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異世界ぐーたらゲーム録  作者: 娯楽作品の虜
グダグダ使用人ライフ
31/37

ゲーム27.5

前回のあらすじ。


気絶してしまった(ロミーナさんにより)優希を部屋へ運んだロミーナさん。

「…………これは不味いかも知れませんね……」


 ロミーナは、ファティの部屋の前の廊下の惨状をみて呟いた。


 シャンデリアの炎は燃消を繰り返し、廊下のタイルは粉々に砕け、空気中に静止している。


 たった今優希さんを、部屋まで送り届けて、後はもうお嬢様の元へ帰るだけだというのに……ファティさんの魔力が、明らかに膨れ上がり過ぎている……。


 今までも、何度かはファティさんの憂冷期の相手はしてきたけれど、今回は魔力量がその比じゃない。


 今はまだファティさんのお部屋の周りだけにしか影響が出ていないけれど、そのうち屋敷全体に影響を及ぼしてしまうだろう。


 そうなってしまっては流石のお嬢様といえど直すのは困難だろう。


 チラリと時計を確認する。


「しまった……壊れてる……」


 単身が逆向き、長身が通常の向きに、高速で回っている。

 お気に入りだったのに……。

 それにしても困りましたわね、お嬢様にはすぐ帰ると伝えてしまったのですが……、このままファティさんを、放置してしまえば間違いなく酷くなる一方、この勢いだと今夜中に恐らく屋敷全体に効果を及ぼす位には拡大してしまうだろう。


 そうなればお嬢様だけでなく、他の住人の皆さんにも迷惑をかけてしまう事にもなりかねない。

 つまりここでの最善手は、「お嬢様との、すぐ、に間に合う位の早さでファティさんのストレスを発散させる」か。

 ……簡単ね。


「私はもうこの屋敷の使用人じゃないのに……仕方ないわね……今度優希さんにあったらこれをネタにして新しいお菓子を頂きましょうか」


 将来自分が味わう、優希さんの世界のお菓子の美味しさを想像しながら、流動的な動きを続けるファティさんの部屋のドアを開け、未来と過去が入り交じる部屋に入った。


「……ファティさん、少し私と、遊んでくださる?」


 時を吸い尽くされ、更地となった部屋の中央に膝を折り、まるで操り人形のように座るファティさんからは、普段感じるようなホンワカとした温かみは感じられない。


 緑色の髪は色を更に濃くし、その髪色は出口のない樹海を思わせる。

 覇気なく漂う瞳はまるで水晶のようにこちらの情景を時間をズラして映し出す、果たしてその目に映っている私はどんな格好でどんな表情をしているのだろうか。


「あれ~? 今回は優希が遊んでくれるんじゃないの~?」


 自分で一度殺しておいてよく言うわね、まあ、私達、というかお嬢様が復活させる事まで分かっていたのでしょうけどね。


「すいません、優希さんは只今手の離せない仕事に付いている状態ですので、代わりに私がご相手を致します」


 その言葉を聞いたファティさんは、瞳の水晶を少し揺らし、不安を少しだけ面に表した。


「へー、まあいいや! じゃあよろしくねロミーナさん♪ 」


 しかしすぐに表情を元に戻し、遊んでもらえる、期待を込めた表情に変えた。


「ええ、宜しくお願いします」


 まあ本当は寝ているだけなんですけど、今それを言ったところでなんにもなりませんしね。


 それにしても……やはりもう二期に入っていましたか……、ファティさん、というかこの世界の住人が入る、憂冷期というものにはステージが二つ存在する。


 一つ目は、能力を常に限界を超えて使えることによる快感で、ストレスを少しづつ解消している、時期、ごく短い時間ではあるがこの時期であればやり方次第だが、即刻解消も望める。


 しかし、この時間帯は突入してから、人によってまちまちだが、基本的には数分間しかないので滅多にこの時期に直面する事はない。


 しかしファティさんの様な温和な方ならあるかもしれないと思っていたのですが……。


 二期は、一期と逆に自分の圧倒的な力に言いようのない不安感と、孤独感を抑えられずに、どんどん力が暴走していき、遂には心を壊し、命を落としてしまう。


 そして、さっきのあの反応、本当は優希さんと遊びたいのに、私としか遊べない。

 しかし相手を選んでいる余裕など無い、というような反応、孤独感をとにかく消したいと言った感じだろうか……。


 ファティさんには悪いが「楽」で助かりましたね。


 二期に入った方のストレス解消法はたった一つだけ、逆を言えばそのひとつさえクリアしてしまえば、いいということ。


 その方法とは、圧倒的に積もった孤独感を吹き飛ばす事、つまり、何らかの遊び、対決で勝ち、その力が孤独を産むものではないと安心させてあげればいい。


 さて、ファティさんが選ぶのは一体どんな遊びだ?


「じゃあね~、「鬼ごっこ」しようよ! ファティさん鬼よろしくね、あと制限時間は……」


「いえ、言わなくて良いです、もう終わりますから」


 鬼ごっこ、そう聞いた瞬間に体は動き出していた、魔力を全解放し、究極まで身体強化ノロマな音を置き去りにし、十m程の距離を駆け抜けざまに、ファティさんにワンタッチ。

 すいませんね、私、この後大事な先約が……「え?」


 後方で床の砕ける音を聞きながら驚愕する。


 手が……全力で伸ばした筈の手が……届いていない……、いやそれどころか止まっている……?


「ふふ……せっかちだなぁロミーナさんは……じゃあ改めて言わせてもらうよ? 遊ぶ種目は「鬼ごっこ」、鬼はロミーナさんで、私が逃げる方。 制限時間は……貴方の時間切れ(タイムオーバー)まで、ね♪」


 ファティは自分の勝利を見た目で遊び相手がいることを嬉しそうに、しかし何処か悲しげに微笑んだ。


今回も短めです!

1日5000は書けるようになりたい……。

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