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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第二幕】マナの大樹と眼なしのエルフ
17/812

1

 

「ライル~! そっちに行ったよ~!」


 上空からアンネが叫ぶが余り意味がない、なぜなら俺には相手が視えているから。

 魔力の塊が、四足歩行の白い影となって、器用に木々の間を潜り抜け此方へ向かって走ってくるのが視える。


 俺は魔力収納から剣を取り出し水平に浮かせた。その時、獣道から「フゴォォォ!」と鳴き声を上げながらそいつは一直線に走ってくる。


 剣の切っ先をそいつに向けて狙いを定める。


 魔力を剣に溜め、一気に放つ! 剣はそいつの頭目掛けて飛んで行き、額に深々と刺さった。


 そいつは地面に線をつけながら前のめりに倒れ、ピクリとも動かない、どうやら息絶えたようだ。


 あれから俺は生きるためだと、自分を説得して命を頂いている。


「やったね♪ こいつは大物だぁ! もうビッグボアくらいなら一人でも問題ないね」


 俺の身長を少し越えるぐらいの大きな猪を眺めながらアンネがはしゃいでいる。


 ビッグボアを魔力で包み、浸透させ“支配”する。全ての生物には魔力が宿っていて、それは死んだ後でも魔力は残り少しずつ消えていくらしい。

 だけど俺の “魔力支配” のスキルがあれば、魔力そのものを支配出来るので反発は起きない。まぁ、意志がない物限定だけどね。


 俺は、支配したビッグボアから血を全部抜き、毛皮、肉、内臓と別けて、自分の魔力へと収納した。


 この魔力収納なのだが、収納した物はすべて俺の魔力で支配されている状態なので、腐敗の原因の微生物を抑制することにより腐りにくくする事が可能であり、逆に発酵を促す事も出来る。


「いや~、大分、魔力操作が上手くなったね! 私の教え方がいいからかな?」


 解体から収納までの流れを見て、アンネは自慢気だった。

 確かに半年前に比べたら上達したな、さすが五百年以上生きてるだけはある。


「そんじゃ、帰ろっか?」


「ああ、そうだね」


 森の中をしばらく歩いた先には大きく拓けた場所があり、そこには木で出来た家が一軒建っていた。

 この家は丸太を加工して俺とアンネが建てた物だ。アンネが精霊魔法で木を切り、俺がその木を魔力支配で加工した。

 簡易的な家だが、なかなかの住み心地で結構気に入っている。


 この半年、幾つかの村を見つけたがよそ者には厳しく、すぐに出ていかなければならなかった。ならいっそ、村に住まずに少し離れた場所に家を建てて暮らしたらどうだろうか? と思った訳だ。


 この森を抜けたすぐの所に村があって、そこで色々と必要なもの――塩や服などの必需品――はすべてその村から買っている。


 そのお金は何処からくるのか? 答えはさっきのビッグボアである。毛皮や牙、肉を売ったお金で調達している。それと他にも売っている物はあるけど。


「たで~ま~、やっぱ我が家が一番だね!」


 そう言うとアンネは端布で作ったハンモックに乗り、ゆらゆらと揺れていた。俺も魔力収納から椅子を取り出し座る――その椅子とは屋敷から持ってきたいつもスキルの検証や実験に使っていた椅子である。何だか愛着が湧いてしまい、つい持ってきてしまった。


「あんた、その椅子ほんと好きだよね~」


 アンネはハンモックに揺られながら、呆れていた。


「別にいいだろ、思い出が詰まった椅子なんだよ」


「ふ~ん……まぁいいや、それより! アンネちゃんの魔力授業の時間だよ♪」


 なにがアンネちゃんだよ……


「それじゃ、この前のおさらいからね! ちゃんと覚えてる~?」


「覚えてるよ、魔力による思念伝達だろ?」


「堅い! 言い方がカチカチだよ! 魔力念話で良いじゃん」


「いや、でも正確に言ったら――」


「――魔力念話!!」


「あ、はい」


 変な所で拘るんだよな~、半年一緒にいるけどまだ解らないな、妖精の感性ってやつは……


「それではライル君、魔力念話について説明をしたまへ」


「はぁ、えっと…… 相手の魔力に自分の魔力を繋げ、思念や意思を伝え合うものです」


「うむ、よろしい。では、魔力同士の反発については?」


「魔力操作に長けている者ならば反発も起きないような、極少量の魔力で魔力念話が可能になります。それと相手が拒絶せずに受け入れた場合も反発は起きません」


「ふふん♪ 完璧だね! じゃあ次は実践だね、ライルの方から魔力を繋げて」


 イメージとしては細い糸のように魔力を伸ばして、アンネへと繋げて、伝えたい事を相手に届けようと強く念じる。


『聞こえるか? ちゃんと伝わってる?』


『うん、 ばっちし伝わってるよ! アンネちゃん好き好き大好き!ってね♪』


『すいません、失敗のようですね……』


 俺は魔力の繋がりを切った。


「ちょっと~、冗談が通じないんだから、そんなんじゃモテないよ?」


「別に、いいよ」


 まぁ、こんな体ではモテるモテない以前の問題だけどね。


「よし! 今度は言葉が通じない相手にしてみよう」


 あぁ、“彼女” か……

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