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腕なしの魔力師  作者: くずカゴ
【第六幕】南商店街の現状と対策
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13

 

 準備が整ったという事で、俺達は別室に向かい一人ずつ面接をしていった。まぁ、面接といっても軽い自己紹介から始まり、業務内容を説明するだけなんだけどね。それでも、実際に会って言葉を交わしたり態度や表情を見てると、何となくその人の性格が分かってくる。


 う~ん、今のところ、有力候補は羊型獣人の女性かな。そして最後の候補者が部屋へと入ってきた。

 それは犬型獣人の双子の兄妹だ。二人は俺の姿を確認すると、少し驚いたかように尻尾が逆立つ、こんな見た目だから仕方ないね。今までの人達も大なり小なり俺を見ては驚いていたからな。


 恐る恐るといった感じで双子は近づいてきて、自己紹介を始める。


「初めまして、妹のキッカと言います。宜しくお願いします」


「えっと…… は、初めまして、兄のシャルルです。よ、宜しくお願いします」


 二人とも背は俺より少し小さく、犬耳と尻尾が生えている。髪の毛は白いが老人の白髪とは違って艶があり、妹の髪型はセミロング、兄はショートヘアだが、前髪が長くて目が隠れている。たまに髪の隙間から目がチラリと見える位だ。


「初めまして、南商店街で雑貨屋を営んでいるライルと言います。俺があなた達を雇う事になったら、店の接客をして頂く事になりますが、問題はありませんか? 」


 俺の問い掛けにキッカがピンッと背筋を伸ばして答える。


「はい! 私達は両親から読み書き、計算を習っていましたので問題はありません…… シャルル…… あなたも、ほら」


「あ、はい。ぼ、僕も問題は、ありません」


 うん、妹のキッカはしっかりとしている感じで、兄のシャルルは少しおどおどしているな。これが性格なのか緊張からくるものなのかはまだ分からないけど。


「成る程、分かりました。給料に関しましては、この資料に記載されている金額でよろしいですか? 変更はありませんね? 」


「はい、変更はありません。あの…… 私達、二人一緒がいいんです。ですから、高いと言うのなら安くしても構いませんので、どうか一緒に雇って下さい。お願いします! 」


「お、お願いします」


 頭を深々と下げて懇願するキッカを見て、シャルルも急いで頭を下げる。


「大丈夫ですよ。雇うとしても、二人一緒ですので」


 俺のその言葉でほっとしたのか、幾分か表情が柔らかくなったようだ。その後も軽い質問をして面接を終えた。


「俺としては最後の双子の兄妹を雇おうかと思っているんだけど、どうかな? 」


「真面目そうだし、良いんじゃない? 」


 エレミアの了承も得た事だし、あの双子に決めるか。

 バルトロにシャルルとキッカを雇う旨を伝えて、早速手続きに移る。

 二枚の契約書にサインをして一枚は俺が、もう一枚はバルトロが預かり、契約料を払った。期間は半年、この半年間であの双子が信用できると判断でき、双子の方も俺の店でこれからも働きたいと思ってくれたなら、奴隷としてではなくきちんと雇おうかと考えている。


「ご契約有り難う御座います。また人手が必要になりましたら、是非とも私めの奴隷をお求め頂きたく存じます」


「その時があれば、宜しくお願いします」


 俺は双子の兄妹を連れて店に戻り、母さんとアルクス先生に紹介した。


「まあ! 可愛らしい! 私はライルの母でクラリスよ。宜しくね、キッカちゃんとシャルル君」


「僕は魔術師のアルクスと言います。訳あってここに住んでいまして、偶に店の手伝いをしています。宜しくお願いしますね」


 アルクス先生はにこやかに挨拶を交わし、母さんはキッカとシャルルの頭をこれでもかと撫で続けている。そんな母さんの行動に二人とも困ったような顔をしているが、尻尾は微かに揺れていた。


「食事はまだでしょ? 先に昼食にしましょう」


 店番をアルクス先生に任せて、俺達は二階のダイニングルームへ向かった。そこで食事をしながら今後の事について説明をする。


「悪いけど、部屋は二人一部屋になってしまうけどいいかな? 」


「はい、大丈夫です。向こうでもそうでしたから」


 何でもない風にキッカが答えた。そう言えば奴隷商では五人で一部屋だったな。


「業務内容は先に話した通り、この店で接客をしてもらうのだけど、地下室は倉庫になっていて、許可なく入らないようにお願いするよ」


「はい、分かりました」


 さっきからキッカしか話してないな、シャルルは黙々と料理を食べていて話をしている余裕は無さそうだ。母さんの唐揚げは美味しいからね。あ~、エールが欲しい。いやいや、まだ仕事中だ、我慢しなくては。


「フフ…… シャルル君、美味しい? 」


「うん! 凄く美味しい! 」


「そう、良かったわ。おかわりもあるから、遠慮しないで沢山食べてね」


 母さんがそう言うや否や、シャルルはおかわりを所望した。


「あ! ちょっと、シャルルだけずるい! 」


 それを見ていたキッカも負けじと料理を掻き込み、競うように食べ始める。うん、良い食べっぷりだね、何だか見てるだけでお腹が一杯になりそうだよ。


 前世でやっていた大食いのテレビ番組を思い出す。あれを見ながらご飯を食べると少量でもお腹一杯になった気でいられるから食費の節約になったもんだ。

 逆に腹が減ると言う人もいたな。俺の知り合いなんかは釣られて勢いよく食べてしまい、よく喉を詰まらせてしまうと言ってたっけ。


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