写真
「やっべ!チョー怖えーんだけど」
「なんだよ~ びびってんのかよ~」
「アホクセ。騒いでないでさっさと行こうぜ」
ただの肝試し。いや、度胸試しか?
理由なんてノリだよノリ。
壁なんて悪戯書きがされていない場所なんて無いし、床はゴミばっかりだし。
「内田。写メとってさっさと帰るぞ」
「ソージ びびってんじゃねえ?」
「いいじゃんいいじゃん。和田っちもソージ君の近くによってよ」
内田がスマホであちこち写して俺達に立ち位置を指示する。
シャッター音が鳴りほんの一瞬後
「うわああ」
と、内田は叫びスマホを外に投げ捨て逃げていった。
俺と和田も内田の尋常でない脅え方を否定しつつ建物から脱出する。
2・3分ほど走ったのだろうか、街の明かりに囲まれた駐車場でやっと自分達のあるべき場所にたどり着いた気がした。
スリルを楽しみたいが、現実からは離れたくないっていうのがなんか笑える。
人っていうのは変な生き物で一度可笑しい事があるとそっちに引っ張られやすい。
自分達の車にたどり着く頃には和田と一緒になって笑っていた。
「なに笑ってんだよお前等!!」
「なんだよ内田ぁ。チョー弱え」
「真っ先に逃げたお前は……ックハハ なに言ってんだよ。笑える」
「ふざけんなよ、お前等やばいんだって、写メ見てないのかよ。お前の周り手だらけだぞ」
「ふかすなって。自分のスマホ捨ててるしー。ネタにしてはやり過ぎー」
――― プルルルル… プルルルル… ―――
俺の携帯が呼び出し音を発した。非通知だ。
ちょっと心臓に悪いが面倒なので、用件だけ聞く。
「すみません。○×病院ですが、先ほど内田さんのスマホを拾ったんですが、お名前しか書かれていないので申し訳ないですがソージ様でよろしいでしょうか?」
なんだ? これ……
「あ、切らないで下さい。もう一人は和田さんで合っていますか?
それと、これからメールをお送りさせて頂きますが、写真を確認してください。
当病院でこのようなことをされては困りますのでよろしくお願いしますね」
一方的に切れた電話。
そして数秒後に、捨てたはずの内田からメールが届いた。
中を見ると写真が添付されて、恐ろしくても指が見ないといけないと言うように勝手に開いた。
写真は、三人が並んで歩いている姿と、落書きの『許さない』という文字が重なって映っていた。