出入り口から教会の中へ入ると、カルネラ司教と教皇様が出迎えてくれていた。


「あぁ、ライル君。またお呼び立てして申し訳ありません。少々困った事になりまして、是非とも力をお借りしたいのです」


 困り顔の教皇様が軽く頭を下げる。


「いえ、私で力になれるのなら、喜んでお貸し致します。それで、一体何があったのですか? 」


「それは道すがらお話し致します。案内しますので、私についてきてください」


 そう言ってカルネラ司教は歩き出したので、その後をついていく。


「実はですね、門兵から怪しい人物を捕らえたとの報告がありまして。カーミラさんの事もありますので、私も取り調べに参加しました」


「怪しい人物? 何処がどう怪しかったのですか? 」


「ん~、何と言ったら良いのでしょうか、情緒不安定と言いますか、頭がイカれてると申しましょうか、取り合えず会えば分かりますよ。それて調べた結果、隷属魔術の類いは施されてはいませんでしたが、本人以外の魔力が体の中にあることに気付いたのです」


 うん? その人とは別の魔力が入り込んでいるって事か?


「それは、どういう状態なんですか? 」


「恐らくは、レイスに取り憑かれてるのではないかと思われます。力が強いのか、いくら聖水を振り掛けても出ていかないのですよ。そこでライル君の魔力支配のお力で引っ張り出してもらいたいのです」


 レイスって確か幽霊みたいな魔物だよな? え~、やだな~、幽霊を無理矢理引っ張り出したりなんかしたら、呪われちゃうんじゃない?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ