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レッツ自己紹介


「さーて、じゃあ自己紹介だ。神道(しんどう) 宗哉(そうや)。一応異点だ、よろしくな」


 指示された通りに自己紹介が始まった。神道が先陣を切って自らの名前を告げる。どこまで説明したものか決めあぐねて、次々と情報を提示していく。


「好きな食べ物は特にないな。嫌いなもんもねーぞ。スポーツはメジャーなのは大体かじってるから話ふってくれたら反応できる。後は……」

「いや、もう良いと思うよ」


 困惑した表情で、童顔の男子生徒がその話を遮った。綺麗な黒髪は短く切り揃えられていて、ほんのちょっとの風でサラサラとなびく。高校に入るような年齢だと言うのに、幼い顔立ちと低めの身長が相まって中学生のように見える。

 そんなに喋られても長くなるだけだし、今度は自分の自己紹介が面倒なだけなので彼の語りを遮ったのだろう。いつまでも話し続けそうな雰囲気に冷や汗を浮かべていた。そのまま、彼が自己紹介を引き継いだ。


神崎(かんざき) 夕凪(ゆうなぎ)。あっちは双子の姉の美波(みなみ)結構似てるでしょ?」


 美波は弓道、自分はエアガンの扱いなら大分長けていると彼は述べる。シューティングゲームが好きで、そのままサバゲーにのめり込んだから、エアガン程度の衝撃の銃ならかなりの達人だと自画自賛している。そっち界隈では有名なんだと夕凪は胸を張っている。

 それに続いてその姉の美波が語り始めた。赤毛の長髪は腰まで伸びていてかなり長い。弟と顔の造形はよく似ているが、こちらはかなり大人びているなと楓は感じた。綺麗な顔立ちの氷室とは違って少しつり目がちだが可愛らしい感じが漂っている。


「弓道では一応、かなり有名なんだけどね」


 中学生の大会で日本一になったらしい。何をもって弓道の優劣が決まるのか知らない本人と弟以外の五人は思い思いにその大会の雰囲気を想像する。的がずらりと並んでいて、一人一人撃って中心の方が点数が高い、というようなものだろうか。


「何だか超人揃いのチームね。氷室(ひむろ) 冷河(れいか)。記憶力に関する異点だけれど、それ以外は特に目立つものはないかな。運動はことごとく苦手」


 昔から徒競走は最下位だったなーと楓が呟くと、五人はクスクスと小さく笑った。余計な事を言うんじゃないと、氷室は楓を睨み付けた。あまりの剣幕に楓は言ってしまった事を後悔した。

 このままだとさらに突っかかってきそうだと分かったので、流れを変えようと今度は楓が口を開いた。慌てているのが皆にばれて、またしてもクスクスと笑い出す。


(かえで) 秀也(しゅうや)。陸上部だったから、普通の人よりは走るのは得意かな。それ以外には特に何もない。よろしく」

「何もないという割りには頭が切れるようだけど?」

「このチームだと没個性だろ」

「はー、嫌味ったらしくてやんなっちゃう」


 周囲からはコントのように映っているのだろう、何人かは吹き出したが、烏丸という生徒は苦笑いを浮かべていた。氷室が真剣に楓に仕返しをしていると分かったのだろう。そんな彼が楓をフォローしようとして名乗りをあげた。


「からすま しひょう。地名の烏丸に、紫に表で紫表。よろしくな」


 剣道の経験はないけれど、剣を使っての戦闘はこなせるから近接戦闘が必要な際には俺に任せてくれと彼は言う。どんな腕前なのかは未知数だが、しばらくは競技中に木刀が使えないからお預けだと紫表はお茶を濁した。能ある鷹を地で行っているようである。

 そして最後が、神道に呼ばれた高木である。


高木(たかぎ) 新羅(しんら)。略してタカシンって呼ばれてる。それで呼んでも名前で呼んでもどっちでも大丈夫だ」

「OK、じゃあ僕はタカシンって呼ぶねー」


 小さい身長ながら頑張って夕凪は高木と肩を組んだ。高木は高いとも低いとも言えず、普通の身長といった具合だ。成績や体重、身体能力も普通なんだと自虐的に高木は言った。


「秀でたものは何一つない、全てが凡なのが俺だよ」

「って本人は言ってるけど頼りになるから安心しな。特に生活面では」


 その後もわいわいと話が続く。全員が全員、フレンドリーで親しみやすい人物だったため、楓もかなり落ち着いていた。氷室と同じチームで、初めはどうなるものかと焦っていたが中々コミュニケーションは良好な班である。唯一元からの知り合いのいなかった紫表も、もう既にこの場に溶け込んでいた。

 そしてその裏では、全チームの班分けが完了していたらしい。教官がおもいっきりホイッスルを鳴らすと、七チーム四十九人がそちらに注目した。

 この時、楓は最後の一人はどこにいるのかとキョロキョロと探す。そんな様子を見かねてか、双子の姉の美波が彼に伝えた。


「最後の一人は多国籍のチームの一員になるの。だからもうここにはいないわね」

「そうなのか。にしてもよく俺がそいつを探してるって分かったな」

「朝の会話も聞いていたからもしかしてと思ってね」


 彼女の忠告はちゃんと聞いておきなさいよと言い残して美波は先に戻っていった。別に彼女じゃないんだけど、と言おうとした楓だったが、すぐに代名詞としての彼女だと気付き、言わなくて良かったと胸を撫で下ろした。

 教官が、全員に聞こえるよう大きな声で叫ぶ。


「これから競技場へと向かう。各班まとまって班長を決める話し合いでもしながら着いてこい」


 そんなものまで決めるのかと、新鮮な気持ちで楓は反応した。だが、他の人たちはやはり全員最初から理解していたらしい。自分は向いていないとか、俺にやらせてくれとかいろんな声が飛び交っている。

 自分の班は誰になるのだろうか。そう思いながら彼は、もう一度自分の班員の元へと向かう。氷室なんかが良かったりして。言ったら本人が照れ隠しで貶してきそうだから、楓は言わないようにしようと固く誓った。

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