ゲーム28
夢の最後の、まっしろな空間で、何故か見覚えのある少年が、座っている俺に近づき、どこか聞き覚えのある声の優しい声色で、囁くように語りかけてくる。
Q無くすと取り戻せない物ってなーんだ?
A……多分ない。
この世界では命も時も記憶も何でもかんでも取り返しがつく。
死んだら生き返ればいいし、ときはもどせばいいし、思い出せば記憶も元通りだ。
Q なるほどなるほど、確かに正解だ。 じゃあもう一つ質問だ、お前が言った「この世界」って?
A そんなもの……あれ? 分からない。
我ながら随分とおかしい話だ。
答えの根拠として挙げた理由が何か分からないなんて。
「分からないか……じゃあ、ヒントをやるよ」
目の前の少年が腕を広げると、腕の通った空間に色彩が生まれ、目の前の景色が彩に満ちる。
赤い人、白い人、緑の人に、黒い人、浮いている人、どれも見たことのない人ばかりだ。
見覚えのない人たちは皆一様に目の前の少年と遊んでいる。
「はい、これ、がヒントだよ」
これがヒント?誰だろうこの人達は、どこかで見たことあるような……。
「この質問は、さっきまでのお前……いや、「つい未来のお前」なら、きっと答えられていたんだよ?」
ついさっき? つい未来? なんの事だかさっぱり……、あれ? というか君? 「君って誰だ?」 俺って一体誰なんだ? そもそも俺って存在するのか?
「なるほど、もう本格的に「時間切れ」という事か……仕方ないな、これも俺を生かすためだ、おーい、最後の手段に出るから痛みを消してくれ、後できれば恐怖も」
目の前の少年は、物憂げに溜息を吐くと、天を仰ぎ大声でそう叫んだ。
少年の目には少し水滴が溜まっているように見えた。
「……今消したわ…………ごめんなさい……」
もはや全く聞き覚えのない声が上も下も分からなくなった頭に入ってくる。
「ハハ……お前に謝られる事があるなんてな……じゃあ、やりますか……」
大粒の水滴を一滴垂らし、決意を固めた眼で目の前の少年は、ポケットから鈍く光る金属を取り出し、首筋に当て、一息に引き切った。
「ハハ……じゃあなオリジナルさん……」
勢いはさほど強くはないが、決して止まることのない赤い液体は確実に目の前の少年の命を奪っていく。
そして、目の前の少年は赤い液体に浸りながら静かに息絶えた。
目の前で人が死んだ。 すべてを巻き戻された俺にも、すぐ目の前で起こる、命の終わりというあまりの衝撃にとうになくなっていたと考えていた我を見失う。
命絶えてなお、流れ出す赤い液体ショックに首を折る俺の前まで流れ、膝を濡らし、消えかかった自分の姿を写す。
「!! あ……あぁ……」
そこに映っていた顔はカッターで首を切り、今まさに息絶えた「目の前の少年」だった。
そうだ!…… 思い出したぞ……!
どこか見覚えのある顔だと思っていたら、コイツは……目の前の少年は……俺だったんだ……。
「そうだ……俺は結城優希……確か、高校の夏休みに……異世界に転移させられて……そうだ、確か幽霊の瑠奈と遊んでて、瑠奈が帰ったから、安心して寝た所で……」
そうか、ここは俺の夢の中だ!
それにしても……何故俺の前に俺が?
目の前の俺は、俺とは明らかに別の思考回路を持っていたし、鏡や、写し身というわけではなさそうだ……。
まあとにかく起きてみないことには始まらないか……。
めっちゃ少ない……、




