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異世界ぐーたらゲーム録  作者: 娯楽作品の虜
グダグダ使用人ライフ
14/37

ゲーム13

遅くなった……

「ふぅ……なんとか生きてた……」


処置を素早くとったお陰でダメージは少なかった。

まあ、便器が蠢くワカメの地獄絵図になったけど……このまま流しても大丈夫かな?


というかそもそもこの世界の排水事情は一体どんなふうになっているのだろうか。


まあ、そういう事は気にしたら負けってやつだな、このまま流しちまうか。


「それにしても変わったトイレだな、全面タイル張りだし、照明つけても薄暗いし……」


リビングも、どことなく暗い感じだったし、やっぱりドラキュラだから、明るい所は苦手なのかな?


「って……あれ?」


ない! ないぞ! あれが無い! あの水を流すためのレバーみたいなやつがない!


「おーい、ファティ〜! 水ってどうやって流すんだー?」


「壁に貼ってあるタイルで、一枚だけ違うタイルが、あるでしょ〜?それを軽く押せば流れるようになってるわよ〜」


なるほど……便利に出来てるなぁ。


「ポチッとな」


…………流れない。

少し軽く押しすぎたかな?


「ポチッっとな」


…………またまた反応なし。


???なんで流れないんだ?


「ていっ! とうっ! やあっ! このっ! いい加減っ! 流れろっ!」


最初は触るくらいだったのが押すになってきて、さらに叩くから殴るになっていく。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラアッ!」


俺の拳が……効かないだと?

てか、むしろ手が痛い。

軽く涙目になる程度には痛い。


なに?俺が弱いの? 俺の「本気」があの可愛げな女子達の「軽く」よりも下なの!?


優希が、自分の無力を嘆いているとトイレから聞こえる異音にその可愛げな女子達がやってきた。


「何してるのよ、優希!さっさと流しなさいよこれから決勝戦だっていうのに」


「そ〜ですよ、それに私の部屋のトイレになにか恨みでもあるんですか〜?」


「そうですよ、優希さん意地悪したのは謝りますから、トイレなんかに八つ当たりしないで下さい」


なんか色々嫌な勘違いをされているっぽいな……。


「違うんだよ、別にファティのトイレに恨みがある訳でも、ロミーナさんからのイタズラに怒って八つ当たりしてる訳でも決勝戦を延期させようとしてるわけでもないんだ!」


「じゃあどうしてよ?」

「どうしてですか?」

「どうしてなの〜?」


「あの……トイレの水が……流せません」


まさか16歳になってまでこんな事を言うとは思わなかった……てか、こんな言葉、もうこの先人生で使うこと無い気がするわ。


そんな、生まれて初めて感じる種類の羞恥を味わっていると、3人は訳が分からないというような顔をした。


「水が流せないって……そこ軽くタッチするだけじゃない」


「そうよ〜流せないって事はないと思うわ〜」


「優希さん、恥ずかしいからって嘘はいけませんよ」


誰も信じてくれないどころか、ロミーナさんに至っては子供を叱るときのように「メッ」としている。


正直ロミーナさんの、可愛い仕草が見れたから冤罪を受け入れてもいい気がしたがそこを何とか男のプライドで支えて、必死に弁明する。


「だって、軽く押すって言ったってお前らの軽くと俺の軽くは全然違うんだよ!俺はお前らみたいに……「ジャー」え?」


「優希はこの程度の力もないの?それ、日常生活に支障をきたすレベルだと思うけど……」


水が流れる音がする。

見ると、アイナが、さっきまで俺が散々叩きまくっていた色の違うタイルを「優しく触りながら」俺の方を軽蔑の目線で見ていた。


キャッ、目が合っちゃった!

じゃなくて……え?嘘だろ?


「嘘じゃないわよ、ほら、念のためファティも……」


「はい〜っと」


ファティがタイルに優しく触ると水が流れ出す。


おかしい……どこからどう見ても優しく触れているだけにしか見えない


力加減か?俺が強くし過ぎたのか?


「ロミーナ」


「はい、お嬢様」


アイナの合図でロミーナさんが色違いのタイルに高速の拳を繰り出す。

おおよそ拳では出ない金属音をたてて色違いタイルを叩いた。

優に本気だった俺のオラオラの、数倍は強いだろう。


しかし水は流れる。


「どう?これで認める気になった?」


「おかしい……俺は確かにそのタイルに触っていたぞ?」


「大丈夫ですよ〜別に怒っていませんから〜でも、嘘はいけませんよ〜」


「そうですよ、ここは男らしく一発謝ってしまいましょう?」


何だろう……ここまで徹底的に批判されると俺が間違ってる様に思えてくるな……。


「いや、確かに俺はそのタイルを触っていたぞ!?」


「そんなに言うなら触ってみたら?」


「おう!」


アイナのその言葉に、俺は待ってましたとばかりに腕まくりをする。


「ただし……」


「ん?」


「これだけ認めなかったんだから……もし万が一、水が流れた時は……分かってるわよね?」


……まくりあげた袖をそっと元に戻した。


「……縮こまるくらいなら最初から威勢を張らないでくださいよ……」


「いや……やりますよ、今更死ぬ事なんて怖くない、そんな事より、みんなの信頼を失う事の方が怖いんだ……」


「まあ、そもそも信用してないけどね」


「あ、はいそうですか……」


アイナの周りに漂う火の玉が放つオーラが「死ぬよ?てか殺すよ?」って言ってる気がする……。


何で、トイレの水が流れるかどうかで、ラスボス戦前並の覚悟を決めないといけないんだ……。


「大丈夫よ優希、痛みは無いわ、それにちゃんと生き返らせてあげるわよ」


「よし。 触るぞ……!」


ゴクリ……喉が引き締まり、腕が震える。


震える手がタイルに…………触った!


「…………流れない……おおっ!流れなかったぞ! どうだ見たか!俺は嘘なんてついてなかったんだ!」


自分の無実を証明できて、盛り上がる優希とは裏腹に周りの3人は有り得ないといった表情だ。


「ゆ、優希さん?もう一度触ってみてくれませんか?」


「お?いいけど……」


さっきよりしっかりとタイルを触る。


水は、流れない。


「そ、そんな……有り得ないわ……」


「いや、そこまで言わなくても……」


どれだけ信用されてなかったんだ俺は……知ってたけど悲しくなってくるな……。


「いや、優希さん〜、多分あなたの考えてること多分違いますよ〜?」


「え?どういうこと?」


「いいですか〜、私の家のお手洗い、と言うか普通のお手洗いというのは〜体の周りに流れる微弱な魔力に反応して水が流れる仕組みになっています〜」


「ふむふむ……」


「そして〜この魔力というのは全ての生物の生の源なんです〜魔法の原動力としては勿論〜体にある臓器を動かしてるのも魔力で行っています〜」


「つまり?」


「魔力が〜全く流れていない優希さんは〜生きていないという事になります〜」


…………え?俺って生きてないのん?

まさかの主人公死んでる?

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