目に毒
春達は教室へ着き教室の扉を開けた瞬間に教室の中に居た多くの生徒が視線を向けて来た。
「あ、はるさん!樹ちゃん!おはようございま...す...。」
扉を開けたのが春だと気が付いて扉の近くの座席に座っていたお世辞にも身長が高いとは言えないくらいの身長のとても可愛らしい女子生徒、「一ノ瀬咲希」近づいて来て声を掛けてきたが、挨拶の言葉の最後で言葉を詰まらせ硬直した。
「咲希ちゃーん!おはーよーう!今日も小さくて可愛いー!」
「や、やめてください、有栖川さん、抱き着かないでくださーいー!む、胸も触らないでくださーいー!」
「美紗と呼んでといつも言ってるでしょー!咲希ちゃーん!呼ばないとー...こうだ!!」
「い、いやー、いやですー!!やめてくださーい!!」
それは咲希が苦手とする人物、有栖川美紗が春と樹の後ろに居たからであり、咲希の存在に気が付いた美紗は一目散に咲希へ飛びつきいじくりまわしていた。
「お、おはよう、一ノ瀬...」
「おはよー、咲希ちゃん...。」
「あ、おはようございます...って!!スルーしないで助けてくださーい!!」
その姿は年頃の男子高校生には目に毒だった様で、春でも止めることが出来なかった。
春と樹は黒板へ磁石で留められている座席表のプリントを確認し、自身の席へ着いた。それと同時に一限目の開始の合図の鐘がなり、教師が教室へ入って来た。
「席に着けー!って、有栖川美紗...何、やって、いるんだ...。」
「先生!これは生徒同士の絆をこうして深め合っているのですよ!」
「...。そんな絆要らないから...速く席に着け...。」
「もー、しょうがないですねー。咲希ちゃん、ま・た・あ・と・で・ね!!」
「うぅー、いやでーすー!!」
美紗はにっこりして咲希の事を見ながら席に着き、咲希は泣きそうになりながら席に着いた。
一限目のHRが終わり、二限目の全校集会(始業式)も終わり、今日の授業はもう無く、春は自身の私物を鞄の中に入れていたところ、和彦から声が掛かる。
「はるー、もう帰るのか?」
「んー、家に帰ってもすることないし、部活行こうかなー、」
「え、春って部活入ってたの!?」
「樹、お前は同じ部活だろ...」
「えへへー、言ってみたかったのー」
「そーですかい。」
「で、俺ははるが部活入ってる何て初耳だけど...。何部入ってんの?」
「文芸部だよ、まー、普段はあんまり行ってなかったからな、行っても本を読んでるだけだし」
「はるらしいな!って!宮本も文芸部入ってたのかよ!」
「そーだよ!美紗ちゃんも咲希ちゃんも同じ文芸部だよ。」
三大美女の樹、美紗、咲希が入っている部活と聞いて黙っていられなかった和彦は春の耳元で樹に聞こえない様に春に「春...お前...ハーレムかよ!」となどとつぶやいていた。
「ち、ちげーよ!文芸部はもともと廃部寸前で部員が誰も居なかったからで本を静かに読めるか?と思ったら樹達も入りたいって言いだしたからで、断じてお前が想像してるのとは違う!」
「違う?想像?って?文芸部は確かに私から入りたいって言ったけど...何の話してたの?」
「何でもない!和彦も文芸部入るか?って誘ってただけだ!」
「そっか!でも、部員が増えたらもっと楽しくなるよねー、遠藤くん文芸部入るの?」
「んー、じゃあ仮入部ってことで!はる、これから行くんだろ?俺、今日は予定何もないし!」
「じゃあ、行くか」
「え、春、これから行くのー?私も予定無いから行く!美紗ちゃんと咲希ちゃんにも行くか聞いて来るねー!!」
「わかった。部室で待ってる。」