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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第六幕】南商店街の現状と対策
127/812

18

 

 明くる日のお昼時、俺はエレミアと共にアンネの精霊魔法でグラント達のいる鉱山町に来ていた。


 あれから三ヶ月は経っているかな? そんなに滞在していなかったけど懐かしく感じる。あの時よりも人が多く、修復された家が目立つ。

 前は事務所兼宿屋だったアマンダの店へ向かうと、カウンターにいたサーシャが俺達の見て驚きの声を上げた。


「ライルにエレミア! 何よ、久しぶりじゃない! 」


「お久しぶりです、サーシャさん。グラントさんに少し用事がありまして、寄らせて頂きました」


「父さんに? それなら食堂にいるわよ」


 サーシャに礼を述べて食堂に行くと、そこには大勢の筋骨隆々な男達が豪快に食事をしている。その光景を目にエレミアが、「増えてる」と顔をひきつらせて呟いた。


 うん、確かに増えている。町から出ていった人達が戻ってきたのかな? 懐かしくも騒がしい食事をしている筋肉達を通り抜け、目的の人物へと辿り着いた。


「お久しぶりです、グラントさん。随分と町が賑やかになりましたね」


「ん? …… !? お、おう! ライルじゃねぇか! 久しぶりだな。商品を売りに来たのか? それとも…… ミスリルか? 」


「はい、その両方ですね」


 話が早くて助かる。グラントは暫し思案した後、席を立つ。


「ここじゃなんだから、場所を変えよう。俺についてきてくれ」


 そう言われてついていく中、グラントは今の町について色々と教えてくれた。


「あれからこの町は少しずつ変わっていった。いや、戻っていったと言えばいいか。建物は修復されていき、出ていった連中も帰ってきている。見ろ、冒険者ギルドもこの通りだ」


 グラントが指差した先にはあの廃虚も当然だった冒険者ギルドの建物が見事に修復されていた。


「この町の建物は石材を使っているから、土魔法で修復は簡単に出来るんだぜ。王都に連絡したあと直ぐに冒険者ギルドを町に戻し始めたのさ。ここから王都までミスリルを運搬しなきゃならねぇからその護衛と、洞窟内の魔獣や魔物を倒して貰うためにな。だけど行商人は増えたが、まだ商工ギルドは出来ていない」


 本来の町の姿に戻りつつある光景を眺め歩いていると、採掘場までつれてこられた。先を歩いていたグラントは立ち止まり、振り向いたその顔は申し訳なさそうにしている。


「そのな…… 製錬されたミスリルは国の役員どもに管理されてて渡す事は出来ねぇんだ。製錬前のミスリル鉱石なら上手く誤魔化せんだけどよ、それでいいか? 」


 製錬されたミスリルだけを国で管理しているが、鉱石には目が届いていないのか。採掘された鉱石まで管理するのは面倒なのは分かるけど、それでいいのか?


「はい、製錬は此方でしますので大丈夫です」


「そうか、すまねぇな」


「いえ、鉱石といえどミスリルを融通してくれるのですから、感謝しています。それで、金銭での取り引きにしますか? それとも現物ですか? 」


「そうだな…… どうせミスリル鉱石を売った金でお前から色々と買うから現物にするぜ。俺達が望むのは、あの酒精が強い酒だ。それと調味料をくれ。後は回復薬と…… 何か新しい商品でもあるか? 」


 俺は洗浄の魔道具とマジックバッグを魔力収納から取り出してグラントに説明すると、どうやら気に入ってくれたようで、かなりの量のミスリル鉱石と交換して貰えた。


「こりゃスゲェぜ! こいつがありゃ一々風呂に入らなくても済むし、マジックバッグと言ったか? 掘った鉱石を運ぶのに大分役に立つ。良い買い物したぜ」


「此方こそこんなに頂いてしまって、大丈夫なんですか? 」


「お? 全く問題はねぇ。ミスリルといっても鉱石だからな、それにライルが見つけた鉱床付近でまた新しいのが見つかってよ。もう掘れば出てくるお祭り騒ぎだ。このぐらいどうって事はないぜ」


 ガハハハ! とグラントが景気の良い笑い声を上げていると、トロッコに乗って坑夫達が戻ってくる。その先頭には黒光りした肉体を持つガスタルがいた。


「親方! 今戻りやしたぜ! おっ? ライルじゃねぇか! お前来てたのか、久しぶりだな! お蔭様で毎日堀り放題だぜ! 」


 ガスタルはにこやかに白い歯を見せ、胸を激しくピクピクと動かしている。その様子を見たエレミアは、そっと目を逸らしたのだった。


 ガスタル以外の立派な肉体を持つ坑夫達が首輪をした人達をつれている。あれは確か奴隷が着ける首輪だったよな? 俺の視線に気付いたグラントがあの人達について説明してくれた。


「あれは犯罪奴隷だ。岩盤が脆い所や、俺達では危険な場所を担当させている。今月に入ってもう二人は死んでるな。まぁ、こいつらは盗賊だったみたいだし、使い潰してやれと言われてるから遠慮はしねぇけどよ。そういや、あいつらが捕まったのはレインバーク領だって聞いたが、お前は知ってるか? 」


 あのときの盗賊達だろう、ここで強制労働をさせられていたのか。元盗賊達の顔には生気がなく、死んだ目をしている。これが犯罪を犯した者達の末路か、自業自得とはいえ悲惨な光景だ。


 ミスリル鉱石を手に入れた俺は、早速、魔力支配でミスリルに製錬して、そのミスリルで作成したぎりぎり人ひとり通れる位の鳥居型転移門を、目立たない場所に設置する。そして自分の店に戻って地下にもう片方の転移門を設置した。これでミスリルと鉄鉱石の流通経路を確保したぞ。


 確かガンテは自分の店で、一度に多くは出来ないが製錬も可能だと言っていた。なので鉱石だけ渡せば大丈夫かな。


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