ゲーム19
「ん……ふぁーあ……もう朝か……」
小鳥の鈴の音のような囀りに起こされた……気がした。 気がしただけ。
実際には部屋に何者かが入ってくる気配を感じて意識が無理やり覚醒させられた。
これは色々な人に多くの隠し事をもつ男子高校生がもつ特殊スキル「後ろの正面(ノックしろって言っただろ!)」だ。
「ちゃんとノックしましたよ、それにもう昼です。 変な能力を覚醒させるのはいいですからそろそろ起きてください」
俺の寝起きの妙なテンションにウンザリしたのかロミーナさんは嗜めるような口調で俺に起床を促す。
結局ロミーナさんはこの部屋に泊まったのだろうか、途中で気絶しちゃったから分からないんだけど……。
「ところでロミーナさん、一体何の用?」
そんな平日(?)の昼下がりに俺の部屋に来るなんてなにかしらの大事な用があってのことだろう。
しかし、俺の予想は外れたようでロミーナさんは口を膨らませながら少し不機嫌そうな表情をする。
「なんですかその冷たい言い方は……用がなきゃ来ちゃいけないんですか?」
「い、いや……別にそういう訳じゃ……」
なんだ? 俺ってばいつロミーナさんの好感度あげたっけ?
思い当たる節が全くないぞ?
あれか? ラノベとかでよくあるいつの間にかハーレムか? なるほどそれなら納得出来る、つまり今のロミーナさんは俺にメロメロって事か!
ウサギは年中発情期だし、もしかして……。
「正直頭の中で何をお考えになられてもいいですけど私は別に年中発情期じゃないですから!」
ロミーナさんは顔を真っ赤にして反論する、歳も俺と同じくらいだと言っていたしまだこういう話題には弱いのだろうか。
「あ、そうなの、でも否定したのがそこだけって事は他は合ってるって……」
「貴方の存在を否定して差し上げましょうか?」
「すいませんでした調子乗りすぎました」
存在を否定とは……何だろうか、「あ、アンタなんか存在しないんだからね!だ、 だから……アンタになら何を見られても恥ずかしくなんてないんだから……」みたいな感じかな? おお!いいね存在否定! やっぱりやってもらえば良かったかな……。
「なんなんですか? 私も確かに寝起きは思考が少し鈍ってしまいますが、貴方とお嬢様は寝起きは思考が過激になってしまうのですか?」
ロミーナさんは世話焼きの宿命なのか、こめかみを押さえるように、額に手をあてる。
「ってかそれにしても、アイナは寝起きだとあれより性格過激になるの?よくこの屋敷壊れないな」
アイナの性格なんて核爆弾と負けず嫌いと魔法を足して三をかけたような奴だからな。
なんてったってここ二日で既に俺を直接的でないのも含めれば二回は殺されている。
このままだと一日一デスがペナルティとなってしまいそうでとても怖い。
「まあ、屋敷自体もお嬢様の魔法で護られていますし、所詮寝ながらの魔法なので大して集中もしていないため、威力は微々たるものです。 まあ、恐らく優希さんでも致命傷で済むでしょう」
なるほどなるほど……致命傷か……それなら大したこと……致命傷?
「それ、済んでなくない? 致命傷って俺死んでない?」
「安心してください、眠りながらなのでろくに狙ってもいませんかわそうと思えば優希さんでもなんとかかわせるはずです」
ロミーナさんに、ドッジボールで玉を一度もかわせず「逆ノーコン」という渾名までついた俺が何故か、信用されていた。
「へ、へぇー、まあそれなら大したことないな……今度起こしに行く機会があればかわしてみるよ」
まあ正直そんな機会来ないと思うし来ても絶対にやらないが、現代ではシャア理論は通用しないのだよ、どんな超理論でも通じなければどうということは無い!
とりあえずの見栄に満足していると、いきなりそれを聞いたロミーナさんの目が輝いた。 輝いてしまった……。
「そうですか! じゃあ今から行きましょうか!」
「え? だって俺には特に用もなく訪ねてきたんじゃ……それにアイナだって流石にもう起きてるんじゃ……」
流石に館の主人が昼過ぎまで起きていないなんて事はないんじゃ……。
「私は一度もそんなこと言っていませんよ? それにお嬢様は昨日夜遅くまで起きていらっしゃった性でまだお休みでいらっしゃいます」
「え? だって用がなきゃ来ちゃいけないんですか? って……それに疲れてるなら寝かせておいて上げた方が……そう! これはアイナ自身の為なんだよ!」
アイナ本人を盾に、なんとかアイナの部屋という地雷源に踏み入らないように抵抗を試みる。
「別にその言葉が何の用もなしに来たという言質にはならないでしょう? それに本当にお嬢様の事を思うなら生活リズムが狂わないようにして差し上げるべきじゃないですか?」
「う……確かに……」
確かに生活習慣の乱れは馬鹿にならない、乱れに乱れが重なりそのうち元に戻る事はあるがそんなの2ヶ月以上先の話だ。 (経験者)
治せるなら今治しておくことに越したことは無い。
って、何納得してるんだ俺は! その治す代償に俺の命が消えるかもしれないんだぞ!
「という訳で、行きましょうか優希さん! お嬢様を起こしに!」
ロミーナさんは爛々と輝く瞳に炎を携えて意気揚々と俺の襟首を引っ張っていく。
あんな細くて白い腕のどこに俺の六十を超える体重を軽々引っ張る力があるんだろうか……?
「いやだ、いやだー! 俺はまだ死にたくなーい」
これじゃほんとに一日一デスになってしまう!
なんでたかが人を起こしに行く程度の事で死なないといけないんだ……絶対に嫌だ、俺は行かないぞ!
「あ〜あ、折角手伝ってくれたら、作ってきたチョコレートあげようかと思ったのに……仕方ない、自分で食べようかな~」
「何してるんだ、早く行こう、あのねぼすけ姫を起こしてやるんだ!」
「…………」
唖然とした表情とは、きっとこのような表情を言うのだろう。
まあそんな事は気にしてられない、なんせ女子の手作りチョコレートだ、あっちの世界では食べられる事は有り得ない物だ。
「そんな事よりロミーナさん、今の話本当なんでしょうね?」
また騙されるのだけはゴメンだ。
「これの事ですか?」
ロミーナさんは綺麗なメイド服の可愛らしいポケットからさらに可愛らしいリボンで結ばれた小包をだしてこちらに見せる。
「よし! 早く行こう!」
「なんて単純な……」
ロミーナさんが何か言っている気がするが全く気にならない、これが女の子の手作りチョコレートの力か……!
「ところで、アイナは昨日夜遅くまで一体何をやっていたの?」
「殺しあi……いえ、皆目検討も付きません」
今殺し合いって途中まで聞こえたけど気のせいか……。
「気のせいなんだよね!?」
「えぇ、気のせいです、気のせい」
「よく見たら昨日とメイド服が違うものに変わってるけどそれも気のせいだよね? 別にロミーナさんがアイナと殺し合いしたって訳じゃないよね? それで気まずいから俺を生贄にするつもりじゃないよね!?」
「まあ、そうなんですけど」
「認めちゃったよ! 嫌だ、やっぱり行きたくない!」
「あーあ、お嬢様を無事に起こす事が出来たら、お背中お流しして差し上げようと……」
「何してるんだ、早くいくぞ!」
「はい!」
やっぱり自分って単純だな……。
書き続けることだけが前へ進む唯一の方法。




