班結成
「班とは、大きく分けて四つのタイプに分けられる。基本的な構成としては七人一組だ」
まず最初に、肝心のケイドロのルールや形式をするよりも早く、班分けが始まる。これから先の学園生活全てを左右する最重要事項なので、皆が自分の所属を心配している。足手まといが同じ班にいたら、逆に自分が足手まといになってしまったらどうしようかと、不安で表情を曇らせている。
ただ、何人かの者はそんな不安など微塵も感じていないようである。そのうちの一人が楓であり、そもそもケイドロの重要性を何一つ理解していないことが大きかった。
「一つ目のタイプが策謀のタイプだ。七つ道具と己の知恵を用いることで狡猾に相手を追い詰める」
ただし、頭の良い者ばかり集めているため、自分の意見を押し通しがちな性格なので協力が重要となる場面ではあまり強さを発揮しない。相手を思い通りに動かしさえすれば、確実に勝利をおさめられる。
「二つ目のタイプは身体能力特化。圧倒的なフィジカルで追いかけ、押さえつけ、すぐさま相手に錠をかける。一対一に強く、即座に勝負を決められるがトリッキーなタイプに弱い」
そのトリッキーなタイプこそが、三つ目のチームだと、野太い声で教官は付け加える。三つ目のチームは特異点や異点によって構成されているチームだとの話だ。
「特異点は近いうちに授業で習うだろうから気にするな。既に覚醒している者もいるだろう」
そして四つ目はそれら全てがバランスよく存在する安定型のチームだと、四つの型の紹介を終えた。
「これからお前たちの班分けを発表するが、その班は今教えた四つのうちのどれかに位置するように作られている。一応こちらとしても考えて班分けをしているので、あまり文句は言うな」
まずは第一班から発表する。そう前置いた彼は、第一班の特性を語りだした。
第一班は今年度の入学者の中で特に頭脳の優れる生徒を集結させた最強の策謀のタイプのチームを目指す。フィジカルで劣っていようが、特異点でなかろうが盤面の全てを支配するようなチームを目指す。
「よって、日本人の最優秀生徒は全てここに集められる。神道、楓、氷室、神崎姉弟、烏丸。以上六名がまず出てこい」
一人足りなくないかという疑念よりも、楓にとっては氷室と同じチームという事の方が堪えた。まさか本当に同じ班に所属することになろうとはと、呆れ返ってものも言えない。ただし、理由が理由なので仕方がないかと諦めた。
移動中に見覚えのある面子が揃っていた。神道は言わずもがな、神崎姉弟は移動中に目に止まった、神道に群がっていない二人組だ。弟の方は同じチームになって喜んでいる。なるほど、こいつらは双子だったのかと楓と氷室は納得した。烏丸という男はさっきの紫髪で木刀持ちの眼鏡だ。
全員がずらりと揃うと何だか壮観だった。元々、誰がチームメイトでも自分ならば大丈夫だと思ったいた自信の塊のような集団だ。堂々としているその姿は新入生だというのに既に歴戦のチームのようだった。
「見ての通り一人足りないから、一人補うことになる」
その最後の一人はどうしようかまだ確定ではないため、メンバーにどのようなメンバーを入れるかを決めてもらうと教官は言う。だが、今からまさに話し合おうとしたその瞬間、神道が口を開いた。
「じゃあ、タカシン頼むわ。俺はあいつ以外認めねーから」
どんだけ自己中心的なんだよと全員が視線を神道に向ける。だが、それ以上にその神道から信頼されているタカシンとはどのような人物なのかと皆の関心が集まる。教官がそのタカシンとは誰なのかと頭を抱えていると当の本人が立ち上がる。
その少年は、見るからに地味な少年だった。よくも悪くも目立った特徴がない。悪目立ちしていないからか、以外にも容姿は悪くなかった。整えさえすれば割りと端正になるのではないかと思われる。だが、本人にその努力はないようで、やはり地味な少年だ。
それにしても、眉目秀麗ばかりでこざっぱりしていてインパクトにかけるチームだなぁと教官が揶揄する。その中には本の少し、綺麗な顔立ちに対するやっかみもあるのだろう。
「それにしても、本当にそいつで良いのか、神道?」
「おう。実はタカシンはな……」
本当にこの人物で大丈夫なのかと怪訝そうな面持ちの五人の耳を集めて他の者に聞こえないように耳打ちする。それを聞いた途端に、全員の意見は一致した。
「分かった。それなら良い」
「決定打になってくれるかもね」
氷室と楓が真っ先に納得すると、他のメンバーも口々に自分も彼ならば信用できると述べる。なぜ彼らがこんなにも彼を歓迎しているのか、生徒も教官にも分からなかった。
入試での成績は中の中、まさに合格者平均点を叩き出している。という事は頭脳で選ばれた訳ではなさそうだと教官は判断する。しかし、報告書には特に目立ったデータはない。自己申告だからどうとも言えないが、異点でも特異点でもない。
「まあ良い。他の班を割り振る間に自己紹介でもしておけ」
次の班の作成の邪魔だと教官から追い払われる。この時、楓は不思議な安心感を覚えていた。根拠など何一つないのに、彼らに全幅の信頼を寄せている。
このメンバーなら、どこまでも高みに登れる。そんな予感が彼を包み込んでいた。
実はTwitterしてます。
ym84278931で調べたら出てくるはず。
だからどうという訳でもないですが。