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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十幕】宗教都市と原初の罪
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10

 

「全員死んでしまった場合はどうなるんですか? 」


「その場合は、暫く時間をおいてからまた勇者候補から選び直します。その分魔物による被害が多くなりますが仕方ありませんね」


 早く勇者が決まるのは良いけど、デメリットの方が大きいような気がする。


「魔王はどの様に決まるのですか? 」


「それは “キング” と呼ばれる魔物から選ばれます。今判明しているのは、オークキング、オーガキング。ゴブリンキングは討伐されたので除外ですね。この短期間で三体ものキングが出現したとなると、魔王誕生の兆しかもしれません」


 オークキングが確認されたのは五百年振りだと何処かのギルドマスターも言っていたし、本当に魔王誕生の予兆なのかも。そうすると、勇者選定も近いうちに始まるということか?


「司教様、カーミラがこの世界を牢獄と呼んでいたのを納得していましたよね? それは何故ですか? 人類が望んだ世界というのは? 」


「ライル君にはそれを知る資格が十分にあります。しかし此処では言えないのです。お手数ですが明日、私と一緒に教会まで来て頂けませんか? そこで全てをお話致します」


 またしてもお預けかよ。全てはあの大聖堂へ行ってからか。


 もう夜も遅いのでこの日は部屋で休み、翌日、朝からエイブル助祭に御者をしてもらい大聖堂へと向かうのだった。


 朝の街並みは夜とは違い、一言で言うのなら “白” である。建物も道も白を基準としていて、日の光が反射して眩しいくらいに明るい。冬は良いけど夏は凄く暑くなりそうだ。確か白煉瓦って言うんだよな。


 中央にある大聖堂に近付くにつれて、家は大きく立派な物になっていく。まぁ枢機卿達の家が見窄らしかったら威厳も何もないからな。


 まるで白亜の城というか、結局前世で俺が死ぬまで完成には至らなかったあの教会のような、そんな感じの建物だ。朝から大勢の人達が行き交っている。大聖堂から都市の門まで一本の道が続いているので、初めて訪れた人でも迷わず辿り着けるようになっている。


 俺達はその道を通らず、関係者用の道と出入り口を利用する。関係者用でも立派な門構えだ。国の予算の殆どをこの教会につぎ込んでいるのではないかと思ってしまう。


 豪華絢爛な聖堂とは逆に、テーブルと椅子だけが置かれた部屋に通された俺達は、カルネラ司教と一緒に入ってきた簡素な法衣に身を包んだ老人と相対していた。


「ようやくお会い出来ましたね。お待ちしていました、神に選ばれし者よ」


「いえ、そんな大層なものでは…… 私はライルと申します。あの、貴方は? 」


 教会のお偉いさんかな?


「あぁ、これは申し遅れました。私はフレデリコと言います。過分ではありますが、教皇をしております」


 おうふ…… 枢機卿あたりかと踏んでいたら教皇様かよ。教会のトップがいきなり会ってくれるなんて、色々と大丈夫か?


「こ、これは教皇様とは露知らず、失礼致しました」


「いえいえ、どうかお気に為さらずに。私の方から無理を言ってこの場を設けさせて頂きました。ライル君、私は貴方と話がしたかったのです」


 教皇様が俺と何の話がしたいのだろうか? 過度な期待をされてなければ良いのだが。


「その前に、カーミラについて話し合う必要がありますね。大方の事情はカルネラ司教から伺っております。神のご意志に逆らう行為、見過ごす訳にはいきません」


「では、ご助力して下さるのですか? 」


 教皇様は柔かな笑顔で頷いた。


「えぇ、勿論です。我々教会は、全面的にライル君個人に協力すると約束致します」


「本当ですか? ありがとうございます! 」


 教会のトップ自らが協力を宣言してくれた。これ程頼もしい味方はない。俺はカーミラの情報を知りうる限り全て話した。


「う~む、転移魔術に召喚魔術も厄介ですが、魔物を造り出すとは…… 神に弓引く行為であり、決して許される行いではありません。何を企んでいるのか存じませんが、一刻も早く彼女の凶行を阻止しなくてはなりませんな。先ずは各国にいる司教達に連絡を取り、情報を集めさせましょう」


 おぉ! 聖教国が本格的に動き出すのなら、カーミラの計画も仲間の有無も直ぐに分かりそうだ。


「魂の開放とは…… 逆恨みというものです。我々はそれだけの罪を犯してしまったのですから、罪を贖わなければなりません。それで初めて我々の魂はこの世界から開放されるのです。そのように神は約束してくれました」


 約束? と頭を傾げていると、教皇様は俺に質問を投げ掛けてきた。


「ライル君は、この世界が誕生する前の事をご存知ですか? 」


「はい、人魚の女王様から完璧な世界だったと聞いております」


 それを聞いて鷹楊に頷く教皇様。


「そう、その世界は老いもなく、寿命もなく、食事も必要としなく、誰もが神の奇跡が行使できる世界。変化も何も必要ない完璧な世界でした。それを今の世界に住まう者達が壊してしまったのです。これが我々の最初の罪、“原初の罪” と呼んでおります」


 世界を壊した? なんとも規模が大きい罪だな。千年前、この世界を壊しかけた過去があったけど、既に前例があったということか。二度目ともなれば、そりゃ神様も怒るわな。


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