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異世界ぐーたらゲーム録  作者: 娯楽作品の虜
グダグダ使用人ライフ
23/37

ゲーム21

前回のあらすじ

アイナを起こしに向かいました

「お嬢様、起きてください、お嬢様」


ロミーナさんが、アイナに近寄り軽く揺さぶる。

その表情は何処か不安げで、耳も大きく垂れている。


「ん……、なに?」


それに対してアイナは少し不機嫌そうな声を上げ、意識を覚醒させる。


「あの……、昨日は本当にすいませんでした!」


ロミーナさんは謝った、真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに素直に謝った。


アイナもそれを見て状況を判断出来ないほどバカではない。

寝起きの表情から、すぐに真面目な表情へ切り替わる。


「ロミーナ……」


「あの、これ昨日お嬢様が興味を示していたチョコレートです。 お口に合うか分かりませんが……もっもちろん、こんなもので許してもらえるとは……!」


ロミーナさんの初めて見る焦った表情、何を言っていいのか分からずに、チョコレートを渡してしまう。


「ロミーナ」


しかし、俺が見てきた中でアイナの表情は、一番渋く、決していい表情とは言えない。


「はい……」


ロミーナさんも、その一言から何かを感じ取ったようで覚悟を決めた様に返事をする。


「私が怒っているのは、多分ひどく独善的で、十人に聞いたならば恐らく八、九人は私が悪いと答えると思うわ、いいえ、もしかしたら十人かも知れない。 でもね? 私の性格を知っている貴方なら、恐らく分かったんじゃないかしら? 私がどんな風に反応するか 。 そして、もしかしたらあなたがそれを見て楽しんでいるのかも知れない、そう思うと私は怖くてたまらないわ」


「はい」


普段はビシバシ言い返すロミーナさんも、この時は全く反論しなかった。

それ程までにアイナの言葉には感情が篭っていて、軽く受け流すには重すぎた。


「あなたが渡してきたこの、チョコレート、とても美味しそうだわ、美味しそうと思ってしまっている自分がいる。

このチョコレート一つで、許してあげようと考えてしまう私がいる。 あなたを仮にではあるけども、使用人として雇ってからもうそろそろ十年になるわ、あなたは優秀で、初めから私が教える事なんて何一つ無かった、それだけに怖いの、私があなたに操られているんじゃないかってね」


「い、いえそんな事は……」


ロミーナさんは泣き袋に涙を溜めて精一杯の、否定の意思を見せる。


不味いな……少し一方的になってきた。

このままだと、仲直り失敗に終わるかもしれない。

やれやれ……仕方ない。

少し助け舟を出してやるか……。


「なあ、アイナ、それは少し言い過ぎじゃないか? ロミーナさんだって……」

「うるさい! あんたは少し黙ってなさい!」


アイナの手のひらがこちらに向いて、少し青白く光ったかと思ったら、俺の口を氷が覆っていた。


「むぐー、むぐ、む? むー!?」


やれやれ、口元を凍らせられたのでは仕方ないな……ここはやっぱりロミーナさんに任せよう……。


てかこれ取れない……低体温症で、火傷する!


「む!! むぐー!? むー! むー!」


「全く……話がズレたわね、で、ロミーナ」


「はい……」


「話が長くなってごめんなさいね、手っ取り早く結論だけ言うわ」


「はい、覚悟は出来ております」


「そうね、貴方はクビよ使用人解雇」


「は……い……」


遂に泣き出してしまった。

しかし口が塞がれてしまった俺にはどうすることも出来ない。

それにしても、一体どんな事をしたのかは知らないけど、クビはやり過ぎじゃないか?

と思った矢先にアイナの口から発せられたのは意外な言葉だった。


「だから……また、一から……友達として私と付き合ってくれないかしら?」


「む?」


「は……い?」


「使用人と主人という立場、私達を邪魔しているのはこの関係性だと思うの、主人は自分が上であると勘違いしてしまうし、使用人は、私が世話をしてあげている、だから自分の方が上だと勘違いしてしまう。 お互いがお互いをしたに見ている関係性には何時か終わりが来るし、相手の些細な行動も目に付くようになってしまう。

現に、私はそうなってしまっていたわ。

私は……私は、あなたとずっと一緒にいたい。

だから……一から、いいえ、〇から私と友達という関係性で、やり直してくれないかしら?」


そう言ってアイナは泣き崩れたロミーナさんの肩を抱く。


「お嬢様……!」


どうやらアイナは俺が考えているよりも、考えていたようだ。


「ロミーナ、いいえ、ピナルディ、私の事は名前で呼んで頂戴、それが友達っていうものでしょう?」


「はい! アイナ様! ありがとうございます! 」


ロミーナさんはこれまでに無い笑顔でアイナに応える。


「下の名前でいいわよ、それに敬語もやめて、それじゃ対等にじゃないじゃない」



更にアイナから嬉しい提案、いつの間にかさっきまでの悲しい涙が嬉し涙に変わっていた。


「コホン……では失礼して、ありがとう、リトルフ……様 あぁ!どうしても様をつけてしまう!」


嬉しい悲鳴が部屋に響き渡る。


「むー!むー!」


……ついでに俺の悲鳴も。


「アハハハハ! まあ少しずつ慣れて言ってくれれば良いわよ、それよりピナルディ、私、昨晩の件で少し頭が痛いの……だから膝に寝かせてくれないかしら?」


最高のキタコレイベント発生中にも関わらず、唇が痛すぎて全く萌えられない。


「もちろんです、アイナ……リトルフ様! あぁっまた……」


「フフッ、そんなに呼びにくいなら好きに呼んでくれて構わないわよ?」


「むー!むー!」


「いえ、敬語は治らないかも知れませんが、名前だけは是非とも下の名前で呼ばせて頂きます、ありがとうございますリトルフ……様……」


あれ?可笑しいぞ? 聞こえてないのかな?


「むー!むー!」


「もう、今いい所なのに煩いわね」


口元の氷がジュウと音を立てて水蒸気へと変わる。


「ゴッホ! ゴッホ! ヘックション! 鼻に水蒸気入った! ゴッホ!」


「全く汚いわね、ピナルディも……いえ、ピナもそう思うわよね?」


「ええ、全くですリトルフ様」


先程までのか弱い笑顔は何処へやら、とっても元気な冷笑ですね。

お元気出たようで本当に良かったです。


「で、あなたも今聞いていた通り、ピナはこの屋敷の使用人じゃなくなったから、使用人である、貴方には今までピナがこなしていた仕事を代わりに行ってもらうわ」


「え?仕事?」


確かにそう言えば俺は使用人ってことになっていたけど、全く仕事してないな……それにしても仕事って一体どんな仕事だ?


「そう、仕事。 まあこの屋敷には貴方の他にも何人も使用人がいるから料理とか、掃除とかそういうのはやらなくても大丈夫よ、貴方がここでする仕事は、この屋敷の住人のストレス発散、まあつまり「遊び相手」になってあげる事ね」


「なんだ、そんな事か、今までと変わらないじゃないか!」


仕事って聞いて真性ニートのアレルギーが発症しかけたけど、遊び相手相手なら大丈夫、遊びにかけては自信がある。


「安心しているところ悪いですが優希さん?」


「ん?なんですか?ロミーナさん?」


「本気で遊ばないと……死んじゃいますよ?」


ロミーナさんは先程と同じ、いやそれ以上の冷笑を携えて優しく言った。


人の感情って難しい……。

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