ボーイズ アンド ミーツ
今日も太陽はギラギラ輝いてるぞ。ニュースで最高気温は43.9度って言ってた。なんかすごいね!
そんな真夏日、ボクはというと友達の笑【ニコ】と鷹【ホーク】と3人で山道を6時間も歩いていた。
「ハァ、ハァ…ねぇ、ホーク。本当にこっちであってるの?ニコ、不安しかないンですケド」
もう何度目なのか分からない質問をするギャル系女子小学4年生、安藤笑。
「ハハハ!何言ってんだニコ。オレサマのホーク・インフォメーションに間違いなんてないさ!」
さらに何度目なのか分からない自信満々発言をするナルシスト系男子小学4年生、富士鷹。
「本当でしょうねェ」ニコは愚痴をこぼしながら後ろを振り返った。もう何時間も前から道を外れジャングルみたいな草木が生い茂っている。もはや家に帰れるのか心配になってきた。そしてニコは隣のボクに言った。
「ボーイ、大丈夫?顔色悪いけど、休憩する?」
女子に心配される残念系男子小学4年生のボク、世界少年【ボーイ】。
ニコは普段は怖いけど、こういう時優しい。お母さんみたいだ。でもここでその優しさに甘えるとオトコとしてダメだから、ボクは精一杯強がって答えた。
「全然大丈夫だよ!まだまだへっちゃらさ!ニコこそ休憩しなくても大丈夫?」
「はァー?アンタ、そんなに足ガクガクしてんのに大丈夫な訳ないでしょ!どうせオトコとしてどうとか考えて無理してんのわかってンだからね!」
ニコはボクをキツく睨んで言った。何で分かるんだ?ボクのお母さんかよ。
「うん、分かったよニコ。休憩しよう」
ボクは逆らわずに言った。まぁ、本当に限界だったしね。
ボクたちは近くの大木に寄りかかって休憩した。持ってきていた水筒もほとんど無くなってきた。ヤバイ、頭がくらくらする。
「ニコの水筒アゲル」
「オレサマの水筒分けるぞ」
二人は同時に言った。ボクは二人のこういうさりげない優しさにいつも救われている。いつか恩返しがしたいなと思いながら、二人の優しさを無駄にしたくないのでお言葉に甘える。
「ゴクン…ゴクン…ゴクン。ふー、ありがとう。おかげで生き返ったよ」
ボクはそう言って辺りを見渡した。本当にここは日本なんだろうか。二人の水筒ももう少しで無くなりそうだったから、こんな異様な森なんてさっさと抜け出したい。目的地まであとどのくらいなんだろう。
「ホーク、あとどのくらいで例の場所に着くの?」
「HIによるとだな~……あと、少し!と言うよりほとんど着いてる!」
マジか!?よしもう少しだ、頑張ろう!とボクが思っていると、ニコが不安そうに言った。
「ホントにあるのかしら。アレ」
「あるさ!オレサマのHIに間違いなんてないさ!」
「HIって、ただの勘でしょ!当たらない時ぐらいあるわ!」
「逆に言えば、今まで百発百中だったわけさ」
「アン!?」
「わっわっ!二人ともケンカしないで!」
二人が普段の調子になり始めボクは慌ててその場を落ち着かせる。こんなとこでケンカなんてしたら最悪だ。
そもそもボクたちがこんな山奥まで来た理由を説明すると、昨日の夜に大きい爆発音とまぶしい光がここ、緑の森公園で起きたのだ。ちなみにそれを見たのはボク。夜ふと何かに取り憑かれたように起きた。そしていつの間にか外に出ていて緑の森公園の入口まで来ていて、例の爆発音で我に返った。その後、光を見て怖くなり全速力で布団に戻った。翌朝、家族に言っても信じてもらえず、ホークに電話したところ「ボーイ、それはHIによるとUFOさ!UFO墜落事件!大発見になるさ!よし、今から水筒持って探しに行こう!」と提案してもらい、たまたま家に遊びに来ていたニコも一緒に探しに行くことになったわけ。
「よし、そろそろ行こう。日が暮れる前には帰らないと」
ボクは意気揚々と言った。
「そうね。ボーイの体もいつまでもつか分からないし」
ニコはボクの痛いところをつく。
「うっ…そんなことあるもんか!ボクだってオトコなんだ!」
ボクはそう啖呵を切ると二人の前に出て進もうとした。
「待て!ボーイ!HIによるとキミは前に進んではダメだ!」
ホークの静止も耳に入らなかった。ボクだって二人を引っ張れるんだ!そう思った瞬間、地面が無くなった。
ドスン!
「…イテテ。ったく、なんなんだよ、もー」
けがはしていないみたい。どうやらボクは1メートルくらいの崖から落ちたみたいだ。草が邪魔で見えなかったんだ。
「ボーイ!大丈夫!?」
二人は同時に叫んでいた。
「大丈夫だよー!崖から落ちたみたいー!」
ボクは二人に聞こえるように言った。
ボクは辺りを見渡した。学校の500メートルトラックと同じくらいの広さで、その空間だけ草木が一本も生えていなかった。その空間の中心地に光るものを見つけた。おぼつかない足取りで見に行くと、それはランドセルほどの宝箱だった。錠の部分が太陽の光に当たって反射していたんだ。
「先に行かないでよ、ボーイ!」
「何か見つけたのかい?」
二人は駆け寄ってきて言った。
「うん。宝箱みたいだ」
ボクたちは興味津々に宝箱を観察した。宝箱の隅にプレートが貼ってある。何か文字が書いてあるぞ。ボクはそれを読み上げてみた。
「ひらけ、ごま」
ガチャ!
「わっ!?」
宝箱の蓋が突如開きボクたちはビックリして、ボクは尻餅をつき、ニコはボクにしがみつき、ホークはニコにしがみつこうとしてニコから蹴りを食らった。ボクたちは恐る恐る中身を見た。中に入っていたものは…。
「…絵本?」
横長の綺麗な絵本だった。手に取ってみる。タイトルは『七つの冒険』。
「あれ?本の下に何かあるわよ」
「本当だ。紙?」
何かのチケットみたいだ。『白鳥の待合所』発着、『銀河ステーション』行き。――ん、聞いたことがあるぞ。
「…これってSLの看板に書いてあるやつだよね?」
「うん」
SLはボクたちの登下校する道の途中にあって、毎日見てるから覚えているのだ。ちなみにSLは木製の赤と青と黒でペイントされたもので、運転席ともう1両しかない。
「誰かが遊びで作ったのかしら?」
「そうかもしれないね。じゃ、しまわないと」
人のものを勝手にいじったらダメだしなと思いながらボクは言った。
「待ちたまえ!オレサマのHIによるとそれは宝さ!」
「宝?」
ホークの発言に対してボクは期待を込めて、ニコは不信そうに言った。
「そうさ!間違いない!それは宇宙からの贈り物さ!オレサマたちを招待しているのさ!」
ホークの全く根拠のない話にボクは内心ワクワクしていた。でもニコは違っていたみたいだ。
「宝なわけないでしょ。見てみなさい、この手書き。絶対に私たちぐらいの子供が作った感がプンプンするわよ」
確かにおそらく画用紙を切ったものにマジックで書いた感じはする。
「それに。入っているものが絵本でしょ。誰かが置いていったに違いないわ」
ニコの意見もボクは分かる。けどそれだけでは済まない理由が1つ抜けている。
「勝手に箱が開いたのはどう説明するの?」
「それは…」
ニコは口ごもってしまった。あれ?それより泣きそうな顔してきたぞ。あれ?なんかまずいこと言った、ボク。あたふたしているとホークがため息をついて言った。
「まぁ、今日はもう帰ろう。それについてはまた明日話そう」
「えっ…でも帰り道は分かるの?」
そうボクが言うとホークはボクの向いてる反対側、つまりボクが落ちた側の反対側を指差した。
「オレサマのHIによるとあっちが出口さ。大丈夫。今度はすぐ着くよ」
ボクたちはまた明日ここに来ることにして帰ることに決めた。絵本とチケットは宝箱に戻してそのままにしておく。もしかしたら持ち主がいるかもしれないし。――本当はニコに気をつかってだけど。そんなこと言える空気じゃなかったのだ。ボクたちはとぼとぼと口数少なく歩いた。ホークの言うとおりすぐに見慣れた道に出た。ボクはそこに大きな拳くらいの石ころを置いて目印にした。その後ボクたちはそれぞれの家に帰った。帰った時間は午後5時、ボクは最後の気力を振り絞ってお風呂とゴハンを済ませ布団に入った。寝る前に明日ニコにとりあえず謝ろうと思った。
そしてボクに再びあの現象が起きた。
昔の頃を思い出して書きました。小学生時代どんなものにも期待を持って想像していました。そんな自分。結局何もありませんでしたけど、それが楽しかったな~。何かアドバイスがあったら教えてもらえるとありがたいです。それではまた。