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八分咲き

――白玉楼 西行妖前

「……」

ただ黙って見上げていた。そう。前のように願いを……この桜の木の下に眠る人物を復活させようと春が集まる桜を見上げていた。

「どうかしましたか……?」

その後ろに現れるのは数刻前まで博麗霊夢と霧雨魔理沙に挨拶に行っていた綿月豊姫。扇子で口元を隠し目は笑っていた。


「覚悟は……できましたかぁ……?」


その言葉に訳もわからないと言ったふうな顔を見せ豊姫を見る白玉楼の主・西行寺幽々子。だが後ろにいたはずの豊姫はいつの間にか、幽々子の背後に回り、首にナイフを当てていた。怯えた風を見せず、ただ、びっくりしていた。

「なんの…………真似かしら……?」

「だから聞いたじゃないですか……覚悟はできましたか、と」

なんの覚悟と聞く前に事は起こった。

持っているナイフで幽々子の手を傷つけ、ナイフに付いた血を西行妖にかける。


何百年も蕾すらつけなかった西行妖が――



眠りから解き放たれるように一輪の花を咲かす。



「……咲い……た……?」

「うふふ……」

西行妖が自らの血で咲くとは思わなかった……。怖くなり恐怖を覚えた幽々子はその場から後ずさりする。

「待ちなさいな……」

愉しそうに笑う豊姫が幽々子の手を掴む。恐怖のあまりに出た声は従者である二人の庭師を呼び寄せる。

「豊姫……! 貴様……!!」

「あなたも知っているんでしょう? どうすれば桜が咲くか……」

刀を抜こうとした手が止まる。その間に幽々子は豊姫にとらわれ、依姫が幽々子の首に刃を突き立てる。

「師匠……?」

「妖忌……?」

俯いたまま、その場に立ち尽くす。そして、開かれた口から出てくる言葉はその場を驚愕に包み込んだ。

「ああ……。豊姫の言う通り、儂はこの桜と幽々子の関係を知っておる。幽々子……お前が桜を見ることはできん……」

「どういう……こと……?」

「この桜はあなたが死ぬことで咲くんですよ……?」

豊姫が水をさす。依姫の刀を下ろさせ、自分が持っていたナイフを幽々子の首に当て、依姫にある命令を下す。了承した依姫は、刀を地面に刺すといくつもの刃が妖忌と妖夢を足止めするかのように囲む。――そう……依姫が降ろした祇園である。

「動かないことね……祇園様の怒りに触れたくなければ……」

そう忠告する。二人は幽々子を殺されまいと大人しくする。その中で妖忌は

「本来は血吸桜。人の血を吸い、養分として花を咲かす……西行妖はそういう桜じゃ……。人の血を吸うと言えど、その桜は一番特殊なもので、西行寺家か、魂魄家の血しか吸わぬ。よって、ワシらのどちらかが死ぬか、お主が死ぬか……そのどちらかによって……」

「もうやめて……!!」

幽々子の叫びがこだまする。

悲痛な叫びに妖忌は口を閉ざす。

「あらあら……」

「幽々子……」

「私が死ぬとか……妖忌か妖夢のどちらかが死ぬ……そんなのは嫌……!!」

悲痛な言葉が響きわたる。

「……今日はここまでにしましょうか……」

豊姫は依姫を連れて引き下がる。

「幽々子様!!」

妖夢が駆け寄る。幽々子は駆け寄ってきた妖夢の手をとり、姉妹から離れる。

「あらあら……依姫……」

「はっ。祇園様!!」

抜いた刀を地面に刺すと、再び妖忌と妖夢の周りに刀身が出てきて二人の足止めをする。そして、妖夢と幽々子の繋いでいた手が離れ、再び幽々子が豊姫に囚われる。

「さぁ……」

「豊姫!! 貴様の目的はなんだ!!」

「何って……この桜を彼女と一緒に見たいの……よ!!」

最後の「よ」と同時に、首を傷つける。幽々子からは悲痛の叫びが木霊する。幽々子は出血を止めようとするが豊姫がそんな暇を与えず、幽々子を西行妖に押し付け血を吸わせる。

「い……や………」

ニヤリとわらう豊姫。

「いやあああああああああ!!!!」

豊姫に空から降ってくるスペルカード。突然のことで回避が間に合わず、かする程度に当たる。

何かを警戒した依姫は、スペルカードが飛んできた方向を睨み警戒する。

「ギリギリセーフなのかしら……?」

「霊夢!!亡霊が!!」

「遅かったのね……」

「博麗の巫女!!」

幽々子が声を上げる。空には、博麗霊夢と、霧雨魔理沙の姿があった。

「あら……」

扇子で口元を隠す豊姫。

スキを見て幽々子は、妖忌と妖夢の方に走っていく。

「幽々子!!」

祇園の中から叫ぶ妖忌。幽々子を見て少し安堵する妖夢。

「はぁ……良かったわ。間に合って」

「ゆか……り……?」

「また勝手に行動したでしょ? 藍から伝えてあったはずよ。あまり勝手な行動はするなって」

苦笑しながらも、現れた生前からの親友・八雲紫に涙を流す幽々子。

「やっぱり、私が監視しておくべきだったわ。ねぇ。妖忌」

「っ……」

「うーん……仕方ないわ。今日は引き下がりましょう。依姫」

「はい。お姉様」

豊姫の力を使い、二人は帰ったが、桜は既に七分咲。もし、次に幽々子が狙われた時には既に命はないものと思ってもいい。

「紫」

空から降りてくる魔理沙と霊夢。すでに紫は隙間を開き帰ろうとしていた。

「待ちなさいどういうことよ。西行妖とそこの亡霊。なにか繋がりがあるんでしょ?」

紫は扇子を開き、口元を隠す。

「紫……?」

「そうよ……貴女は、生前、西行妖を咲かせたの。あなたが死んだ時にね……」

「……!!」

「今回……いや……もう七分咲のこの桜が満開になればあなたは確実に死ぬ。そう言う事よ。しばらくは私が監視するわ。彼女たちが来ないようにね……」


あれから何時間たっただろうか……幽々子は、七分咲の西行妖を見上げていた。首に巻いた痛々しい包帯に手を添えて。


「幽々子」

振り返ると、見慣れたようであまり見なくなった顔がそこにあった。

「わかったろう……?この桜を咲かせるのはやめておいた方がいい」

「……」

今更何を、と言ったふうに現れた妖忌に背中を見せる幽々子。

「あなたも協力してくれるっていったじゃない。今更それを止めるというの?」

「お主のためじゃ」

「私のため……?」

相変わらず、顔を見せない幽々子。

その様子を見かねた妖忌が、西行妖に近づき、刀を抜く。

「妖忌?」

そのまま妖忌は幽々子の目の前で、自らの腕に刀を突き刺し、血を西行妖に吸わせる。

「何をしてるの……!?」

「……」

やめて!! と叫びながら妖忌の腕を掴みに行くが、妖忌はそれを振りほどく。

「……」

「お願い……やめて!! 妖忌!!」

涙を流す幽々子を見て、止血に入る。桜は既に八分咲となっていた。

「わかったろう……?この桜を咲かせぬ方がいい」

「止めるから……もうやめるから……せめて理由を教えて!!」

ふむ、と幽々子のそばに行く。

「この桜の下にはお主を埋めてある。そして、そなたの父親もだ」

「え……!?」

一瞬妖忌が何を言っているのかわからなかった。訳のわからぬまま妖忌の話は続く。

「……覚えておらぬかもしれぬが、この桜の下で、自害したんじゃよ……」

「あ……」



「だからそれを利用して、あなたを成仏させるんですよ……?」



二人が振り返った先には先刻、月へ帰ったはずの綿月姉妹がたっていた。

「どうして……!」

「あら……ふふ……では仕上げと行きましょうか……」

何かに気がついて、西行妖から離れる2人。

「いやだ……まだ消えたくない!!」

「うふふ……」

「祇園様!!」

依姫の祇園が妖忌を囲む。

「妖忌!!」

「大丈夫じゃ!!逃げろ!!幽々子!!」

逃げ出す幽々子。だが、手遅れで……


行く手を阻むように祇園の剣と豊姫が立っていた。


「あ……」

「さあ……行きましょうか……」

幽々子に近づく。足がすくんで動けない幽々子。だが、その間に斬撃が飛ぶ。どうやら、妖夢が放った獄神剣「業風神閃斬」だろう。

「幽々子様!!」

「妖夢!!きちゃダメ!!」



ドスッ……



鈍い音を立て、妖夢の腹に依姫の刃が刺さる。

「妖夢!?」

「かっ………ゆゆ…………こ………………さま…………」

刃が抜き取られ、大量出血で妖夢は倒れる。

「妖っ…!?」

妖夢の元へ駆けつけようとした瞬間のことだ。幽々子の周りに祇園が現れ、頬をかすめる。

「まったく……手を焼かせないでください……」

豊姫が幽々子に近づき、もう一度捉える。

「いやっ……!!!」

西行妖まで連れていき、抵抗する幽々子を抑えながら幹に叩きつける。

「待つ必要はないでしょう……貴女が待ち望んだ桜の開花……その代わりにあなたが死ぬんですから」

「いやあああああああああっ!!!!!!」



桜 八分咲き

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