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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第八幕】平穏な日常と不穏の訪れ
180/812

8

 

 冒険者ギルドにある通信の魔道具を使い、近くの領地にあるギルドへ救援の要請を行ったが、冒険者の数がまだ足りない。腕に覚えのある者達は、レグラス王国に向かっているらしい。ギルドを通じて王都にも連絡したけど、間に合いそうもないな。


 何処かで防衛線を張れば良いのだが、此方の戦力が足りない。ならば王都からの救援がくるまで、街に籠って守りに徹した方が良いと判断した領主は、ゴブリンの軍勢を街で迎え撃つ事に決めた。


 食料は人魚とエルフの協力のお陰でどうにか持ちそうだ。後はゴブリン達との戦いが長引かない事を祈るだけ。

 ゴーレムの数も二百に近付いた頃、門兵がゴブリンの軍勢らしき影を確認した。進行が速すぎる、もう目視できるまで近付いてきたか。街の中が慌ただしくなる。緊張と不安が街を包み、インファネースは重苦しい空気に支配されつつあった。


 冒険者とゴーレム達が外に出て迎撃準備を整え始める。俺も壁上から確認したが、報告にあった規模より少ないな。それに見覚えのあるシルエットと魔力だ。


「おい! あれはゴブリンじゃないぞ! あれは…… ドワーフだ! 百人はいるぞ! 」


「ん? ちょっと待て、ドワーフだけじゃないぞ! あの緑色の髪に長い耳、エルフだ…… エルフがドワーフと一緒にこっちに向かって来ている。どうなってんだ? 」


 冒険者と兵士達がガヤガヤと騒ぎ出すのも無理はない。この街、いや、この国始まって依頼の前代未聞の事なのだから。


 唖然とする人達を素通りして、騒ぎを聞き付けて門まで来た領主の元へドワーフとエルフ達は歩みを進めた。


「お初にお目に掛かります。私はドワーフの兵士達の指揮を任せてもらっております、ルドガーと申します」


「俺は、エルフの戦士達の代表をしている、エドヒルだ」


 あれは一緒に化け物と戦ったドワーフの兵士長、ルドガーに、エレミアの兄で、エルフの戦士達を束ねているエドヒル。何故ここに?


「何とか間に合ったようじゃ。魔動列車のレールをここまで引っ張るのに案外手間取ったらしくての」


 壁上から降りて様子を伺っている俺に、ドルムが話しかけてきた。


「どういう事ですか? 」


「そりゃあ、一度にあんな人数のドワーフがぞろぞろと、お前さんの店から出てきたら怪しまれるじゃろ? じゃから急いで開通作業をしたのじゃよ。話を聞いたエルフ達もな、自分達も連れていって欲しいと頼んできたのじゃ」


 え? それってもしかして、街の為に集まってくれたのか? まさか、一緒に戦ってくれる?


「グ、グフフ、ようこそ、吾輩達の街へ。我々はあなた方を歓迎致しますぞ。此方との齟齬がないよう確認したいのだが、何用でこの街へ? 」


「勿論! 共に戦う為です! 我が王は、この街の海産物をいたく気に入られております故、我々を遣わせたのです。ともにゴブリン共から街を守りましょう! 」


「俺達エルフも同じ考えだ。この街が俺達の里にもたらしてくれた恩恵は大きい。なので、我等が長老の命で協力しに来た」


 ルドガーとエドヒルの言葉を黙って聞いていた兵士と冒険者達は、喜びの叫びを上げた。希望を見出だした大歓声は街中に響き、瞬く間にエルフとドワーフからの救援が来た事が知れ渡った。


 ドワーフの兵士達とエルフの戦士達は、領主の館で来るゴブリン達との戦闘に備えている。


「兄さん! まさか兄さん達が来るなんて思ってもいなかったわ。教えてくれても良かったのに」


「すまない、色々と準備に忙しくてな。それに、お前達が世話になっている街だから、俺も守りたいと思ったのだ」


 そう言ってエドヒルは、優しい眼差しを浮かべながらエレミアの頭を撫でていた。


「ご無沙汰してます。今回はクレスさん達がいないうえに、戦える人間が少ないと聞きまして、急遽準備を整え、出陣した次第です」


「有り難う御座います、ルドガーさん。この兵士達は化け物と戦ってくれた皆様ですよね? こんなに心強い救援はありませんよ」



 百人のドワーフ兵と五十人のエルフの戦士達により、勝機が見えてきた。それで街の人達と難民達の不安は幾分か解消されたが、問題が解決した訳ではない。


 領主は、防衛の陣形をドワーフとエルフを交えたものに組み直した。ドワーフは斧による近接戦が得意というので、冒険者と共に前衛に配置。兵士達は街の守りに専念し、弓が得意なエルフ達には街の壁上から矢を射って貰う形にした。

 二百体のゴーレムはゴブリンを殺す為だけのプログラムをされているので、積極的に攻撃を仕掛けて貰う。討ち漏らしたものを冒険者とドワーフ達で仕留める。

 それでもゴブリンに突破されてしまったのなら、各門前で守りを固めている兵士達が待ち構え、壁上からはエルフ達の弓矢がゴブリンを襲う。これで王都からの救援が来るまで持ちこたえるか、撃退もしくは殲滅出来れば此方の勝利である。


 地上での活動が困難の為、人魚達は食料面でしか協力出来ない事を申し訳なく思っているが、それだけでも十分だ。


 迎え撃つ準備も心構えも出来た。気合も充分、士気も高い。後はゴブリンを待つだけ、来るなら来い!



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