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異世界ぐーたらゲーム録  作者: 娯楽作品の虜
始まりまでの物語
3/37

ゲーム3

やっとタイトル詐欺回避……してません

「う……うん」


優希は唸るような頭痛に引っ張られ意識を覚醒させた。


「あ、やっと起きた?」


まだ頭痛の余韻覚めやらぬ優希を、一瞥もせず、揺りかごの様に揺れる椅子に座りながら眠たそうに反応する。


「全く……あの程度でそこまで昏睡するなんて……」


アイナの傍らに立つ、先程のうさ耳メイドさんも、やれやれといった様子で首を横に振っている。


異世界転移物でここまで扱いの酷い奴もなかなかいないんじゃないだろうか。


「てか、昏睡?なにそれ俺そんなにやばい状態だったの!?」


サラッと自分がどれだけキツイ状態だったかを知らされる。


てかそもそもなんで、俺気絶してたんだっけ……あ、そうかこのメイドさんに気絶させられてたのか。


「まあ、昏睡ですんで良かったじゃない、ロミーナが助けに行ってなかったらあなた今頃ドラゴンの餌だったわよ?流石に私も完全に消化されてたら復活させてあげられなかったし」


それはまた、ぞっとしないお話で……。


「改めてありがとうございます、えっと……」


とりあえず命を救ってくれたらしいメイドさんに御礼を言おうとした所で、自分がまだこの女性の名前を知らない事に気づいた。


「ロミーナです。 ロミーナ・ピナルディ」


それを察した目の前のメイドさんは、膝立ちを片方折り、スカートの裾を摘みながら優雅な礼を行う。


アニメや、漫画でしか見ない礼の仕方だけれど目の前のメイドさんがやるととても格調高いものにみえる。


「あ、ありがとうございますロミーナさん」


主人様(アイナ)との余りの性格の差に驚きを隠せない。


どうしてこんなにまともな人がアイナみたいな奴のメイドをしているのだろう。


「いえいえ、感謝には及びませんよ。

私はアイナお嬢様のメイドですので、お嬢様の命令ならば例え火の中水の中温泉の中へでも……」


なるほど、なるほど。 前言撤回、なかなかのメイドさんですね……ちゃっかりご主人様の命令でリラックスしようとしてらっしゃる。


「よく言った!流石は私のメイドだわ!」


それでいいのかご主人様……。


まあ、ドラゴンの首と〜 の下りでだいたい分かってたけどこの主人にしてこのメイドありって感じだな。


「で……なんで俺、縛られてるんですか?」


そう、何故か俺、今縛られています。

いや、Mとかじゃなくて。

牢屋とかで囚人が付けてそうな金属製の鎖に、鉄球がくっついた奴で、グルグル巻きにされてる。


「それは勿論逃げないためです、そう何回も逃げられてはお嬢様があなたを召喚した意味が無くなるじゃないですか」


ロミーナさんは、何言ってるんですか? とでも言いたげな冷たい目を俺の方へ向けてくる。


「意味?そこのお嬢様が俺を召喚したのは八つ当たりのサンドバッグが欲しかったからじゃなくて?」


「へえ、サンドバッグになりたいんだ〜」


アイナ椅子から飛び降り魔力の様なものを滲ませた笑顔で近づいてくる。


「いや、嘘です本当にすいませんでした」


アイナが椅子から飛び降りるのとほぼ同時に全力の五体投地。 背に腹どころか、謝罪に命は変えられない。


一体俺はこのあったばかりの少女に何回謝れば良いんだろう……。


「で、ホントに俺の呼ばれた意味ってなんだっけ?」


割とマジでここ数時間で一回死んで二回気を失ってるから、記憶が曖昧なんだけど……。


「あなたは私の暇つぶしの為に呼んだのよ!全く、自分の使命を忘れるなんて……」


「ああ、なるほど……思い出した」


そう言えば最初にそんな事を言っていたような気もする、いつから使命になったのかは全くもって思い出せないけど。


「全く……というわけで私を楽しませなさい!」


まあ、これ以上長引かせて殺されるより、何かしらゲームでもしてたほうが楽しいのは確実だしな、さーて、何するか。


この世界に来て数時間で早くも命に対する考えが変わってきてしまってるが気にしないことにしよう。

気にしなければ無いのと変わらない。


さて、ゲームか……俺がここ来る前やってたのってなんだっけ?


「あ、トランプか、じゃあトランプでなにかやろうぜ!」


ホームゲームの代表格、「トランプ」


ババ抜き、大富豪、七並べ、HiGH&LOW、スピード、トランプならいくらでも時間潰せるし……さーて何やるか!


「「トランプ……?」」


どんなゲームをやろうかと結構テンションが上がってきた俺とは対照的に目の前の二人は何故が首を傾げている。


なんだそのまるで「トランプ」を知らないかのような反応は……。


「いや、トランプだよトランプ。 1から13まであって♠︎♢♥♣️の4つの種類があるカード」


なんだ? もしかしてこっちの世界だと違う名前なのか?


「ねぇ、知ってる?ロミーナ?」


俺の知っていて当然という反応にアイナは不安になりロミーナさんに確認する。


「いいえお嬢さま、聞いたこともありません」


しかしロミーナさんもご存知ないらしく、首を横にふる。


「え?マジで?じゃあカルタは?花札は?百人一首は?UNOは?」


トランプが無くても何かしらのゲーム位は……。


「「しらない(知りません)」」



「マジでか……じゃあこの世界で娯楽って、ゲームって何があるの?」


こっちの世界のものは無くても異世界特有の俺の知らない遊びとかなんかあるはず……。


「私の家は自分で言うのもなんだけどお金持ちだからね!娯楽は常最新の物があるわ!」


マンガなら「えっへん」や、「ドヤァ」といった効果音が後ろに出そうなほど自信満々に言うアイナ。 この姿だけ見ればやんちゃな小学生にしか見えないのに俺より年上っていうのが驚きだ。


さっきの部屋も、この部屋も明るく光るシャンデリアに、真っ赤でふかふかな絨毯、豪華な飾り付けが付いた超キングサイズとでも言うべきほどのベッドが標準装備らしい。


まあ、ドラゴンがいる部屋にもベッドがあるのは全く意味が無いと言わざるを得ないけども……。


さっき通って逃げた大広間なんてリアルにドッチボールぐらいならできそうな広さだったし。

そんな豪邸の娯楽の最先端って一体……。


「まあ、今の最先端は…………」


ゴクリ……。


「紙芝居かしらね!」


………………は?何言ってんだこいつ?紙芝 居? 紙芝居ってあの紙芝居? ペラペラ捲って書いてある絵に合わせて後ろのセリフを読むヤツ?


何コイツドヤ顔でこっち見てんの?マジで?それマジなの!?


とりあえず合わせとかないとまた殺されそうだから合わせとくか。


「へ、へぇー凄いなー紙芝居かー」


それにしても……退屈するわけだ、娯楽の最先端が紙芝居じゃ、よし、ここは一つ俺が本当の遊びって奴を教えてやろう。


「まあ、その話は置いといてだ、とにかくトランプをやろう!楽しいぞ〜!」


「どのくらい楽しいのですか?」


聞いたこともない名前と楽しいと言うワードに反応してロミーナも目を輝かせて、耳をピョンピョン揺らしている……それにしても凄い格好だな……真っ白な髪もまさに白兎って感じだ、髪をロングに伸ばしている所も、個人的にはポイント高い。

この2人だけ見ると異世界ってよりどっかのイベントのコスプレイヤーって感じだな……。


「まあ、軽く紙芝居の2、3倍かな」


まあ、少し盛ったかもしれないが、少なくともトランプの遊びより紙芝居の方が面白いという人はなかなかいないだろう。


「2、3倍!?」

「それは本当ですか!?」


「お、おう……」


凄い食いつきだな……本当に紙芝居が流行の最先端なんだな……。

そりゃ暇過ぎて召喚も……いやそれはしないな。


「早く持ってこい!」

「わ、私は何か必要なものを!何か必要なものはありますか?」

「いや、必要なものは特には……」

「いいから早く取ってきて!」

「はいはい……」

「じゃあ私は何かお菓子でも……」



という訳で三人はアイナを部屋に残して一旦自分の部屋に戻る事となった。

















「おーい取ってきたぞ!」


行きはロミーナさんに案内してもらったが帰りの事を考えていなくて結構迷ったが何とか帰って来れた……。

無事に帰って来れた嬉しさに声がついつい大きくなってしまう。


「遅い!(です!)」


しかしそんな事情はお構い無しに先に待っていた二人は俺を叱責する。


というか、そのテーブルの上にある空の大皿はもしかしてロミーナさんが言っていたお菓子じゃないよね?


「すまんすまん、ほら、これがトランプだよ」


まあでも、下手な事を言ってまた殺されてはたまらない。


「なんだこれは、ただの紙切れじゃないか……こんなものがホントに紙芝居より面白いのか?」


「そうですよ、にわかには信じられませんね……ホントなんですよね?優希さん?」


さっきまでの熱い視線が嘘のようなジトついた目で2人が膝立ちのままにじり寄ってくる。

アイナはともかくロミーナさんの胸が…………。

「痛い!何すんだよ!」


何かを察知したのかアイナが俺の太股を思いっきり(つね)ってくる。


「いや、何か不愉快な視線を感じたから……」


「いや、別に何も見てないって」


マジでアイナの勘どうなってんだ……、しかもバレたら死刑(ガチ)という罰ゲーム付き。

俺の異世界転移人生ハードモードすぎる……早く運営さん修正パッチ当ててくれませんかね?


「ま、まあ、とにかくやってみればわかるよ」


持ってきたプラスチックのケースから、計五十三枚のカードを取り出す。


ちゃんと部屋を出る前に確認してきたから少なかったり、多かったりは無いはずだ。


「そう、で、この紙で、何をするの?」


「うーん、まあ初めてだしババ抜きでいいか」

「ババ抜き(ですか)?」

「そうそう、ババ抜き、ババ抜きってのはねー」


ーーーーーーー少年説明中ーーーーーーーー


「なるほど!なかなか楽しそうじゃない!」


説明を聞いたアイナはとても盛り上がっている、途中から飽きて聞いていなかったように感じたのは気のせいだろうか。


「あの……」


しかしそんなご主人様とは裏腹にロミーナさんは逆に少し申し訳なさそうにしている。


「ん?どうした?何かわからない所でもあった?ロミーナさん?」

「ルールを聞く限り……これって運のゲームですよね?」

「まあ、半分くらいはね、でも半分は心理戦だから!」

「え、えぇ、でも私……運良いですよ?」


「ああー確かにロミーナ運めちゃくちゃいいわよねー」


「いやいや、運だけじゃこのゲーム勝てないから!とにかく一回やってみよう!」


ババ抜き抜きを運のゲームだと思うなんて、やっぱり初心者だな……これはこの勝負……貰った!


入念にシャッフルしてっと、まあ流石に素人に負けるほど下手ではないからとりあえず勝ってドヤってやるぜ…!


「ほら、配り終わったぞ……好きなやつ取れ〜」


均等に手札を三つにわけて裏返しにして置く。

二人ともがそれぞれ一つずつ取った。

「じゃあ俺はこれか……」


うわー、最初ババ俺だよ……あれ?でも結構減らせるな……おお!あと5枚!ジョーカー合わせて5枚ならなかなかじゃないか……これは流石に勝ったかな……。


「…………終わりました」


よーし、大抵の人が取りやすい左から2番目にジョーカーを置いて……………………え?


「ロ、ロミーナさん、今なんて?おかしな言葉が聞こえた気がするんですが……」


「すいません、全部二枚セットになってました……」


「えぇ!?」


嘘だろ……?三人でやってるとはいえ配られた瞬間に終わってるなんて…………。


「すいません……私、運が良すぎるんです。宝くじを買えば必ず当たるし、ガムもアイスもあたりしか出なくて当たりがないはずのアイスでも当たりがてたりしちゃって……」


「いやいや、最後のはおかしいから!運の良し悪しじゃないから!」


てかババ抜きの初手あがりなんて、2人の時でも0.04%ぐらいしかないんだぞ?

ロミーナさんってどんだけ運良いんだよ……。


てか、この世界にも、宝くじとかガムとかアイスとかあるのか……そこまで食品が発達してて遊びが紙芝居しかないのはいかがなものか……。


「まあいいや、二人で続きやろうかアイナ……」


仕方なくアイナの方に向き直って続きを行おうとするが、アイナの手にはカードが一枚もない。


「あれ? アイナ、カードは?」


「終わった」


「はあああああ!!??」


「いやいやいやいや、俺が5枚余ってるのにお前が終わるわけないだろ!お前も4枚残ってる筈だ!」


「いや、終わった」


「いや、ええぇ……?」


どういうことなの……あれ?


「お前……足元の黒い灰みたいなのなんだ?」


と尋ねるとさっきまで勝ち誇った顔をしていた顔に汗が浮かんできた。


「お前……燃やしただろ」


そう言えばさっきからなんか変な匂いするし……。


「え!?な、なんのこと!?」


「おい、ダイアの4の燃えカス残ってるぞ……」

「嘘!?」

「嘘」

「…………」

「…………」

「おっ前マジでふざけんなよぉぉ!!」

「痛い痛い頭を叩くなバカになるじゃない!」

「安心しろこれ以上酷くはならないから!」


「痛い!助けてロミーナ!」


涙目でロミーナさんに助けを求めるアイナ。


「はい、かしこまりました」


と、返事をするとロミーナさんは目にも留まらぬ早さで後ろに回り込んで俺を羽交い締めにした。


「ロミーナさん離してくれ!俺はあのバカを叩きのめさなきゃ気が済まない!」


「お待ち下さい、あのバカ(アイナ様)はアレでも私の御主人様なのです!なんとかお鎮めください!」


「ちょっ、ロミーナ今あのバカって書いて私って読まなかった?ねえねえロミーナ!」





















「で?なんで人様のトランプを燃やしたりしたんだ?」


しばらく経ってトランプの灰を片してから説教タイム。


「いや、あの……だってメイドが上がっているのに主人が上がらないのはなんか締まらないじゃない……」


「締まらないなんて理由で人様の物燃やすんじゃねぇ!お前はまず自分の頭のネジ締めやがれ!」


「う、うぅ……ごめんなさい」


さっきまでの勢いはどこえやら、しおらしくなって涙を浮かべた目で謝罪している。


その姿は、普通の可愛い女の子でついつい甘くなってしまう。


ま、まあ、反省してるなら許してやるか……少し声を大きくし過ぎたな。


「い、いや、別にそこまで怒ってるわけじゃないし、次から気をつけてくれれば良いよ!」


「はーいじゃあさっさと次のトランプ持ってきてー」


俺が許した瞬間にアイナは、ケロッとして次のトランプを要求する。


「いや、お前もうちょっと反省しとけよ!」


せめてもう少しあの顔でいてくれたら……、


「うるさいわねー、ちゃんと謝ったじゃない

。 早く持ってきなさーい」


「はいはい、次は燃やすなよー」


全く……ワガママなお嬢様だ……。


そしてさっき迷った道をまた迷って涙目でこの部屋のドアを開けたのは更に一時間後の事だった。

次こそは!次こそはゲームをさせたい!

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