ゲーム10
さっさとバトルに入った方がいいんだろうか?
「…………あれ?俺また死んでたの?」
「そうよ、貴方の今回の死因は[ピコピコハンマーで殴られた]よ」
「うわぁ……ここまでくると逆に面白くなってきたな……」
「死ぬのが面白いなんて……優希さんはやっぱりM……?」
「やっぱりってなんだ!やっぱりって!俺はMじゃない!!」
ていうかそもそも俺は毎回死にたくて死んでるんじゃないから!
てか前回に至ってはこの目の前の人に殺されたんだが……まあ、生き返ったんだからよしとしよう。
「ところで、アイナとファティはもうやったの?」
一体どんな戦いになるのか興味あるんだけど……。
「まだよ」
「優希さんが起きるのを待ってたんです〜」
「おお!!ありがとう!じゃあ早速やろう!アイナ、さっき壊れたヘルメットと同じもの魔法で作れる?」
「そんなの余裕よ!見てなさい!」
なんだ、いつになく元気だな?
お……?でもスゲェ!
何処から集まったのか光の粒がアイナの手の元に集まり、ピコピコハンマーの形に整っていく。
「どう?」
「どうって言われても凄いとしか……」
「ふふん、更にオマケで絶対に壊れない魔法をかけておいたわ!」
「おおっ!」
これでもう2度目は無くなったな!
「しかも魔法でかたどっているだけなので圧倒的な軽量化を実現!」
「なるほど!」
「さらにさらに、麻痺属性を追加!これで叩かれると麻痺して数時間動けない!」
「お……?」
んんん?ちょっといらない機能増えてない?
「まだあるわよ!なんとこのボタンを押すと……形態変化するわ!」
ハンマーの根元に取り付けられた青いボタンをアイナが押すと、先程の逆再生のように1度光に戻った後、黄金に輝く小槌に変化した。
「え?それ……なに?」
「ミョルニルハンマーだけど?」
「え?それで叩たかれても大丈夫な奴?」
明らかに神話上の物体なんですが……。
「大丈夫なわけないじゃない!こんなので叩かれたら塵も残らないわよ!?馬鹿じゃないの?」
「いやいや、叩いて被ってじゃんけんぽん用のハンマーって言ったよね?」
「あ……」
「忘れてたの!?」
「お嬢様……」
「アイナっち……」
「やめて!私を残念な子を見る目で見ないで!」
ロミーナさんに至っては残念な子ってより、ゴミを見る目だったぞ……自分の主人なのに……アイナ……頑張れ!
「な、何よ優希まで……私そんなに残念じゃないもん!」
「そうですよ、確かに一人じゃ何も出来ない人ですけどお嬢様はダメ人間なんかじゃないです!」
「そうよ、そう……よ?あれ?私これフォローされてるのよね?」
おお!前までは気づかなかったのに……成長してるな!
「そうよ〜アイナっちは夜一人じゃ寝れないけど別に可哀想な子なんかじゃないよ〜」
「べ、別に……もう一人で寝れるし!」
魔法で片手間に神器を作れる奴に何が怖いと言うのか……。
「ではお嬢様、私は今夜は自室で就寝させていただきます」
「私も夜、遊びに行ってあげな〜い」
「べ、別にいいもん!ひ、一人で寝れるもん!」
そう言うアイナのはちょっと涙目だった。
「まあ、くだらない話はこれくらいにして、続きをやりましょうか」
「そうですね、でも……ハンマーどうしようか、流石にミョルニルでやるわけにはいかないし……」
「じゃあ形態変化させなきゃいいじゃない」
「手が滑ったら相手が塵も残らない叩いて被ってじゃんけんぽんなんて嫌すぎるわ!」
「流石にミョルニルハンマーで叩かれたら私も生きてられるか危ういよ〜」
足だけになっても生きてる吸血鬼ですら生きてるのが怪しいとか……どんだけ強いんだ……。
「わかったわよ、じゃあこのハンマーは壊すわ」
「いや、ちょっと待って!」
「なによ?」
「そのハンマー壊さないで取っておくこと出来ないかな?」
「出来るけど……なんで?」
「だって、勿体なくない?折角の神器を壊しちゃうなんて」
男子なら誰もが憧れる神器をそんな粗末に扱うなんて勿体無い!
しかも曲がりなりにも形態変化変化という夢機能まで付いてるし!
「そう?神器なんて、私、大体作れるけど?」
「マジで!?」
エクスカリバーも、草薙の剣も、エルフの矢も!?
「それ、頂戴!」
考える前に体が動いたとはまさにこの事だろう。
男子高校生は神器というワードにどうしようもなく弱いのだ。
まあもう高校生に戻れるかわからないけど。
だが、そんな問題は神器の前では無に等しい!
「いいわよ、でも一つ条件があるわ」
「なに?なんでもするよ!?」
「な、なんでも!?え……じゃあ……嫌でも……いや、やっぱり……」
どうやらかなりの葛藤を繰り広げているらしい。
……なんでもは言い過ぎたかな……でも冗談抜きで1、2回死んでも手に入れたい。
「よし、」
「お?決まった?」
「ええ、決まったわ、その条件は……取り扱い注意って事で」
「へ?」
一体どんな無理難題が来るかと身構えてたのに……てっきり神器の試し斬りさせろとかそんなのだと思ってた……。
「お前は私をどんな奴だと思ってるんだ!
ハァ……いい?神器ってのはその名の通り本来人間が扱える領域をはるかに超えているの、刀身に触っただけで木っ端微塵になるものや覗き込むと精神が崩壊して2度と立ち直れなかったりするの。
前者は復活させてあげられるけど、後者は基本的に2度と戻れないわ。
だから後者は渡さないけど、それでも神器級の物は本当に危険なの、だから取り扱い注意よ、わかった?」
「…………」
「な……なによ?そんなに見つめて、なにかついてる?」
「いや、優しいんだな〜って」
魔法がどういう原理なのかはわからないが神器級の物を複数出しながらそれを維持し続ける事は決して楽では無いはずだ。
それを許可してくれた上に何でも命令出来るのに、それを俺の安全を促す為だけに使うなんて、やっぱり根はいい奴なんだよな……。
「いや、やっぱり神器はそのミョルニルだけでいいよ、ピコピコハンマーの状態で保存しとけば安全だし、心配してくれてありがとう」
「そ、そう……」
「あれ?アイナちょっと赤くない?」
気のせいかほんのり頬に赤が差しているような……部屋の灯りのせいかな?
この部屋の灯り馬鹿でかいシャンデリアだし。
「あ、赤くない!ほら、さっさとやるわよファティ!」
そう言うとアイナは手元に先程とは違い普通のピコピコハンマーを作り出して棺桶の向かいに座った。
「はい〜了解です〜」
なんだ、やっぱり勘違いか……。
「それにしても、ミョルニルはもらうんですね優希さん……」
ロミーナさんが苦笑いで話しかけてくる。
「ぐ……だって、神器一つぐらい欲しいじゃん……」
やっぱり神器や、呪いの武器は男子高校生の永遠のロマンだろ。
次回はついに予選第2戦です




