ゲーム2
2話目です
「どう? まだやる?」
混乱魔法を重ね掛けされて、目の前のありとあらゆる物がチクワにしか見えなくなった俺に、目の前のチクワ(少女)は未だに好戦的だ。
この短時間で分かったことだが、この目の前の少女は、真っ赤な髪が血の色なんじゃないかと思うほど好戦的な性格だという事だ。
しかしいくら何でもチクワに負けるわけには…………「どう? 参った?」
出鼻を電気魔法で攻撃され、全身が痙攣して動かない俺の、上に乗り、チクワが質問する。
「いや、もういいです、調子乗ってすいませんでした」
やっぱりチクワには勝てなかったよ……。
「はい、これで元に戻ったでしょう?」
床型のチクワに屈して項垂れているといつの間にかチクワが床に戻っていた。
「おおっ、チクワが色んなものに!」
さっきまでチクワ王国のチクワ宮殿の中だったのに!
「貴方の世界には、そんな王国にそんな宮殿があるの?」
「え?」
あれ? 今心読まれなかったか?
「読まれてないわよ」
なんだ、読まれてなかったのか、まだ混乱しているのかな?
それより、私達の暇つぶし相手になりなさい、か。 さっきのコイツの言い方から察するに、やっぱりこの世界は俺がいた世界から見れば「異世界」で。
俺はこの少女に、この魔法使いの、少女にこっちの世界に「遊び相手」、「ストレス発散相手」としてこっちの世界に転移させられたわけか。
「なるほど、まああっちの世界に未練無いから別に良いんだけどね!」
家族も何時も出張中でいないようなもんだし、学校とか色々めんどくさいし……何より心躍る異世界転移! このチャンスを生かさないなんて有り得ない!
「へー、まあ飽きたら送り返すけどねー」
サラッとなかなかの自己中ぶりを発揮する目の前の魔法使い(?)。
「なんて理不尽な……」
こいつ……俺の事、玩具か何かと勘違いしてないか?
俺が玩具として扱われたいのは大人のお姉さんだけ……ゲフンゲフン。
俺は玩具じゃない!
「じゃあ早速だけど……何する?」
全く早速ってないんだけど……。
「考えてないのかよ……」
ほんとに暇つぶしの為だけに呼び出されたんだな・・・・
「いや、召喚した人に考えてもらおうかなーって」
目の前の少女は赤い瞳を片方閉じ、テヘへと舌を出して照れ笑いする。
こいつ……俺並みにテキトーな性格してるな……。
まあ適当に遊んでれば、そのうち飽きて、元の世界に返されるのだろう。
どうせ今は夏休み。
一夏の思い出に異世界転移って言うのも悪くない……のかな?
「まあいいや、ところでお前の名前はなんて言うんだ?」
遊ぶにしても何をするにしても少なくともコイツが飽きるまでコイツの暇つぶし相手を勤める(目の前の少女談)らしいのに相手の名前を知らないでは話にならない。
「あ、確かに名乗ってなかったわね、私の名前はアイナ・リトルフよ、アイナって呼んでね」
これは失念、と言いった感じでアイナという赤髪、赤眼の魔法使いはその赤い瞳を好奇心に輝かせ軽く自己紹介をする。
「へーアイナって言うのか」
なるほど、いかにも異世界って、感じたけど、日本語喋るに日本の名前じゃないのはやっぱり違和感あるな……。
「気安く呼ばないで!」
「理不尽!?」
アイナでいいっていったのに!
「いやーごめんごめん、1度やってみたかったのよこれ、ところであなたの名前は?」
やってみたかったとか……、てかこっちの世界にも、ハシゴ外しなんて文化あるのか……だが、やられたからには、こちらからももそれ相応の返しをしなくては!
「フッ……名乗る程の者ではない……」
決まったな…! やっぱり「あなた、名前は?」って聞かれたらこの返しでしょう!
「あっそう、じゃあナナシで」
しかしアイナはそんな俺の決め台詞を当然のように無視して新しい名前を付けようとする。
「いや、ちょっ!そこはもう一回聞いてくれよ!」
自分の時だけ盛り上がって他人の時はガン無視するなんて、なんて身勝手なガキだ!
「何よ面倒臭いわね……で、結局何ていうの?」
いや、まあ確かにふざけたボケだったけどこっちにもそれなりに理由がある訳で……。
まあしかし、聞いてくれと言ったからにはか名乗らないわけにはいかないか……。
「俺の名前はゆうき」
頼む、出来たらここからは追求しないでくれ……。
「へー、ユーキっていうの、で、上の名前は?」
だがしかし、そんな願いも虚しくアイナは、当然下の名前も追求する。
「……ゆうき」
「なによ、からかってるの?」
「いや、上の名前がゆうきだ」
「じゃあ下は?」
「ゆうき」
「え?上の名前がユーキで下の名前もユーキ?」
アイナは、何を馬鹿な。 という表情でこちらを見る。
見慣れた光景、小中高すべての自己紹介でクラスの人達に同じ反応をされてきたからな。
まあお陰でどんな人からも呼び名が「ゆうき」で固定っていう利点はあったけど……。
何故そんなに適当につけた我が両親よ……。
ここ数年あっていない我が両親に恨みを抱きつつ改めて名乗る。
「改めて名乗ろうか、俺の名前は結城優希。 16歳だ」
「ユーキ、ゆうき、優希ね、分かったわ優希」
「あぁ、よろしくな、そして一つ忠告だ」
とりあえず自己紹介の終わった両者。
しかし優希には、腑に落ちない点が一つ。
「なによ、藪から棒に」
その諺こっちの世界でもあるのか……言葉も通じるし、冷静な考えてみるとやっぱりおかしな世界だよなぁ。
「あぁ、忠告は年上には敬語をつかえ」
流石に、俺といえども明らかに五歳以上年下の奴にタメ口ってのは多少勘に障る。
それにこの世界にも、年齢というものがある以上敬語を、使えるようになっておくのは、アイナの為でもあるはずだ。
俺はアイナのために言っているはずなのだが、何故かアイナの目はバカを見る目で固定されている。
「じゃあ、年下のあなたが私に敬語を使いなさいよ」
「は?」
は?年下?なんだ?言葉の意味が違うのかな?
「何よその顔……私は17よ?」
「嘘つけ!10もいってないだろ」
「失礼ね、また死にたいの?」
「すいません勘弁してください」
それにしても17とは……もうこれ以上成長しないのか……これは二次元だと合法ロリとして、かなりの需要を誇るが現実だと・・・可哀想だな……。
「何よその目……ムカつくわね」
アイナは不快感を顕にジトーっとした目線を向けてくる。
「まあ、ドンマイ!」
言った瞬間、アイナの赤い瞳に暗い色が差した。
「あなたって自殺志願者なのね?そうなのよね?」
「いや、俺は慰めただけで」
あ、不味い。 と思ってももう遅く、アイナの周りには髪の色と同化しそうな程に真っ赤な魔力的なものが漂っている。
「いらん世話だー!!メテオ!」
そしてそれらを圧倒的な暴力に変換し、優希へ向けて打ち出す。
「おまっさっきのに懲りずにこんどはFFまで…………ってかそう何回も死んでたまるか!」
当たれば間違いなく生きてはいられない。 かと言って立ち向かっても返り討ちになることは分かっている。 となればする事はたった一つ。
「逃げるが勝ちだぜ!」
優希は全力でアイナのいない方向に駆け出した。
「あ、待てっ!」
「誰が大人しく殺されるかバーカバーカ
!」
子供顔負けの子供らしさで優希は全力で駆け抜けてゆく。
「いや、多分屋敷内の方が危ないんだけどて…もう行っちゃったか……仕方ない探してあげようかな、召喚したの私だし、なかなか面白そうな奴だったし……。」
それ故にこのつぶやきを優希が聞くことはできなかった。
「なんとか逃げ切ったな……」
それにしても広い屋敷だなー。
走っても走っても突き当たりにつかないんだが……。
体力は人並みにはあるからもう1キロは走ったと思うのだが……。
「……なんか臭いな……」
左奥のある部屋の方からなんとも言えない匂いが漂ってくる。
「お、おじゃましまーす……うっ!臭っさ!」
ドアを開けた瞬間にさっきまでとは比べ物にならないほどの異臭が漂ってくる。
中には一体何が……死体でもあるんだろうか?
……もしあったら逃げよう、この屋敷から出て二度と関わらないようにしよう。
「さてさて何がいるのかなーっと」
「ガルルルル……」
「ガルルルルって虎でもいるのか………………は?」
目の前にいたのは、真っ白な毛並みの…………ドラゴンだった。
「おおおお!スッゲーな!こういうの見るとホントに異世界に来たんだって実感わくわー!」
どんなゲームにも大抵いて、見たことの無い人はいないほど有名な想像上の存在し得ない生物が、目の前にいる。
「ガルルルル……」
ドラゴンは明らかに警戒心剥き出しでこちらを威嚇している。
「ハッハッハ!どうせ鎖で繋がれてるんだろ?それにしてもスゲーな、体の大きさは俺の10倍以上、全身どこ見ても筋肉の鎧で固められてる」
そう、全身どこ見ても…………あれ?
全身どこ見ても鎖らしき物が見当たらないんだけど……あれ?
「もしかして…………」
優希の額に脂汗が伝う。
「グルアァァ!!」
ドラゴンはこっちへ向かって駆け出してくる。
「繋がれてねーのかよ!!」
不味い、相当奥まで来てしまっている、興味がそれた隙に一気に逃げないと……。
「フグーフグー」
ドラゴンが興味を逸らすその一瞬を伺っていると、荒い鼻息をたてている。
しかもよく見るとこちらを真っ白な牙の隙間から真っ赤な炎をがチラチラとこちらを伺っている。
「いや、まてまてまさか……」
「シャアアアアア!」
超高温の真っ赤な炎が命を狩ろうと手を伸ばす。
「ブレスまで吐くのかよぉぉ!!」
あ、これ無理だわ、アイナが俺を見つけて復活させてくれないかなー無理だろうなーこんな奥まで来るわけないし、そもそも結構酷いこと言っちゃったしなー。
「あーあ、俺の異世界生活もこれで終わりかーもっと楽しみたかったなー」
チーレム無双したかったなー、まあ死ぬ前にあんな美少女と話せたんだから満足……。
「勝手に満足して死なれては困ります。あなたはお嬢様の暇つぶし相手なのですから。」
突然目前まで迫っていた炎がかき消されて、残り火の中から出てきたのは、なんと……。
ドラゴンよりも美しい純白の毛並みの……うさ耳メイドでした。
「なんでだあああ!!」
あまりの驚愕に大声をあげてしまった。
「ガルァア!」
「静かにしなさい!」
言葉と同時に目の前のドラゴンの首が落ち、俺の頭が叩かれた。
なんという早業……!
「危なかったわね」
正体不明のうさみみメイドさんはこちらへ優しい笑顔を向ける。
「ええ、ありがとうございます助かりました!」
優希も命の恩人に感謝を伝える。
「いえ、その事じゃなくて……」
メイドさんは優希の御礼を軽く受け流す。
「?」
「間違えてあなたの首を落としてドラゴンの頭を叩くところでした」
お茶目にメイドさんは、舌をチロっと出し、半笑いでとんでもないことを言ってのけた。
「いや、ホントに危ないな!」
「すいません、冗談です」
これがアイナのメイドならあの主人にしてこのメイドありだな……と思う。
「なかなかにキツイ冗談ですね!」
「どちらにしろ……あなたには来てもらいますね」
そう囁きメイドさんは優希の後ろに回って首筋に手刀を1打。
「え?…………」
「ホントに弱いですね力加減を間違って死んでいなければ良いのですが」
遠くにうさ耳メイドの声を聞きながら2度目の意識を手放さざるを得なかった……。
なんとか書き終わった……。
もっと書かなくては!




