ゲーム4
今回は個人的に面白くなったと思います
「おーい持ってきたぞ」
「遅い(です)!」
「これなんてデジャヴ?」
そもそも、燃やしたのはアイナなのに遅いとはどういう事だろう。
「まあ、いいや、で、何やる?」
「ババ抜き!」
「「え……」」
先程の戦いから全く学んでいないアイナだった。
「いやいや、さっきのでわかったじゃん!ロミーナさんの運だとババ抜きやっても結局二人で戦うことになってロミーナさんが楽しめないじゃないか」
ゲームは皆で楽しむ事が最も大切なんだって事をわかってないなこのワガママお嬢様は!
「えー、でもまだ私ババ抜きやってないしー、なんとかできないの?」
「なんとかって言ったって……」
最初のターンにすらたどり着けずに終わっちゃうんじゃなあ……。
「できますよ」
ロミーナさんが、さも当然のように言う。
「ホントに!?」
それを聞くとアイナが目を輝かせてロミーナさんに詰め寄る。
「ええ、本当ですお嬢様、良いですか、このトランプというものはジョーカーを抜いて52枚あります。
そしてこのババ抜きというゲーム上ジョーカーを入れて三つに分けます。
この時に元となる枚数は53枚、これを三つに分ける時一つの纏まりの枚数は、18枚、18枚、17枚となります。
なので、この17枚を私の手札にすれば私が一度に上がる事は無くなるというわけです。
これなら、ババ抜きができます」
「「な、なるほど……」」
「あ、頭良いんですねロミーナさん……」
「いえいえ、私なんてこの世界で五指に入る程度の知能しかありませんよ」
「全く謙遜しちゃって!流石私のメイドね!」
「え?今のって謙遜なの?あれ自慢っていうんじゃないの?」
なんか時々この世界と俺の世界で言葉の違いを感じるのは気の所為なんだろうか……。
「まあまあ、とにかく出来るんならやりましょうよ、ほら、早く配って!」
「わかったわかった」
もしかしたら事前にあの強運を防げるかも知れないし、ちゃんとシャッフルはしとくか……。
なんかただババ抜きするだけってのも正直つまらないな……。
「なあ、この勝負負けたら罰ゲームありにしないか?」
「いいわね! 」
強気なアイナは予想通り乗ってきた。
さて……あとはロミーナさんだが……。
「私もいいですよ」
自信ありげにOKするロミーナさん。
どうやら結構自信家らしい。
「よし、じゃあ罰ゲームはオーソドックスに負けた人は勝った人の言う事をひとつ聞くでいいか?」
「いいわよ」
「大丈夫です」
ロミーナさんはともかくアイナは何故ああも自信満々なのか……。
いや、別に変な事とか考えてるわけじゃないよ?
ただ単に普通の罰ゲームをだね……あ、配り終わった。
「はい、これはロミーナさんのね、で、アイナはどっちでもいいよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ私こっち〜♪」
「じゃあ俺はこれか……」
さてさて手札は……よし、ババは無しっと、
残り枚数は4枚!よしよし、さっきより少ない……これなら……。
「じゃあ順番決めましょうか、何で決めます?」
もしかしたら……って思ったけど結局手札1枚かよ……もうそれなんてチート?乱数調整でもしてるんですかねぇ……。
「じゃあ私から!」
なんて身勝手な……まあ、ロミーナさんが最初よりいいか、ここからは心理戦だぜ!
「じゃあ順番はアイナ、ロミーナさん、俺でいいな」
「はい」
「いいわよ、じゃあ始めましょう!早く引かせなさい優希!」
「良いだろう……来い!」
「えっーと……あっ揃った!ふっふん、さすが私ね」
「いえお嬢さま、お嬢様は先程の残り枚数が6枚でしたのでここは何を引いても捨てられますよ」
ロミーナさんからの冷静なツッコミに狼狽えつつアイナは応える。
「し、知ってたわよ!ほら、ロミーナのばんよ引きなさい」
「では……どれにしましょうか」
「ふっふっふ……実はこの競技……私必勝法を思いついちゃったのよ!」
「なん……だと?」
え?ババ抜きに必勝法なんてあったのか?一体どんな方法なんだ……。
ロミーナさんも同じ事を思ったようで怪訝な顔つきでアイナの話の続きを聞いている。
「今から見せてあげるわ!これが必勝法よ!」
「「ゴクリ……」」
二人の視線がアイナの手元に注がれる。
「ほら、ロミーナ!引きなさい!」
アイナがここまで自信を持つ必勝の作戦。
「お、お嬢様これは……」
「なんて事だ……まさかこんな方法を使うなんて……」
その方法は…………ババだけ他のカードよりも、浮き上がらせて持つ、というものである。
「って、バカかお前は!」
ロミーナさんも、自分の主人のあまりの知性の低さに落胆を隠せないようだ……。
「お嬢様……流石にこれは幼稚ですよ……」
と言うとロミーナさんはアイナの手札の浮き上がらせていないカードを取る。
「全く次はもっといい作戦を考えてくださ…………!!お嬢様、これは……」
なんだ?急にロミーナさんの顔つきが変わったぞ……。
するとそれと同時にアイナが笑い出した。
「ふっふっふ……引っかかったわね!あのカードはフェイク!実は他の4枚にジョーカーを潜ませておいたのよ!」
「くっ、やりますねお嬢様……」
なんと……アイナの奴、一回目のババ抜きにして究極奥義の一つ、「裏の裏は表」を使ったというのか!?
くっ、今までの言動から侮っていた……コイツ……やりおるな……。
なんか二人のテンションにつられて俺のテンションまで上がってきた。
「さあ、引いてください優希さん」
「ぐっ……2分の1か……」
さっき引いた時にロミーナさんはどっちにババを入れていた?
考えろ……軽はずみに罰ゲームを提示してしまったが、この二人の言いなりなんて命がいくつあっても足りたもんじゃない……。
「教えて差し上げましょう、あなたから見て右側が、ジョーカーです」
そんな、頭を抱える俺にロミーナさんは、不敵な笑みを浮かべて、ババの位置を教えてくる。
「なに!?」
くっ、流石はロミーナさんだ、このババ抜きという競技において何が有効かをもう理解し始めている、どっちだ?
本当のことを言っているのか?
それとも嘘を言っているのか?
ええい、迷っていても始まらない!確率は50%、当たるも八卦当たらぬも八卦……いざ!
「こっちだ!」
「くっ、引かれましたか……」
「よし、残り2枚……」
ここで当てられたのは二つの意味で大きい。
一つは単純に枚数が減った事、そしてもう一つはババの位置がわかったからだ。
ロミーナさんはまだババ抜き初心者だから、一々シャッフルするという小技を覚えていない。
つまり……俺はもう二度とババを引く事はない!
「よーし、私の番ね、来いっ!…………キター!あと3枚!さあ引きなさいロミーナ!」
またしても1枚だけ他のよりも、浮き上がらせて持つアイナ。
もうそれババ持ってないから意味無いんだけどな……。
それを知っているロミーナさんも、躊躇わずに浮き上がったカードを取る。
「さあ、優希さんの番ですよ」
……よし、シャッフルはしていない。
これならロミーナさんがアイナから持ってきたカードをそのまま引けばいいだけの話だ。
勝ったな……。
だが、そう簡単に引いてはロミーナさんに気づかれてしまう可能性がある。
ここは演技しておかないと……。
「うーん、どっちだろうなー」
「優希さん?何でそんなに棒読みなんですか?」
……どうやらロミーナさんの類稀なる観察眼には効かなかったようだ。
流石ロミーナさんだ……!
「じゃあこっちで!」
ふっふっふ……これは絶対にジョーカーじゃない。
さーて当たりかな……………………は?
「な、なんで……」
「どうかしましたか?優希さん?その反応はまるで……」
「そうよ、どうかしたの?優希?まるで……」
「「確実にジョーカーじゃないと思ってたカードがジョーカーだったみたいな反応をしちゃって「してますよ?」」
アイナのロミーナさんの主従コンビが息を合わせて決めポーズ。
不覚にも少しカッコイイと思ってしまった俺がいた。
「だがおかしい。 どういうことだ……俺は絶対にジョーカーじゃない方を引いた筈だぞ!」
有り得ない! 俺はずっとロミーナさんの手札から目を離していない、アイナにカードを引かれる時も、アイナからロミーナさんが引く時も目を離していない、だから絶対にこっちがババである筈がない……。
「へぇー何をもってそう考えるの?」
アイナは全てを見透かしたような目で俺の根拠を問いてくる。
「だって、お前が最初にロミーナさんにジョーカーを引かせて……」
「そこよ(です)」
「まず最初のそこが間違っていたのよ」
「私はあの時、ジョーカーなど受け取っていません」
「は?いやでもあの時お前引いた反応してたじゃないか…………はっ、 まさかお前ら……」
「今頃気づいたの?そう、私達最初からグルだったのよ」
「全て私の作戦通りだったというわけですよ優希さん」
「じゃあ引かせてもらうわね」
「あっ、ちょっ、」
とっさのことでシャッフルするの忘れたから、ジョーカーじゃない方取られた!
「よし、あと一枚、ロミーナに引かれて終わり」
「私もこれで揃って終わりです」
「「私達の勝ちね(ですね)」」
「クソッ!なんてこった……初めて間もないババリストの奴に負けるなんて……」
アイナの知能を侮っていた……まさかこんな芸当が出来るほど頭が良かったなんて……。
「まあ、全部ロミーナが考えた作戦なんだけどね」
「えっへん♪」
得意げに胸を張るロミーナさん。
ついつい胸に目線が持っていかれそうになるからやめて欲しい。
いや、見てないよ?子供っぽい所もあるんだなーなんて思ったてないんだからね!
いや、誰得だよ俺のツンデレとか……。
いや、でもひとつ腑に落ちない点がある。
「いやまて、最初に引く時、あれは確実じゃなくないか?」
「というと?」
「だって、まあ事前の打ち合わせがあればジョーカー以外を引く事は可能だろうけど、そこでロミーナさんがアイナの手札からロミーナさんの上がり手を引いちゃうかもしれないじゃないか。 それとも確率にかけたのか? 」
まあ、3分の2だから悪い確率ではないけど……。
「ああ、その事、それならありえないわよ」
ありえない?それはまた変な物言いだな。
 
「なんでありえないんだ?」
「ああ、それはね……」
そこまで言いかけて、アイナは目を閉じた。
(今、あなたの脳内に直接話しかけています……)
脳内に女神のような声が響きわたって……じゃねぇ!
「ね?」
「なに、ドヤ?みたいな顔してるの?てかテレパシー使えるのかよ!」
てかそもそもなんでこのお嬢様はこっちの世界のネタ知ってるんだよ。
「え?優希使えないの?」
「変わってますねー優希さん」
「いやいや、普通使えないから!」
「それはそっちの世界の話でしょう?こっちの世界だとだいたい魔法使いならみんな使えるわよ」
「俺は時々お前らとの常識の違いについて真面目に考えるよ……」
「じゃあ罰ゲームだけど……」
死刑だけはやめてくれ!サンドバッグだけは……!
もう死ぬのは嫌だ……某主人公みたいに何回も死ぬのは嫌だ……。
「優希、あなた、うちの使用人になりなさい」
「は?」
さーて、優希くんは使用人になってしまうんでしょうか!
まあ、なるんですけどねwww
 




