表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぷんデレ  作者:
1/8

0 おわり、そして……

「――ぁ」


 ドスリ、と。

 背中に衝撃を受け、体がぐっと仰け反った。


 自分の腹部から突き出している刃が、独特な……しかし良く知っている形状である事に微かな苦味みを感じる。

 その持ち主について、不審な行動が目立つと報告を受けたのはいつだったか。

 険しい表情の部下に向かって、信じてやれ、と。そう言ったのは私だ。


 刃が抜かれ、勢い良く飛び散る赤。


 甘い判断をしたと、そんな事は自覚している。だが、後悔は無い。

 視界の端に映る、苦しそうな顔。

 お前が、そんな顔をしてくれるとは思わなかった、な。

 めったに表情を変えず、会ったばかりの頃は機械人形のような奴だと思ったものだ。

 迷ってくれたのだろう?

 だから、こんな中途半端な事になった……お前ほどの実力があれば、もっと綺麗に片付けられただろうに。


 腹の中を焼かれる様な痛みとは裏腹に、ふっと表情が緩む。


 知っていたよ。全てでは無いけれど、こうなると推測できるくらいには。

 こうするしか、なかったのだろう?

 なら、立ち止まるな。後悔などするな。

「はやく、行け」

 長く留まれば、捕まるぞ? 私の部下は、有能揃いだからな。

「――馬鹿がっ!」

 おい、最後の最後に言う言葉がそれか。

「何故避けなかった! 何故、何故そんな顔をする! アンタはいつもそうだ……これ以上俺を惑わせるな!」

 私が、お前を、惑わせた?

 そうか。すまなかったな。だがそれは……むしろ褒め言葉だ。


 ぽたり、ぽたり、頬に降る涙。


 あぁ、残念だ。泣き顔を見てやりたかったが、もう、視覚が機能していない……

 そろそろ、だな。

 元より、病に犯されたこの体に残された時間は僅かなものだった。病に殺されずとも、どこぞの戦場で討たれていただろうさ。

 どのみち、碌な死に方はしないだろうと思っていたのだが……

 お前の手による死、か。それは、なかなか

「……悪く、ない、終わり方、だな……」



 血が抜けきり、白く、冷たくなった体から魂が離れていく。

 この世と引き離される最後の一瞬、もはや感覚など無いはずなのに、唇に感じたのは――――



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ