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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第十幕】宗教都市と原初の罪
219/812

5

 

 放心状態から戻ったアルラウネは、アンネの案内で収納内を回る。けれどもまだ心ここにあらずといった様子だ。マナの大木を目の前にした時なんか、うっとりとした表情をしていたな。



「スゴイゾ! マナトマリョクニミチタバショ、キレイナミズニ、リッパナマナノキガアル。マサニリソウノトチダ! 」


 魔力収納から出てきたアルラウネは、興奮覚めやらぬ様子で他のアルラウネ達に、自分が見てきたものを伝えている。


「キレイナミズ……」

「マナノキ……」

「ホウフナクダモノ……」

「タクサンノハナ……」


 話を聞いてる内にアルラウネ達は、少しずつその気になってきたようだ。あともう一押しだな。


『ねぇねぇ、ライル。アルラウネはね、液体しか口に出来ないの。それと、わたし達妖精と同じで甘党なのよ』


 アンネから役立つ情報を貰い、俺はアルラウネ達にある提案をした。


「皆さん、俺は貴方達を支配するのではなく、雇いたいのです。なので働きに応じて報酬も用意してあります。俺の魔力収納内にはハニービィ達がいて、蜂蜜を作っています。その蜂蜜を報酬として考えていますが、どうでしょうか? 」


 蜂蜜、その言葉を聞いたアルラウネ達が揃って俺を凝視する。最初の時と違って、熱意が籠った目だ。本当に臆病な性格なのかと疑ってしまう。


「ハチミツ…… ハニービィノハチミツ…… 」


 どうやら蜂蜜は止めの一言になったようで、アルラウネ達は心を決めたらしい。わらわらと俺の元へ集まってくる。


「ワタシタチハ、トリヒキニオウジル。モシ、ナットクガイカナカッタリ、ヤクソクヲタガエタナラ、デテイク」


「はい、それで結構です。これからよろしくお願いします」


「コンゴトモ、ヨロシク」


 集まってきた二十五体のアルラウネ達を魔力収納へと入れる。本当はもっといたけど、先の冒険者達により半数以下になってしまったらしい。なのに、同じ人間である俺の提案を良く受け入れてくれたものだ。恨んだりはしないのかと聞いた所、一体のアルラウネが何でもない風に答えてくれた。


『ワタシタチハ、シュガソンゾクデキレバ、ソレデイイ。スコシデモノコッテイルノナラ、マタフヤセル』


 個人よりも種としての存続が大事ということか。やはり人間とは根本的に考えが違うな。


 アルラウネ達には、主にニワトリと畑、田んぼの世話をしてもらう。エレミアに頼んで畑の世話を教えようとすると、無用だとアルラウネ達は言った。


『ヤリカタハシッテイル。ニンゲンタチトクラシテイルトキニ、オシエテモラッタ』


 驚いた事に、アルラウネ達は昔人間達と共に暮らしていた時があったらしい。それは千年も前の話なのだが、小さな村で一緒に畑の世話等をして過ごしていたと、言葉もその時に教えてもらったと言う。それから千年の間、親から子へ、人間の言葉と共に語り伝えられている。


 成る程、それで言葉が喋れるのか。結局、戦争か何かの争いで村は滅び、アルラウネ達は森へと逃げた。一緒に暮らした事もあってか、今までのように人間を襲う気にはなれなかったらしく、見付からないようにひっそりと森で暮らしてきたそうだ。


『シカシ、サイキンニナッテ、ニンゲンタチガ、モリニヒンパンニハイッテクルヨウニナッテ、コマッテイタ。コノテイアンハ、ワタシタチニトッテモ、ツゴウガヨカッタ』


『そうですか、お互いに利益のある取り引きが出来て何よりです』


 寝床はどうしようかと尋ねたら、マナの大木の傍で休めればそれで良いとのこと。何でも安心して休めるらしい。食事は基本水だけで十分なのだが、果物や蜂蜜も好物だと言う。まぁ液体なら問題なく食べれるという事だ。デザートワインなんか好きそうだな、後で飲ませてみよう。


『アノ、ヨケレバ、カズヲフヤシタイノダガ、イイダロウカ? 』


 冒険者達によって、減らされてしまったので新しく仲間を増やしたいと言ってきた。


『数にもよりますが、大丈夫ですよ。だけど、そう簡単に増やせるものなんですか? 』


『ワタシタチニ、セイベツハナイ。タネヲツクリ、ツチニウエレバ、アタラシクウマレテクル』


 どうやらアルラウネには性別はなく、個人で種を作る事が出来るようだ。その種を土に植えれば、植物のようにアルラウネが生えてくるらしい。取り合えず、十体だけ増やして様子を見る事にした。


 エレミアとアルラウネの知らない田んぼの作業を俺が教えて、早速働いて貰う。


 アルラウネは下半身の根っこから水を吸い取り蓄える事ができ、逆に放出する事も可能だ。その仕組みを利用して、湖から蓄えた水を畑に撒いていた。ニワトリ達には少し手こずっているようだけど、概ね問題はないように見える。うん、この調子なら大丈夫そうだ。


『クイーン、収納内に住む先輩として、色々と気にかけてやってほしい』


『まかせて、主。先輩として、きちんと面倒みる』


 後輩が出来て張り切っているのか、クイーンは頼もしい返事をした。

 これで他の事にも時間を割く余裕が出来るな。こうして俺の魔力収納に新たな住人が加わった。

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