表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十幕】宗教都市と原初の罪
226/812

12

 

「では、神の側についた者達はそのままその世界に残った訳ですか? 」


「いいえ、違います。神に反した者達だけでは世界の維持は難しい。そう判断し、管理、見守る者として、神に与した者達をこの世界へと送り込みました。それがエルフ、ドワーフ、人魚、有翼人、龍、妖精と呼ばれる種族なのです」


 成る程、神に遣わされた種族という事か。ん? 種族がひとつ足りないような?


「あの、獣人族は? 」


「彼等は、特に罪が重い者達の姿です。拷問により洗脳された者達は人間へ、自ら寝返った裏切り者が獣人へ、戦争を起こした首謀者と賛同者は魔物へと姿を変えたと言われています」


 罪の重さで種族が違うのか。でも何千年も経っていれば、その枠組みも曖昧になっているのかも知れないな。


「神の世界では、命の数は常に一定でしたので必要としませんでしたが、この世界では死んでは生まれるを繰り返す流動的なものになりました。なので他の世界からも魂をつれてくる必要があったのです。そして神は更なる変化をもたらそうと、ある周期に一度、異世界の記憶持ちをこの世界に遣わすのです。勿論、その魂は死した後、他の世界に転生出来ますよ」


「それが私だと? 」


「いえ、今期は恐らく貴方のご友人であるシャロットさんでしょう。ライル君は世界の安定の為に選ばれたのですよ。謂わば龍と妖精の立場のようなものです。だからこそ、私は貴方と会いたかった」


 教皇様は満足そうに笑みを深める。異世界からの魂では牢獄にはなり得ないのか。だとすると、クロトの魂はリセットされて別の世界へ転生しているのかもな。願わくば、日本へ戻れていると良いね。しかし、シャロットが記憶持ちなのは既に知っているのか。教会の情報収集力は凄まじいな。


「二千年前の大厄災が起きたことにより、人間側にも協力者が必要だと神々が考え、この事実を知らせたうえで教会を立ち上げたのです。神のご意志に従い、世界の為に働くのであれば、罪を赦そうと約束して下さいました。赦された者達は死後、エルフ達のように他の種族に転生して神の為に働くか、別の世界へ転生するかを選ぶそうです。この話しは大司教より上の者しか知り得ません」


 そこで今まで口を噤んでいたカルネラ司教が話し出す。


「神の教えに従い、神の為に働けば罪は赦され魂は牢獄から開放される。しかしそれは教会に属する者だけ。クロトさんはそれが納得いかなかったのでしょうね」


「カルネラ司教様は何時から記憶持ちをしておられるのですか? 」


 俺の問いに答えてくれたのは教皇様だった。


「この世界が誕生した時かららしいですよ。カルネラ司教は生きた歴史の証言者なのです」


 え!? ってことは…… どんだけ転生を繰り返しているんだ? よく正気を保てるな。俺なら発狂してしまうよ。


「私は神を裏切りました。あの者の言葉に惑わされ、寝返ったのです。この世界が創られた時、私は自ら神へ提案しました。償いとして、この身を神に捧げると。神の目となり耳となり、時には口となり神のお言葉を伝える役目を仰せ付かったのです」


 カルネラ司教は赦される日が来るのだろうか? いや、本人自身が赦されたくないように見える。自分で自分が許せないのだろうな。まるで今の立場に依存しているみたいだ。


 確かに変化を求めた。だけど支配されたいとは言っていないということか? 当事者以外が聞いたら自分勝手な言い分に聞こえるのだろうな。まぁ、転生の際に記憶は無くなるのだから、知らなければ疑問にも思わない。永遠にこの世界で殺し合いを繰り返す。ある意味、神は願いを聞き入れた。その結果、思ってたのと違うと文句を言うクレーマーのようだ。ギル達が愚かと言うのも頷ける。だけどそれも人間だからね、どうすることも出来ないよ。


「連絡はこのマナフォンでお願いします。私が作った通信の魔道具です」


 しかし教皇様は難しい顔をしただけで受け取らなかった。


「誠に申し訳ありませんが、こういう精密な道具は使いこなす自信がありません。カルネラ司教がお持ち頂けませんか? 」


「はぁ、仕方ありませんね。分かりました。私がお持ち致しましょう」


 器械音痴ならぬ魔道具音痴っ訳か? まぁカルネラ司教にも渡す予定だったから別に良いんだけどね。これで何か情報を掴んだら何時でも連絡してもらえる。


「あの、聖教国でもマナの木を植えたいのですが、よろしいでしょうか? 」


「勿論ですとも。私共が全身全霊を掛けて立派な大樹へと育ててみせましょう」


 これに関してはやる気を見せる教皇様。お歳だから盆栽が趣味に合うのかな?


 教会の敷地内にある広い場所にマナの若木を植える。聖教国が管理して守り育てるマナの木に、「これでまた、神に奉仕出来る事が増えました」 と教皇様は感激していた。

 宣言通り、エルフの里にも負けない立派な大樹へと育てて欲しいものだ。


 ここから先は商売の話に移る。何をするにもお互い先立つものがなければ何も出来やしない。餡子を気に入っていたので、ぜんざいとかも受けそうだ。餅だと喉詰まりが怖いから、白玉団子の方が安全かな? だったら醤油団子もいいな。聖教国にそういう店でも出そうかね。材料だけ俺が用意して、教会の者が店舗なり出店なり出して参拝者達を相手に商売すれば多少は稼げるかもな。


 聖教国からは神の祝福を受けた水、“聖水” なるものを仕入れる。レイスとか言う幽霊みたいな魔物に有効なのだそうだ。直接相手にぶっかけるのも良いし、武具に振り掛けても効果があるらしい。

 幽霊か、前世からそういうのは苦手なんだよね。出来れば会いたくはないな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ