決意
4
その後、私は軍用の施設に連れて行かれた。民間用の施設では、もう危ないという判断がされたようだった。
私は、あれから考えていた。
私が殺した稔くんのことを。正確に言えば、私のせいではないのだろうけど、そうとしか思えなかった。私がいなければ、私が買い物に行っていなければ、私が扉から外に出ていなければ―――。
そんな今更なことが、頭の中をぐるぐると回っている。
私がいなければ……稔くんは。最後にそう考えて、はっとした。
どうして、稔くんはあそこに居たのだろう? それは、稔くんは戦っていたということなのだろう。そうだ、稔くんは望んでこちらに来たんじゃないだろうか。いや、望まずに連れてこられたということもあるだろうけど、それでも稔くんは自分の意思で、誰かを殺し、私を助けようとした。
だったら、他の誰かも、同じようにこちらに来るかもしれない。私を探しているかもしれない。そして、誰かを殺し、私のせいで誰かが死ぬかもしれない。
ふっと、泰輔の顔が思い浮かぶ。
もしも、彼が同じことをしようと考えてしまったら、私の前に来るまでに死んでしまう。泰輔の顔を思い出し、あの時の自分の考えを思い出した。
私は、泰輔が他人のために生きるなら、私は私のために生きるのだと。私は私のためだけに生きる。私はまだ生きていたい。けれど、私のために誰かが死ぬのは我慢できない。もう二度と、稔くんのような人はいらない。だったら、私が稔くんになろう。
ううん、稔くんは助けようとして、死んでしまった。じゃあ、私は生きるために、
――――――殺そう。
―――自分を守るために。
できるかな? できるのかな? できる。うん、私ならできる。
私は、近くにいた軍人を掴まえて、なるべく偉い人のところに連れて行ってくれと頼んだ。
しばらくは、全然相手にされなかったが、呆れられたのか。それとも、私の熱意が伝わったのか。私は司令部とかなんとかいう部屋に連れてこられた。
そこには、口ひげを生やした男性がいた。頬についた傷が生々しかった。
「それで、君はどういう話があって、私に会いたいと?」
威圧するような低い口調で、私に問う。全然怖くなかった。こんなもんかと私は思った。
「私も、戦わせてください」
「どうしてだ」
「自分の親しい人は、自分の手で楽になって欲しいから」
「できるのか」
「できます」
自信を持って言えた。
「逃げ出したりしないのか」
「はい」
逃げたりなんか、しない。だから、こうして申し出ている。私にやらせてくださいと。
「しかし、そんなことをすれば、君は、その親しい人たちから、非難されることになる」
「構いません。冷徹非道だって言われてもいい。恩を仇で返しているって思われてもいい。何を言われても。周りにどんな目で見られてもいい。だから私は、自分のこの手で―――」
「そうか、決意は固いようだ。連れて行ってやれ」
誰かわからない偉い人は、そう言って、私の横に立っていた人にそう言った。
そうして私は、その日から、守られる立場から、守る立場に。いや、誰かを殺す立場になった。




