第十二章:経済圏への侵攻
それは、軍の行進ではなかった。
静かに、確実に。
世界の外側から侵食する“手”だった。
◆ 最初の異変
「……物が、消えてます」
倉庫番の報告。
「数は?」
「少量です。ただ、継続的に」
フランは即答する。
「奪われてるな」
だが、襲撃の痕跡はない。
血もない。
争いもない。
それでも――
確実に削られている。
◆ 正体
「外部商人の流入を確認」
「通行証は?」
「正規です。ギルド発行の」
執事が顔をしかめる。
「……制裁中のはずでは」
フランは短く答える。
「抜け道だ」
◆ “合法的侵略”
彼らは武器を持たない。
だが、やっていることは同じだった。
・高値で食料を買い占める
・安値で粗悪品を流し込む
・労働証を銀貨と交換して吸い上げる
結果。
内部のバランスが、崩れ始める。
◆ 労働証の流出
「……まずいな」
帳簿を見た執事が呟く。
「証が外に流れています」
「どれくらいだ」
「まだ少量ですが……このままでは」
フランは理解する。
「外に“信用”を奪われる」
それは単なる流出ではない。
経済の心臓を握られることだった。
◆ 内部の動揺
「銀貨の方が安心じゃないか?」
「外でも使えるしな」
「労働証、交換してくれよ」
人々が揺れ始める。
理由は単純。
外の価値が、再び入り込んできた。
◆ フランの判断
「……規制する」
即断だった。
■ 新規則
・労働証の外部持ち出し禁止
・銀貨との交換制限
・外部商人の取引許可制
「締めるぞ」
◆ 摩擦
だが、それはすぐに反発を生む。
「なんでだよ! 俺の金だろ!」
「外で売った方が儲かるんだぞ!」
「閉じ込める気か!」
怒号。
不満。
不信。
フランは一切揺れない。
「そうだ」
全員が凍る。
「閉じる」
◆ 境界線の意味
「ここはもう“外と同じ場所”じゃない」
フランは言う。
「中で回る世界だ」
「だったら――」
誰かが叫ぶ。
「出ていけばいいんだな!?」
一瞬の静寂。
「ああ」
フランは否定しない。
「外に行きたいなら、止めない」
だが続ける。
「戻るなら、ルールに従え」
◆ 分断
数日後。
一部の人間が領地を去る。
銀貨を握り、外へ。
残る者。
去る者。
世界が、分かれる。
◆ ギルドの狙い
その頃。
外では笑いが起きていた。
「内部から崩れ始めています」
「やはり“閉じた経済”は持たない」
だが一人だけ、表情を変えない。
「……違う」
監査官が呟く。
「これは試している」
「どこまで耐えられるかを」
◆ 第二段階
そして。
次の手が打たれる。
「……武装集団の接近を確認」
ついに来た。
今度は、分かりやすい形で。
◆ フランの準備
「迎え撃つか?」
執事が問う。
フランは首を振る。
「違う」
静かに言う。
「利用する」
経済を揺らし、
信用を削り、
人を分断し、
そして最後に――
武力を入れる。
それがギルドのやり方。
だが。
フランは、それすらも織り込む。
「戦場は外じゃない」
「中だ」




