ゲーム23
前回のあらすじ
どうやら異世界での仕事の内容はイライラしてる相手と遊ぶ事らしくて?
体の中からじんわりと暖かくなってくる感覚。
ここ数日で何度も体験した「生き返り」の感覚だ。
「あ、リトルフ様、目覚めましたよ」
「ん、あぁ……」
見ると俺が死んでから少し時間が経っているのかアイナもロミーナさんに膝枕してもらうのを止めて、隣に座り、部屋も元通りになっていた。
「そうみたいね、全く……なんで優希はこんなに死んじゃうのかしら?」
俺を灰にした張本人がサラッと人間性を疑うような発言をする。
「さあ……私にはさっぱり、皆目見当もつきません……あ、M何じゃないでしょうか!?」
なるほど、多分ロミーナさんは今頭が可笑しくなっているんだな? そうに違いない、だって、ロミーナさんも見てたし! そもそも、死ぬレベルのドMとか存在するはずないし!
「なるほど……それはあり得るわね……流石ピナ、いい所突くわね」
「つかねーよ!! 」
なんかこのまま放っておくと俺がとんでもないドM野郎にされそうだったから流石に口を挟まざるを得なかった。
「ていうか、俺がこんなに死にまくっている原因はお前らだから! お前らに殺されまくってるからだから! なにが皆目見当もつきませんだよ! 見当しかつかないだろ! 心当たりしかないだろ!」
殺される度に思うけど、こっちの世界には殺人は罪に問われないのだろうか。
「まあまあ、落ち着きなさいよ、ほら、さっきピナから貰ったチョコレート、残りあげるから」
どうやら目の前の少女はチョコレートと人の命を同価値として見ているようだ。
そんな事本来ならば許されざる行為。
だがまあ、くれると言うなら貰ってやってもやぶさかではない。 なんせ初の女性の手作りチョコレートだ。
俺は急いでロミーナから包みを奪い取る。
「ふふ……そんなに慌てなくてもチョコレートは逃げないわよ……」
「べ、別に慌ててねーし!」
それにしてもやけに軽いな……残りは相当少ないな?
「全く、食い意地張りやがって……」
残り少ないチョコレートを出すために袋の底を持って逆さに振る。
……あれ? なかなか出ないな……ってこれまさか……。
「おい!アイナこれ、カラじゃねーか!! 」
ない!ない!ない! どれだけ振っても中を覗いても存在しない!
しかしアイナはそんな俺の姿を見て笑っていた。
「だから、言ったじゃない、チョコレートは「逃げない」って、もともと無いものなら逃げようもないからねー!アハハハハ!」
「テメーの血は……何色だァァァ!! 貴様……貴様、モテない男子高校生にとって女性の手作りチョコがどれほどの価値を持つか分かってるのかー!! どれほどの価値を……うっ……ううっ……」
俺のあまりの迫力に二人は固まっていた、というか思いっきり引いていた。
「そ、そんなガチ泣きしないでよ……ちょっとからかっただけじゃない……」
さっきまでとは打って変わって困惑気味のアイナ、そりゃそうだ、俺でもそうなる。 っていうか俺が俺みたいな奴に会ったら無視して通り過ぎる。
「お前にとってはちょっとでもなぁ……俺にとっては……俺にとっては……ぐぅ……」
でも、悔しい……そもそもあれは最初、俺が貰えるはずだったんだ……くそう……。
「正直自分の作ったものを、ここまで悔しがられると困惑しますね……」
ロミーナさんも少し引き気味だ。
……俺は16にもなって一体何をしているんだ……。
チョコレート一つで少女(同年齢)に、からかわれて悔し泣き。
よし、もうこんなみっともない事はやめよう、元々俺みたいな奴が手に入るような物じゃなかったんだ……。
「よし、もう立ち直った!」
「優希……」
「優希さん……涙、止まってませんよ?」
「くっ……」
仕方ないじゃないか!
あんな物奇跡でも起きない限り手に入る代物じゃないんだから!
ポケットからハンカチを出して涙を拭う。
「そんな大それた物じゃありませんよ!」
「全く……死んでもめげないと思ったらチョコレート一つでマジ泣きなんて……分からない奴ね……」
アイナは困惑を深め、ロミーナさんは自分のチョコレートの価値を過剰に持ち上げられて少し照れていた。
「よし、今度こそOKだ」
いつまでもこんな事意識してクヨクヨしてられない、それにどうやら俺には仕事があるみたいだし……。
「おおー今度はちゃんと立ち直ったみたいね、よし、じゃあ早速仕事の話だけど……」
さっき仕事があるって考えてたのは俺だけど、この状況で仕事の話に入っていくって相当鬼畜だよな……。
「今回遊んでもらう相手は……えーっと、誰だったっけ?」
覚えてないのかよ!
「そうですね……あっ、そろそろファティさんが憂冷期だと思います」
ファティ……ファティファティ……どこかで聞き覚えがあるような……。
「えぇっ!? いきなりファティ!?」
あ、思い出した。
「ファティってあのおっとりしてるファティ?」
「えぇ、そうですよ、昨日遊びに行ったファティさんです」
やっぱりあの、おっとりしたファティか。
「なんだ、じゃあ初仕事は簡単そうだな」
むしろあの癒され美少女と遊んでられるなんてむしろ御褒美じゃないか……。
しかしアイナは俺と対照的に表情が暗く落ちていく。
「初仕事でいきなりファティか……」
「なんで? ファティってあのファティでしょ? お前なんかと違って超優しいじゃん」
「お前なんかと違ってって部分が気になるけど……まあいいわ、じゃあ早速今から遊びに行く?」
「おお!いいね、今日の午後は癒しタイムか!」
あのホンワカ空間でずっと遊んでられるなんて……あぁ、アイナに嬲られた心が回復するようだ……。
「……あの、優希さん……」
ロミーナさんは酷く言いづらそうにしながら俺に何かを言おうとしてきた。
「ん?なに? ロミーナさん?」
「ピナ、いいのよ、一度、分からせてあげないと」
しかしアイナが、これを止めてしまい、ロミーナさんも口を閉じる。
「そうですか……では一つだけ無茶なお願いを……」
ロミーナさんは渋々と言った様子で俺にお願いをする。
「死なないで……いや、あまり痛ましく死なないで下さいね? 見るのは私達なんですから……」
「え? それってどう言う……」
「さあ、優希、ファティの部屋まで空間転移しておいたわよ、行ってきなさい!」
「ちょっ、待っ……」
有無を言わせずアイナに部屋に入れられてしまう……。
「全く……ごめんねファテ……ィ?」
その部屋は奇妙な世界だった。
部屋にあるおおよそ全てのものが壊れ、治りを、繰り返す、棺の破片が誰も触れていないのに、宙に舞い、また元に戻る、を繰り返し続ける。
「なんだ? 一体……あ、ファティ、一体これは……?」
そんな不気味な部屋の真ん中に、唯一動かずにファティは蹲っていた。
俺はそんなファティの肩に触れた。 触れてしまった。
「貴方の時を……頂きまーす」
「え?」
瞬間、いや、脳内に走馬灯、いや、走馬灯とは言えない、何故ならそれは「今までの記憶」ではなく、「これからの記憶」だからだ。
これからの記憶、これから体験するであろう記憶が一瞬で駆け巡った。
知らない人と出会った記憶、知らない人と話した会話の内容、知らない曲が見えないほどに、聞こえないほどの速さで駆け巡る。
「あ……あ、」
「ご馳走っと、なかなか美味しい時間だったよ~」
暗く妖しく光る瞳に見据えられて、俺は俺ととゆう時を終えた。




