ゲーム12
途中で目線が変わります〜、違和ありまくりでヤバイ……。
「さて、で、決勝戦だけど……少し休憩にしない?」
「何故ですか?」
「そうよ、もしかして死に疲れちゃった?」
「初めて聞く疲れ方だな……絶対にその疲れ方だけはお断りだわ……」
まあどっちかっていうと死に疲れってよりは生き返り疲れかな……あの、生き返った直後ってどうしてあんなにだるいんだろう……。
「じゃあどうしてですか〜?」
「そうよ、せっかく盛り上がってきた所なのに、ドリンクの効果も切れちゃうじゃない」
「いや、だって俺……この世界に来てから何も食べてない……」
一日目は俺の部屋が転移してきた衝撃で壊れてしまったからこの屋敷の一室を借りたけども、食事は出なかったし、ほぼ徹夜明けでここまで六時間の道のりを歩いてきたんだ。
お腹空いているどころか、お腹の存在を感知できない程度にはお腹が空いている。
「じゃあ作りますか、ファティさん、台所を使わせて貰ってもよろしいですか?」
「いいよ〜」
「やったぜ!!」
ていうかこの部屋だけに寝具 (棺桶)と、テーブルと、キッチンがあるなんて……どんだけ広いんだろう……。
2、3分もするとロミーナさんが何かを刻む小気味よい音がトントンと聞こえてくる。
「さて、料理が出来るまで暇だな……」
「じゃあなにかしましょうよ!」
「でも、なにをするの〜?」
確かに、何するか……今は特に何も持ってきてないからな〜
「じゃあちょっとこの世界について聞きたいな」
少なくともアイナの暇つぶしか終わるまではこの世界にいる事になるのだからこの世界の事について知らずにいるわけにはいかないだろう。
しかしアイナはそんな俺の心中を知ってか知らずかあからさまに嫌そうな顔をした。
「えーー?そんなのつまらないじゃない!」
「でも、そんな事言ったって俺今、何も持ってきてないぞ?さっきのハンマーとヘルメットはロミーナさんにダッシュで取ってきてもらったけど、今ロミーナさんは料理してるし……」
余談だが、来るのに六時間要した道をロミーナさんは5分足らずで往復してきた。
……ホントにどうなってんだロミーナさん……。
「う、それは……」
恐らく俺の心を読んだであろうアイナが反応してきた。
だが、変だ……普通その反応はアイナのものじゃなくてロミーナさんのじゃないか?
アイナはロミーナさんが5分足らずで往復してきた秘密をなにか知っているのだろうか?
「じゃあその辺の解説も加えながら話しましょう〜」
「ちょっ、ファティ!?」
どうやらファティも、その原因を知っているようだ。
しかし何故かアイナとは、真逆で案外ノリノリだ、更にアイナはファティが話すと言った瞬間かなりの焦りを見せていた。
……これは……甘い蜜(人の弱み)の予感!!
「最低ですね優希さん」
「げ、ロミーナさん……」
気が付くとそこには何かしらの料理を携えたロミーナさんが立っていた。
「「げ」なんて酷いですねか弱い乙女に向かってそんな事言うなんて……」
……一体どこの世界に音速以上の速さで走り、ピコピコハンマーで、頭蓋骨を粉砕するか弱い乙女がいるのだろうか……。
「この世界にいるじゃないですか」
さも当然のように言うロミーナさんを見て、何度目になるともわからない言語の違いを痛感した。
「ささ、とにかく前菜が出来ましたよ」
ロミーナさんが何気なく出してきたお皿には俺の世界なら、そこら辺のホテルならこのまま出てきても何の違和感も抱かないほどの完成度を誇っていた。
……ゴクリ。
「頂きま〜す」
「あぁ、言い忘れていましたけど実は優希さんのだけ特別仕様でして……」
「ゴホッ!」
え……?
まさか大量のカラシとか?
嫌でも食べた感じそんなことなかったけど……。
「いえいえ、そんな物は入れていないのでご安心を」
「良かった……驚いてむせちゃったよ」
「すいません、水をどうぞ」
「あぁ、ありがとうございます、で、一体何を入れたんです?」
ここは水も美味しいな!水だけで腹が膨れてきちゃったよ!
……っておかしくね?俺まだサラダと水一杯しか飲んでないのに……。
「はい、私が入れたのは、優希さんはお腹が大変空いてらしたようでしたので、お腹が一杯になるように……」
あれ?なんかもうホントにお腹一杯……。
「乾燥させた[増えるわかめ]を入れさせていただきました」
「いやそれ死ぬやつ!!」
増えるわかめ一気食いのあと水ガブ飲みはリアルで死者出てるから!!
こんなのか弱い乙女のする事じゃない……ってヤバホントに吐く……。
「ファティ……ここ、……トイレある?」
「台所の奥のドアです〜」
「サンクス……」
ヤバイマジやばいさっさと吐かないと死ぬ……死因ワカメは洒落にならない……。
「さて、優希さんがお手洗いに行っている間にこの料理は下げてしまいましょう、間違って誰かがたべたら危険ですからね」
「相変わらず、凄いことをするわね、我がメイドながら恐ろしくなるわ……」
「ロミーナさん〜私のには入ってませんよね〜!?」
「はい、入れたのは優希さんのだけです」
「良かったです〜」
ホットした様子のファティさん。
流石の私もお嬢様や、そのお友達の料理に下手を打つような事はしない。
イタズラする相手は選ぶべきだ。
「それにしてもなんであんな事したのよ、優希結構あなたの料理楽しみにしてたのよ?」
お嬢様が少し責めるような表情で尋ねてくる。
どうやらお嬢様は優希さんにかなり懐いているらしい。
「いえ、どうやらファティさんが、お嬢様の話されたくない事を話す所だったようですので、少し2人で何を話すかを会議した方が良いかと思い、あのような行動に出ました」
私だって悪いとは思っている。
優希さんは、とてもいい人だし話していて面白い、だけれども、私にとってはやはりお嬢様が最優先だ。
まあだからといって今回の戦いで、わざと負けるような事はしないけど……もちろん優希さんと、一度話してみたいっていうのもあるけど、やはり勝負は真剣にやらなくてはその意味が無い。
それにやっぱり負けるのは悔しい!
メイドと言えど私だって人間だ、そこら辺はきっとお嬢様も理解してくれるだろう。
うん、してくれるはずだ!
それに今回はちゃんと悪ふざけの範囲内に留まる量にしておいた、素早く吐き出せば殆ど効果はないはずだ。
するとお嬢様はそのことを思い出したのかファティさんに、向き直るとこの世界の事について何を話すかを会議し始めた。
「さて、私も料理に戻りますか」
実を言うと私が優希さんの私物の中からあのハンマーと、ヘルメットを持っ来るのに五分もかからなかったのには理由がある。
まずそもそもの勘違いがお嬢様の部屋とファティさんの部屋の距離だ。
ここまで来るのに時速5キロで六時間と少し、これだけではこの距離は30キロ以上あることになってしまう。
お嬢様の部屋の隣にある優希さんの部屋になる予定の私物がある部屋も同じくだ。
それでは目当てもの物を探し出すのにかかった数分を抜けば2分で60キロを走ったことになる。
つまり時速に治すと900キロ以上だ、そんな速さで走ってはこの床が抜けてしまう。
一度お嬢様に言われて全力で走れと言われた時は2000キロ以上出てしまいこの屋敷が半壊してしまった。
そんな馬鹿な真似は私はもう二度としない。
だから、今回こんな短時間で往復できたのはもっと別な簡単な理由。
この部屋と優希さんの部屋は、2分間で往復できる程度の距離ということだ。
本来この屋敷は混沌都市カオスなどと名乗ってはいるが見た目はただの1平方キロメートルにも満たない屋敷なのだ。
そこをお嬢様が魔法で空間をねじ曲げ、どう見ても隣の部屋との空間的に有り得ない大きさの部屋を作り出したりして、いろんな人が住んでいるのだ。
そこで住民の一人が考えたこの屋敷の名前が混沌都市カオス。
いろんな種族の人が住んでいるまさに混沌都市、我ながらいいネーミング……こほん、こほん。
と、とにかく、お嬢様の手にかかれば廊下を長くする程度の事はなんて事は無いのだ、そして長くした理由は優希さんと、長く話していたかったからだろう。
「まあ……私も楽しかったから良いんですけどね……よし、完成っと」
材料があまり無かったのでいきなり最後のメニューだが、今度こそ優希さんのだけ特別美味しく作っておいた。
……美味しいと言ってくれるだろうか?
どうやらロミーナさんはむかし中二b……おっと誰か来たようだ




